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なでしこ連覇へのカギは? ライバル国の状況は? いよいよ開幕、女子W杯を占う

2015.06.06

5月28日のイタリア戦に先発したなでしこジャパンのメンバー [写真]=Getty Images

文=馬見新拓郎

 女子ワールドカップ連覇に挑むなでしこジャパンが、初戦の地であるバンクーバーで調整を続けている。日本中の期待に応えて、なでしこジャパンは再び優勝を手にすることができるのか。だがこれは、女子W杯の前哨戦とされた今年3月のアルガルベカップで9位に終わったことが象徴するように、非常に困難なミッションである。

 今大会で7回目となる女子W杯には、過去最多の24カ国が出場する。前回大会までは16カ国参加で、優勝チームは初戦から6試合で優勝に至ったが、今大会は7試合をこなさなくてはならない。

 加えて今大会は天然芝ではなく、身体への負担の大きい人工芝での試合となる。昨年10月のカナダ遠征に参加し、ふたつのスタジアムを経験した選手たちは「足に疲労が溜まりやすかった」と口をそろえており、試合後のケアには細心の注意が必要になってくる。

 さらに前回大会と大きく違うのは、移動距離である。前回大会のドイツでは陸路移動が主だったが、今回は空路移動となる。

 例えば日本の場合、グループリーグを1位通過したら、決勝までの都市間移動は4回で、バンクーバー、ウィニペグ、エドモントンの西カナダと中央カナダを行き来するだけでいい。だが、2位通過ならば都市間移動が5回に増え、オタワやモントリオールの東カナダに移動して、西カナダの決勝・バンクーバーに再び戻ってこなければならない。

 カナダ遠征で経験したバンクーバーとエドモントンのスタジアムのみで決勝Tを戦い、そして前回大会の優勝国としてのメリットを最大限に生かすためには、GL首位通過は欠かせない。

 日本に限らず優勝を狙うポット1に入ったシード国は、GLや決勝トーナメント1回戦を終えるまでに、どれだけ選手の疲労を蓄積させないかが、優勝へのカギとなる。いわゆる“優勝からの逆算”である。男子日本代表にはなかなかそれは難しいかもしれないが、今のなでしこジャパンはそれができる環境にある。

 出場国が増えたということは、これまで出場が叶わなかったFIFAランキング下位の国も本大会に出場することを意味する。優勝を睨む国には、そういった相手との賢い戦い方が求められる。

 連覇を狙うFIFAランキング4位のなでしこジャパンのライバルとなる国はどこか。各グループのシード国(ポット1)となった国がそれにあてはまるだろう。ドイツ(FIFAランキング1位)、アメリカ(同2位)、フランス(同3位)、ブラジル(同7位)は、どこが優勝してもおかしくない。

 ドイツは最も優勝に近い国で、洗練された戦術と強靭なパワー、そして経験のすべてを兼ね備える。安藤梢とともに今シーズンの女子チャンピオンズリーグを制した1.FFCフランクフルトのジェニファー・マロジャンは、優勝最右翼の新しい10番を背負って飛躍を誓う。2016年9月で退任するシルビア・ネイド監督とともに、4年前の自国開催大会で逃した3度目の女子W杯制覇を狙う。

 この4年間でドイツにFIFAランク1位の座を明け渡したアメリカは、気候に順応しやすい北アメリカ大陸での開催で、再び世界一を目指す。だが39歳のクリスティ・ランポーン、35歳のアビー・ワンバックといったベテランがタフな大会を勝ち抜けるのか、新しい何かを表現できるのかには疑問が残る。

 佐々木則夫監督が「成長が著しい」と評するフランスも有力だ。この4年間で世界の強豪国から次々と勝利を収め、今最も力をつけてきている新興国だ。さらに次回の2019年女子W杯がフランス開催と決まり、今大会はその弾みにしたいところ。司令塔ルイザ・ネシブがチームとともに調子を上げてくれば、各国の脅威となる。

 来年にリオデジャネイロ・オリンピック開催を控えるブラジルも、悲願の女子W杯初制覇で自国にいいニュースを届けたいが、近年はその強さに陰りが見え始めており、マルタ頼みのようなサッカーから脱却するための姿勢や結果が求められている。

 日本が再び世界一になるためのポイントは、ズバリ準々決勝だ。GLを1位通過し決勝トーナメント1回戦を勝ち抜くと、準々決勝ではグループEを1位通過すると見られるブラジル、もしくはオーストラリア、スウェーデンが相手となる。いずれも強敵と対戦するこの準々決勝から、ギアをもうひとつ上げて準決勝へ向かうのが優勝への青写真だ。

 前回大会と異なる試合方式やスタジアムが、一体どの国に吉と出るのか。豊かな自然を持つカナダの環境を味方につけたチームが、その栄光を勝ち獲ることになる。

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