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[ファントム キャンプに密着 #2]15歳が浦和の練習に参加。藤野あおばと愛川陽菜が得たものとは?

2020.03.14

左から菅澤(浦和)、藤野(十文字)、愛川(神村学園)、南(浦和)、池田(浦和)[写真]=NIKE

ナイキと言えば、今話題の「厚底シューズ」だろう。それまでの「薄くて、軽い」という常識を覆したランニングシューズは、限界に挑み続けるランナーをサポートしたいという思いから誕生した。すべてはアスリートのために――。これはどの競技にも共通するナイキの合言葉みたいなものだ。

そんなナイキが新たにスポットを当てたのは高校生の女子サッカー選手。彼女たちが参加したトレーニングキャンプを取材した。

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まだ2月だというのに、沖縄の太陽は容赦なかった。ジリジリと照りつける日差しが痛くて、帽子を持ってこなかったことを後悔したくらいだ。グラウンドでは、浦和レッズレディースの選手たちが和やかな雰囲気でトレーニングをしていた。暖かい気候のなかで心身がリラックスしているのが伝わってくる。

だからこそ、お目当ての選手はすぐに見つかった。十文字高校の藤野あおばと、神村学園高等部の愛川陽菜。どちらも15歳の高校1年生だ。日本のトップリーグでプレーする選手たちに囲まれて、ガチガチに緊張するのも無理はない。

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緊張した面持ちで浦和の練習に入る十文字高校の藤野あおば [写真]=NIKE

 彼女たちは1月下旬の「ファントム キャンプ」で優秀選手に選ばれ、その“ご褒美”として浦和のトレーニング参加権が与えられた。ナイキはこれまでにも、スパイク『ファントム ビジョン』のロールモデルである「ゲームをコントロールし、決定的な仕事をするプレーヤー」を発掘するキャンプを実施してきたが、女子高校生を対象に行うのは初となる。

「日本の女子サッカー界の底上げを図るためには、中学生や高校生がもっとレベルアップをしないといけない。トップだけが活性化しても意味はない。ナイキのプロジェクトは、そのレベルアップにつながるおもしろい企画だと思う」

そう語るのは昨シーズンから浦和を指揮する森栄次監督だ。「トップレベルを肌で感じられるいい機会」と言うように、FW菅澤優衣香やDF南萌華、GK池田咲紀子といった日本代表選手たちとプレーできるチャンスは貴重なものだ。ゲーム形式の練習が始まると、2人の表情はグッと引き締まった。

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ゲームが始まれば年齢、キャリアは関係なし。自分の全力をぶつけた [写真]=NIKE

 隙があれば果敢にゴールを狙い、ボールを奪われれば必死に食らいついていく。森監督が「2人とも基礎がしっかりしている」と認めるほど、足元のスキルは高く、プレーに問題はない。見ていて少し気になったのは「声」の部分だった。菅澤が言う。

「短い言葉でも、声を出せば周りが動いてくれる。自分がプレーしやすくするためにも声を掛けることは大事だと思います。それができれば、もう一皮むけるんじゃないかな」

ポンと入ったチームで、しかもトップ選手の中で自分を出せと言われても、難しいに決まっている。15歳の自分もそうだった、と菅澤が笑う。「トップリーグでプレーしている選手を相手にしたらしゃべれないだろうし、『質問ない?』と聞かれてもパッとは出てこない。堂々とプレーしているだけでもすごい」。笑顔を浮かべながら、菅澤が続けた。「今考えると、日本代表に入った頃にもっと先輩たちに自分から話しかけていれば良かったなと。今のうちから経験ある選手と積極的にコミュニケーションを取ってほしい」。当時の自分ができなかったからこそ、彼女たちに伝えたかったのだろう。

たぶん、日本の女子サッカー界において“チャンス”はまだまだ少ない。ましてや高校の部活動でサッカーをしている選手がトップリーグのチームの練習に参加できるなんて、そうあることではない。今回の取り組みもクラブや選手の協力がなければ実現できなかったはずだ。プロジェクトに関わった人たちの思いを代弁するように、南が語る。

「スパイクの提供だけでなく、こういうプロジェクトをやっているナイキが女子サッカー界を支えていると言っても過言ではない。だから私もできる限り協力したいと思いました。女子サッカー界を盛り上げる取り組みは続けてほしいし、私も参加したい」

その南は、高校生2人に「たくさん真似をして、いいプレーを盗んでほしい」とアドバイスを送る。各世代別の代表で年上の選手とプレーする機会が多かった南は、その度にたくさんのものを吸収してきたという。「うまい選手とプレーするのは、自分が上達するための一番の近道だと思う。最初は真似するところから始めて、自分なりにアレンジを加えていって、最終的には自分のモノにする。若いうちからコツコツと積み重ねていくことが大事」

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神村学園高等部の愛川陽菜。午後練では午前よりも笑顔が増えた [写真]=NIKE

 現在地の把握は成長の糧になる。今回のキャンプで、彼女たちはトップレベルを肌で感じることができた。つまりゴールからの逆算ができるようになったということだ。愛川は「日頃の練習では感じることのないプレースピードだった」と話し、藤野も「ボールが動いている間に考えることが多すぎて、いつもよりリアクションが多くなった」と口にする。最後まで声は小さく、控えめで、どこまでも謙虚だった。でも、トレーニング前と比べて、笑顔は格段に増えていた。

取材・文=高尾太恵子(@t_taek0)

By 高尾太恵子

サッカーキング編集部

元サッカーキング編集部。FIFAワールドカップロシア2018を現地取材。九州出身。

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