得点を喜ぶ植木理子(右)と宝田沙織(背) [写真]=Getty Images
FIFA U-20女子ワールドカップフランス2018に出場中のU-20日本女子代表は、グループリーグ第3戦・U-20パラグアイ女子代表戦で6-0と勝利し、グループCの2位に浮上したため、決勝トーナメント進出が決定。日本のシュート数23本に対して、パラグアイのシュート数5本という数字が示す通り、試合は日本が一方的に攻める展開となった。
仮に、同組のU-20アメリカ女子代表が勝利した際、日本が決勝Tに進む確率を上げるためには、大量得点が必要となるため、立ち上がりから積極的にパラグアイゴールを目指した。すると5分の先制ゴールを皮切りに、日本のFW陣が爆発。2トップのFW宝田沙織(セレッソ大阪堺レディース)とFW植木理子(日テレ・ベレーザ)が、それぞれハットトリックする活躍で、日本をGL突破に導いた。
「今日は特にゴール取らないといけない試合だったので、宝田選手とは試合前に『お互いにハットトリックを取ろう』って約束していた」と試合後に明かした植木は、あまり現実的とは思えない約束をしながらも、まさしく有言実行となった。宝田の3点目は植木のアシストによるもので、反対に植木の1点目と2点目は宝田が起点となっている。
この年代のエースストライカーとして期待されてきた二人は、ここまでの2試合で無得点だったが、GL突破が懸かった一戦で、ついに仕事を果たした。コンビネーションも徐々に高まってきている。
しかし冷静に考えると、快勝した相手が格下のパラグアイだったことは十分に考慮しなければならないだろう。試合後の池田太監督も「結果としてハットトリックしたが、まだ決められるチャンスもあったので、(FW)二人だけじゃないが、チームとしてのクオリティを上げなければいけない」と、大会中のさらなる成長を求めた。
これには植木も「思ったよりも相手のDFラインが高かったから、オフサイドを取られすぎて手こずった。二人で6点取れたのはよかったけど、もっといっぱいチャンスはあったから、そこを決め切らないと、ここから先の試合は厳しくなる。そこは課題の一つ」と分析しており、慢心にはつながらなさそうだ。「チームが次に進んだことは嬉しいけど、ここからが本番」と続けて、気合いを入れ直した。
植木は池田監督のU-19日本女子代表監督就任後、初めての活動となる2017年2月の大阪府堺市キャンプに、当初は招集されたが、体調不良のため不参加となった。同年10月のAFC U-19女子選手権中国2017(アジア予選)の前にキャンプに参加したのは、7月の静岡キャンプ1回のみ。それでもアジア予選ではいくつものチャンスを演出し、決勝戦でU-19朝鮮民主主義人民共和国女子代表から決勝点を奪うなど、勝負強さを見せてきた。
昨季は育成組織の日テレ・メニーナ所属ながら、ベレーザの一員としてプレナスなでしこリーグ1部で全試合に出場し、今年1月にはメニーナの一員として出場する大会中に、なでしこジャパン候補キャンプに飛び級で選出されるニュースを聞いた。
今年度からは早稲田大学に通い始め、7月のプレナスなでしこリーグカップ1部では、8得点で得点王に輝いて日テレの優勝に貢献し、その決勝の3日後にはU-20日本女子代表に合流して、今大会を戦う。生活環境が変わる大学1年目でコンディションを崩す選手もいるが、それは植木には無縁のようだ。
今大会は中2~3日で試合が組まれるため、直前に試合出場した選手はホテルで調整する日が多いが、それでも植木は毎日のように練習場に姿を現わす。スタッフに制されながらも、グラウンドの周りをランニングしたり、ボールを蹴ったりしているところを見ると、まだまだ元気はあり余っているようだ。
日本はグループCを2位通過したため、グループDの1位ドイツと準々決勝を戦う。
「ドイツが強いのは分かっているけど、どんな対戦相手だとしても、決勝Tは結局、勝ち残っていけばどんな強い相手とでも当たる。どこが対戦相手でも変わりない。それに今の日本は、また次に進むような雰囲気ができていると思う」
そう言って植木は、同会場で行われるドイツの試合を見るため、スタンドに向かった。速くて強い優勝候補のドイツを目の当たりにしても、まだまだ植木は元気があり余っているのか、次の練習場でも確かめてみたいと思う。
取材・文=馬見新拓郎
By 馬見新拓郎