イングランド戦後、観客の声援に挨拶で応える選手たち [写真]=Getty Images
文=江橋よしのり
FIFA女子ワールドカップ カナダ2015の準決勝で、なでしこジャパンはイングランドの猛攻に耐えぬき、2-1で勝利。決勝進出をつかんだ。
イングランドは立ち上がりから、高さとパワーを前面に押し出してきた。ジル・スコットのヘディングを起点にし、その背後にボールをそらしてゴールに近づこうとするのが、相手の狙いだ。
そこでなでしこは、スコットには宮間あやと宇津木瑠美をぶつけ、背後のスペースを4バックが対応するよう、守り方を切り替えた。ところが、自陣に割く人数を増やした分、大儀見優季と大野忍も下がって中盤を助けなければならず、これまでの試合のように相手センターバックにプレッシャーを掛けられなくなった。
なでしこは早い時間帯から、主導権をある程度手放して、耐えるサッカーに切り替えた。前半は不運なPKで1点を失ったほか、後半にも何度かピンチを迎えたが、流れの中からは90分を通して失点しなかった。
時間が進むと、イングランドの選手も足をつるなど、疲れが見えてきた。疲れた時間帯でのプレーの精度では、なでしこが一枚上だ。中盤は間延びしたが、逆にスペースを使ったパスが通るようになり、途中出場の岩渕真奈の効果もあって、なでしこは勢いを取り戻す。
アディショナルタイムが3分と示された頃、中盤ではセカンドボールの争奪戦が繰り広げられていた。こぼれ球を拾っては拾われ、というプレーが何度か続いたあと、熊谷紗希から川澄奈穂美へパスがつながる。同時に中央では大儀見と岩渕が全力ダッシュ。
「中に2人いたので、絶対にクロスを上げる!」
そう決めた川澄が速いボールを折り返すと、相手DFが必死で足を伸ばしたクリアボールが、ゴールに吸い込まれた。関わったすべての選手が、勢いよく「前へ」というプレーを選択したからこそ、なでしこの勝ち越し点は生まれた。
この結果、なでしこジャパンは2011年ドイツ・ワールドカップ、2012年ロンドン・オリンピックに続いて、3大会連続でアメリカと決勝を戦うことになった。決勝戦は5日(日本時間6日)、バンクーバーで行われる。