日テレ・東京ヴェルディベレーザのキャプテンとして開幕戦に挑む清水 [写真]=WE LEAGUE
「#これは新しい日本のキックオフだ」──。高揚感をくすぐるキャッチコピーを掲げ、9月12日に日本初の女子プロサッカーリーグ『WEリーグ』が開幕する。日本女子サッカー界が大きなターニングポイントを迎える中、日テレ・東京ヴェルディベレーザのキャプテン清水梨紗が、先頭に立って新時代を切り開いていく覚悟を言葉にしてくれた。
バスケットに負けないように、自分たちも頑張らないといけない
──いよいよWEリーグの開幕が目前に迫ってきました。新しいプロリーグが始まるという実感はありますか?
清水 これまでずっとなでしこリーグで戦ってきて、その開幕もすごく取り上げてもらいました。でも、今のWEリーグ開幕に向けた盛り上がりはその時以上ですし、クラブとして盛り上げていこうという熱量をすごく感じます。実際、取材を受ける機会も増えましたし、WEリーグを知ってもらうために今は本当に大事な時期ですね。
──露出が増えていますよね。それにSNSを駆使してご自身でも発信しています。自分が表に立って伝えていかなければいけないという意識は強いですか?
清水 そうですね。新しいリーグということで、まだ世の中には全然浸透していないと思いますから。たぶん、今はまだ「女子サッカーと言えば、なでしこリーグ」と思う人のほうが多いのかなと思っていて。だからこそ、女子のプロリーグが始まるんだということをたくさんの人に知ってもらいたいですし、そのためには努力が必要です。もちろんプレーで発信していくことも大事なので、そのあたりは意識しています。
──WEリーグが秋春開催となり、昨シーズンの終了から準備期間が半年以上ありました。
清水 これまでは基本的に1月、2月にチームが始動して3月に開幕でしたからね。そのサイクルが変わったことで大変な面はありました。実際のところ、今年2月にチームが始動したときは「9月まで長いな」と思っていて(笑)。ただ、私は東京オリンピックに向けてコンディションを整えていくことにフォーカスしていましたし、オリンピックが終わるとWEリーグ開幕はすぐそこに迫っていました。今振り返ると、長くは感じなかったですね。
──その東京オリンピックは準々決勝敗退という結果に終わりました。どういう大会になりましたか?
清水 すごく悔しい……この一言に尽きます。2019年のワールドカップ・フランス大会を経てのオリンピックで、W杯の悔しさを全部ぶつけましたが、また悔しい気持ちが残る大会になってしまいました。それでも、開催自体が危ぶまれていた中で、一生に一度の東京オリンピックという舞台に立てたことは、すごくいい経験になったと思います。
──オリンピックを経験したことで、これから始まるWEリーグに対する思いに何か変化はありましたか?
清水 2011年のW杯でなでしこジャパンが優勝した後、なでしこリーグがすごく盛り上がりましたよね。私も当時それを見ていて、すごく印象に残っています。あの時と同じように、今回のオリンピックはWEリーグを知ってもらう大きなチャンスでしたし、「リーグを盛り上げるためにも」という思いを持ってオリンピックを戦いました。でも、結果を出すことができず……本当に悔しいし、申し訳ない気持ちでいっぱいです。これからWEリーグが盛り上がるかどうかは選手たち次第だと思うので、精いっぱいプレーしたいと思っています。
──バスケットボール女子日本代表が銀メダルを獲得しました。他競技の女子チームが活躍しているのを、どのように見ていましたか?
清水 バスケットはほとんどの試合を見ていましたし、すごく応援していました。銀メダルが決まったときは本当にうれしかったですね。スポーツをしている人間として、女子スポーツが盛り上がるのはうれしいことです。サッカーの発展にもつながっていくはずですし、バスケットに負けないように、自分たちも頑張らないといけないなと思いました。
海外の選手が「WEリーグに行ってみたい」と思うようなリーグに
──「女子スポーツをもっとメジャーに」という思いがあると思いますが、女子スポーツのステータスを上げていくために何が必要だと思いますか?
清水 難しいですね……。東京ヴェルディにはいろいろなスポーツチームがあって、バスケットボールやトライアスロンなど他の競技の方と話をする機会がありました。そこで、そのテーマも話に上がったのですが、まずは知ってもらえるかどうか、日常的に触れる機会があるかどうかがすごく重要だと思います。それ以外にもたくさん答えはありそうで、解決策を絞るのは難しいですが、自分の立場だと、まずは選手を知ってもらうこと。そこからチームのことや、他の選手のことも知ってもらう。そういうふうになっていけばいいですね。
──だからこそ、発信することが大事で取材も積極的に受けている。
清水 チームの広報さんには「ちょっと多すぎるんじゃない?」と言っていますけど(笑)。私はベレーザのキャプテンですし、何よりチームを知ってもらいたいという思いが強いんです。ベレーザのことが好きだから、なるべくたくさんの人に試合を見に来てもらうためにも、できることはやっていきたいです。
──その責任感の強さは、若手から中堅へと立ち位置が変わり、キャプテンを担うようになったからでしょうか?
清水 これまでは年下の選手として、今も一緒にやっているイワシさん(岩清水梓)、過去にはアリさん(有吉佐織)や(阪口)夢穂さん(ともに現・大宮アルディージャVENTUS)という、偉大な先輩たちと一緒にやってきました。3人のようにはなれないですけど、彼女たちをモデルにしてというか、自分の良さを出しながらチームを支える、女子サッカーを引っ張っていく、そんな存在になりたいという思いは持っています。その一環としてベレーザを知ってもらうためにも、頑張って取材を受けています(笑)。
──プロリーグとなり、選手への評価はよりシビアになります。ベレーザは1試合平均観客数5,000人を目標に掲げていますが、それを達成できるかどうかは選手のプレーや、試合の見せ方などに懸かってきます。良いプレー、良い試合を見せなければいけないという意識も高まっているのでは?
清水 ベレーザの強みは、日々積み重ねて成長していくことだと思っています。その中で1試合1試合に懸ける思いはもっと出していかないといけない。その部分は絶対に、昨シーズンよりも強く出していきたいと思っています。
──女子サッカー界は大きな転換期を迎えています。プロサッカー選手として今後のビジョンはありますか?
清水 世界的に見て、今の女子サッカー界はアメリカやヨーロッパが日本の先をいっています。だからWEリーグはアメリカやヨーロッパとは違った魅力を示しながら、将来的には海外の選手が「WEリーグに行ってみたい」と思うようなリーグにしていけたらいいなって。そのためには、選手個々がレベルアップしなければいけないですし、なでしこジャパンでの活躍もすごく大事になってくると思います。その舞台で活躍できるように頑張っていきたいです。
インタビュー・文=高尾太恵子
By 高尾太恵子
サッカーキング編集部