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セレッソ大阪とキリンビバレッジが取り組む『Bottle to Bottle』プロジェクト。温暖化防止、資源循環を目指すピッチ外の負けられない戦い

13時間前

毎ホームゲームでブースを出し、ペットボトルを回収する[写真]=セレッソ大阪

 国連環境計画(UNEP)が公表した報告書によると、2023年の世界の温室効果ガスの排出量は571億トン(二酸化炭素換算)で、前年から1.3%増加して過去最多になっている。

 近年、日本でも「猛暑」を発端とする様々な被害が拡大しており、熱中症等によって人命が脅かされるのはもちろんのこと、2024シーズンのJリーグにおいてはゲリラ豪雨や雷雨の影響で試合の中断・中止が余儀なくされた。

 夏場に開催される育成年代の大会では、昼間の時間帯を避けてキックオフ時間を夕方に変更したり、試合時間を短くすることで子どもたちを「熱中症」から守ろうとしている。地球温暖化がすでに日本サッカー界の現場にも大きな影響を及ぼしているのは明らかで、数年後にはプレー環境がより悪くなってしまう可能性も否定できない。

 その危機を食い止めようと、セレッソ大阪は2024シーズンから本格的にSDGs活動をスタートさせた。パートナー(スポンサー)のカテゴリーにSDGsパートナーを新設し、地域の企業と連携して事業を推進。クラブ内にサステナビリティグループを立ち上げ、専任スタッフが日々奔走している。

 その事業を統括する宮島武志副社長が、セレッソ大阪としての思いを明かしてくれた。

「サッカーができている環境は、当たり前のようで当たり前ではありません。先代の人たちが作ってきてくれたからこそ、今がある。今度は私たちが次世代のためにこの環境を残さなければいけないと考え、クラブとしてSDGs活動に積極的に取り組んでいくことにしました」

SDGs活動を統括し、推進する宮島副社長[写真]=フォトレイド

 2024シーズンに行ったSDGs活動のうち、根幹をなす事業の一つが『Bottle to Bottle』プロジェクトだ。キリンビバレッジ株式会社と手を組み、ホームゲームが開催されるヨドコウ桜スタジアムで使用済みペットボトルを回収し、新しいペットボトルに生まれ変わらせる水平リサイクルの取り組みである。

 プロジェクトをスタートさせるにあたり、セレッソ大阪からキリンビバレッジに声を掛けたというが、そのオファーを受けた藤本勝典(キリンビバレッジ・近畿圏統括本部)は二つ返事で快諾した。「当社グループが資源循環、水平リサイクルに力を入れている中で、セレッソさんから『一緒に』というお話をいただきました。セレッソさんと組むことによって、この活動をより推進していけると思いました」

 こうして2024年2月24日、J1リーグの開幕戦・セレッソ大阪vsFC東京から『Bottle to Bottle』プロジェクトがスタートし、シーズンを通じてファン・サポーターにペットボトルの回収を呼び掛け続けた。その結果、2024シーズンのホームゲーム全20試合において、総重量約4610kgに上るペットボトルを回収し、CO2排出量約10557kgを削減。水平リサイクルによって新たに約16万本のペットボトルを製造したことになる。

 この数字にキリンビバレッジの藤本氏も手応えを感じている。「当初はどれくらい集められるのか、見当もつかない中でのスタートでしたが、シーズンが進むにつれてこの活動が浸透していると感じられましたし、試合毎に回収量も増えていきました」

キリンビバレッジの藤本氏(左)と白石氏[写真]=フォトレイド

 キリンビバレッジを含むキリングループ全体では、2020年に「キリングループ プラスチックポリシー」を策定し、2027年までに日本国内におけるPET樹脂使用量の50%リサイクル樹脂化を目指している。「ペットボトルが循環し続ける社会」の実現に向けて数年前から力を入れて取り組んでおり、セレッソ大阪以外にも自治体や鉄道会社と連携して『Bottle to Bottle』の活動を推進している。

 そうした中でセレッソ大阪と手を組んだことによる効果・メリットをどのように感じているのか。白石和弘(キリンビバレッジ・企画部プラスチック資源循環マネージャー)はこう話す。

「消費者の方に伝わりやすい見せ方、出し方、取り組みをしなければいけない中で、今回、セレッソさんと協業したことによって若い世代の方にもアプローチすることができたと思っています。何より、セレッソさんのSNSでの発信力には驚きました。スピードもフォロワーさんの反応の数も桁違いで、この活動を持続・発展させていくためにも、SNSでの発信はより大事にしていかなければいけないと改めて感じました」

 SNSやインターネット等で情報発信を行い、『Bottle to Bottle』プロジェクトの意義や目的をファン・サポーターに理解してもらうことで活動の輪を広げる。そして持続可能な社会の実現につなげていく──。それがセレッソ大阪が目指す理想形である。宮島副社長が言葉に力を込める。

「現在は自分たちが目指す姿をしっかりと定義づけするため、10年後のビジョンを制定している最中です。同時に、まずはセレッソ大阪の社員が動かなければいけないので、社員の意識醸成を図っています。クラブスタッフの社員がSDGs活動に取り組むと、それを理解し、共感したサポーターの皆さんも同じように動いてくれます。サポーターの皆さんが動くとホームタウン全体が動き、活動の輪はどんどん広がっていきます。ゆくゆくは日本サッカー界のSDGs活動を先導するような存在になっていきたいです」

『Bottle to Bottle』プロジェクトはもちろん、2025シーズンも継続して行われる。宮島副社長は「回収したペットボトルは水平リサイクルされますが、ペットボトルキャップは何らかの形でファン・サポーターに還元したい」と次のステップを見据える。「何らかの形」とは例えば、ペットボトルキャップを使ってノベルティを制作してファン・サポーターの手に届ける。そうすることで、ペットボトル回収に協力したサポーターにこのプロジェクトの本質をより深く理解してもらえると期待している。

様々なイベントが行われた「SDGsデー」の様子[写真]=セレッソ大阪、佐々木駿秀

 2024年9月28日、J1リーグ第32節のセレッソ大阪vs柏レイソルの一戦は「SDGsデー」として開催され、多くのイベントが行われた。来場者が参加できるSDGsワークショップも多く実施された中、親子に取材する機会があった。小学2年生の女の子はSDGsについて「学校で習っているし、自分のできることは全部やっている」と話してくれた。その言葉を聞いて、「大人よりも、子どもたちのほうが環境問題への意識が高いのではないか?」と思わされた。

 2024年6月、国連が「持続可能な開発目標(SDGs)報告」のレポートを公表し、「このままではSDGsを達成することができない」と強い危機感を訴えた。SDGsの目標達成の期限は2030年。残されている時間は決して多くない。企業や団体はもちろん、私たち一人ひとりが行動や意識を見直し、SDGsの達成に向けて取り組むことが求められている。

 最後に、キリンビバレッジの白石氏がサッカー界への期待として残した言葉を紹介したい。

「ファン・サポーターの方々をはじめ、サッカー界にはエネルギーにあふれ、情熱的な方が多くいます。ぜひ、その方たちに先頭に立ってもらって、環境問題の解決を後押しする風を吹かせてもらいたい」

 セレッソ大阪とキリンビバレッジが取り組む『Bottle to Bottle』プロジェクト。子どもたちの未来のためにも、2025シーズンはこの活動がより加速していくことを期待してやまない。

取材・文=山本剛央

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