文=江橋よしのり
カナダで開幕したFIFA女子ワールドカップは、日本時間の6月9日に大会3日目を迎え、前回王者なでしこジャパンがいよいよ登場する。
グループCは、なでしこジャパン以外の3カ国がすべてW杯初出場ということもあり、比較的楽な組み合わせだと思いがちだが、初戦の相手スイスは大会開幕を前に評価が上昇。なでしこにとって油断できない相手だ。
スイスは欧州予選で、なでしこがアルガルベカップで対戦したデンマークと1勝1分、アイスランドにはホーム、アウェイともに勝利した。さらに5月27日にはドイツと親善試合を行い、1-3で敗れはしたものの、前半を1-0でリードして折り返す善戦ぶりを見せた。
特にダブルボランチのプレスは強力で、なでしこは先発が予想される澤穂希、阪口夢穂が、立ち上がりから前を向かせてもらえない状況を強いられそうだ。
相手の圧力を受けながらリズムをつかむためには、GKも含めたボール回しでマイボールの時間をできるだけ長く保ちたいところ。足技に長けたGKといえば福元美穂がナンバーワンだが、7日のトレーニングでは(冒頭15分のみの公開ながら)海堀あゆみと山根恵里奈がゴールマウスに立ち、福元美穂は配球役に徹していた。福元がスイス戦の先発構想から外れたのか、それとも他の事情や戦略があってのことなのか、明確な答えを得ることはできなかった。
また、相手が立ち上がりからプレスを掛けてくることに対し、選手たちはそれほどナーバスになっていない様子だ。
「相手が前から来るのは間違いない。でも、それが90分持つとも思えない。DF陣はやるべきことをブレずにやる」と熊谷紗希がコメント。宮間あやは「相手のプレスは人についてくる。だから2人目、3人目の動き、オフ・ザ・ボールの動きの質が大事になると思います」と攻略ポイントを明かす。そしてFWとして先発濃厚な安藤梢は「相手が前掛かりになれば、バイタルエリアが空いてくる。スイスのDFに対しては、ワンツーも効果的だと思います」と、ゴールに迫る明確なイメージを伝えた。
なでしこジャパンはこのスイス戦に勝てば、早くもグループ首位通過をほぼ確実視することができ、残り2戦で選手を入れ替えながら戦うことも可能になる。一方でもしスイスに敗れると、1位通過は絶望的。決勝トーナメントも厳しい山に回ってしまう。
つまり、スイス戦はなでしこジャパンにとって、勝つか負けるかで大会全体の見通しが変わるほどの重要な一戦。その意味合いは、決勝戦と同じと言っても、言い過ぎではない。