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「今、すごく野心がある」 初戦黒星も独走弾で異彩放った相馬勇紀、25年に示してほしいもの

2025.02.18

開幕戦で先制点を記録した相馬 [写真]=Getty Images

 2025明治安田J1リーグ開幕節から前年3位と2位がいきなり激突することになったFC町田ゼルビアとサンフレッチェ広島の一戦。昨季J1に初参戦し、大躍進した町田にとって、広島は唯一シーズンダブルを食らった相手である。黒田剛監督や選手たちも広島に勝って今季こそタイトルを獲りたいという思いはひと際、強かったに違いない。

 今季の町田は黒田監督の教え子である菊池流帆、日本代表経験のある西村拓真、他クラブで実績のある岡村大八、前寛之らを積極補強。戦力的にパワーアップして新シーズンを迎えた。これに対し、広島も戦力的な上積みはあったが、8日に国立競技場で開催されたFUJIFLIM SUPER CUP、12日にはベトナムまで赴いてのAFCチャンピオンズリーグ2に続く3試合目。いきなりの超過密日程に加えてスタメンも固定していたため、チーム全体が疲労困憊だった。そういう意味でも、町田の方が有利と目された。

 案の定、前半は町田の堅守と強度が相手を上回った。序盤に岡村の負傷退場というアクシデントが起きたものの、ドレシェヴィッチが確実に穴を埋めた。そして26分、センターサークル付近から覚めるようなドリブルの独走を見せ、左足で豪快に先制点を奪ったのが、背番号7の相馬勇紀だった。

「塩谷(司)選手を剥がした瞬間、『行けるな』と思って、最後まで持ち込みました。シュートもいいコースに飛びました。体もキレていますし、狙い通りのドリブルとシュートだったと思います」と本人もしてやったりの表情を浮かべる。

 この日の彼は3-4-2-1の左シャドーに入ったが、幅広いエリアを動いて攻守両面でアグレッシブさを披露。ボールを持てば何かをやってくれる期待感を色濃く感じさせた。

 その相馬がけん引する形で前半を1-0でリードした町田。そのまま後半も安定した戦いができればよかったが、今度は菊池が負傷交代。1試合でセンターバック2人が離脱という予期せぬ事態に直面してしまう。加えて、広島のミヒャエル・スキッベ監督が菅大輝、中村草太といったカードを切ってきたことで、一気にギアを上げられ、2点を奪われた。

 結局、終わってみれば、1-2の逆転負け。悔しい黒星スタートを余儀なくされた。

「オフシーズンに(黒田)監督が常々言っていたのは『全員がリーダーにならなければいけない』ということ。その意味を今日は実感しました。主軸で出ている選手が抜けた時にどんよりした空気になってしまったので、ああいう時にもっと締めないといけなかった。自分ももっとリーダーシップを取りながら、チームを鼓舞しながら、なおかつ結果を出さないといけないと感じました」と相馬も反省の弁を口にした。

 確かに、彼や昌子源、中山雄太ら日本代表経験者たちには力強くチームをけん引していく責務がある。とりわけ、FIFAワールドカップ26を狙う立場にもある相馬と中山はJリーグでの一挙手一投足が命運を左右することになる。今季、チームが優勝戦線をリードし、自分自身も世界基準のパフォーマンスを示さなければ、その道は開けてこない。昨夏に国内復帰を決断した彼らにはその意味が痛いほど分かっているはずだ。

「チームとしては優勝というところが強くありますし、個人としても今、すごく野心がある。チームとしてもタイトルを取りたいし、個人としてもたくさん点を取り、結果を出さないといけない。今日は点を取れましたけど、チームが勝てなかったところで自分自身も足りなかった。常に優勝争いをして、最後に頂点をもぎ取って、そのうえでもう一度、代表に食い込みたい。『(代表に)戻る』のではなくて、『チャレンジしていく』シーズンにしたいと思っています」と背番号7は目を輝かせた。

 この日の先制弾のシーンを見れば、彼にそのチャンスがあるのは間違いなさそうだ。今年はFIFAワールドカップカタール2022のメンバー滑り込みのきっかけをつかんだEAFF E-1選手権も開催される。国内組にとってはチャンスだ。

 ただ、その前段階として、相馬自身がもっと目に見える結果を残さなければいけない。昨季の町田加入後はけがもあって、11試合出場1ゴールと物足りない結果に終わっている。今季はシャドーのポジションを主戦場にするだけに、よりゴールに直結するプレーができる。最前線のオ・セフン、シャドーの相棒である西村との連携・連動を高めていけば、キャリアハイの数字も期待できるだろう。

「今日はチームとして前線3人が相手の背後に抜けていくシーンがそこまでなかった。やっぱりその形を増やさないといけないと思います。練習ではうまくコンビネーションを作れているので、ポジティブにやっていきます」と力強く前を向いた相馬。町田の躍進はこの男を中心とした攻撃陣の出来次第と言っても過言ではないだけに、ここからの戦いを注視したい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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