イタリア戦で決勝点を挙げたFW大儀見優季(左) [写真]=嶋田健一
文=青山知雄
予期せぬクロスに体が自然と反応した。まさにストライカーとしての本能。エースの一発が、なでしこジャパンに勝利をもたらした。
28日に南長野運動公園総合球技場で行われたキリンチャレンジカップ2015のイタリア女子代表戦。なでしこジャパンは6月にカナダで行われるFIFA女子ワールドカップの壮行試合として行われたゲームを1-0で制し、大会連覇に向けて弾みをつけた。
スコアレスで迎えた52分だった。オーバーラップした宇津木瑠美(モンペリエ/フランス)が鋭い左クロスを上げると、ペナルティエリア内で大儀見優季(ヴォルフスブルク/ドイツ)がDFの背後から右足を伸ばし、鮮やかにダイレクトボレーを叩き込む。ゴール後に右こぶしを握って力強いガッツポーズを見せた大儀見だったが、実は「自分でも予測していないタイミングでクロスが上がってきて、自然と体が反応した。自然体から生まれたゴールだった」という。
2トップの一角でスタメン出場した大儀見は、前線で基点となるなど攻撃の中心選手として存在感を披露。「勝てたのは良かったけど、イメージにズレがあったり、崩しきれなかった部分があったりして課題は残った」と反省を口にしつつも、「技術の部分で合わないところはあるけど、だいぶ攻撃のイメージは湧いてきたかな」と手応えも口にした。
印象的だったのは、自らに託されている役割に関して聞かれた時だ。
「自分が点を取らなきゃって意識はあるけど、前線で起点になったり、常にゴールを狙って動き出したり、流れが悪い時に(流れを)引き寄せるプレーだったり、自分はみんなにできないプレーを持っていると思う。精神的に余裕を持ってプレーすることも求められていると思うし、チームを勝たせていくことが自分の役割」
なでしこジャパンがワールドカップ初優勝を果たした2011年のドイツ大会は、エースとして期待されながらも開幕戦の1得点に終わり、準決勝からは控えメンバーに回っていた。それだけに今大会に懸ける思いは強い。
「これまで4年間、チームとしても個人としても準備してきた。やるからには連覇を目指します。簡単じゃないことは分かっているし、いろいろあると思うけど、チーム一丸となって進んでいきたい。これからも自分のやるべきことを毎日積み重ねながら(現地時間6月8日の)初戦を迎えたい」
前回王者へのマークが厳しくなるのは当然のこと。ライバル国から徹底的に研究され、分析されて、思うように結果が出せないことも経験した。それでも歩みを止めるわけにはいかない。4年間の思いをピッチで表す時は迫っている。エースの自覚を胸に、大儀見優季が再び世界の頂点に挑む。