なでしこジャパンMF長谷川唯(マンチェスター・シティ/イングランド)
パリオリンピック2024の出場権獲得に貢献したなでしこジャパン(日本女子代表)のMF長谷川唯(マンチェスター・シティ/イングランド)が、最終予選第2戦の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)女子代表戦から一夜明けた29日、メディア取材に応じた。
なでしこジャパンにとって、五輪出場権の獲得は、女子サッカーの未来を左右する絶対的な使命。長谷川は「ポジティブにプレッシャーを楽しんでプレーできました。そこまで重圧にならず、楽しくプレーできて勝てました」と明るく振り返ったが、この試合が今後に及ぼす影響と自らの責任は十分に認識していた。
「オリンピックに出るか出ないかは、日本女子サッカーの人気に関わってくることですし、自分もリオ五輪の出場権を逃したときを見ていたので影響の大きさは分かっていました。あらためて、その場に立たせてもらって、その責任を背負うことは大変だと感じることができました」
なでしこジャパンが2011年にFIFA女子ワールドカップ(W杯)で優勝したことで、女子サッカー全体の人気は上昇。しかし、2016年リオ五輪の出場権を逃すと、国内リーグの観客数は減少した。第1戦の試合前には、2011年の栄光と2016年の屈辱をどちらも経験したキャプテンのDF熊谷紗希(ローマ/イタリア)から、あらためて五輪出場権獲得の重要性がチームに伝えられ、長谷川も「リオ五輪の出場を逃した話を聞いて、みんなもいろいろな責任を背負っていることを再確認した」という。
そんな大きな重圧を乗り越えて掴んだパリ行きの切符。激闘から一夜明け、長谷川は「昨日は夜の試合だったこともあり、今も心境は変わらず、本当に嬉しい気持ちと安心した気持ちでいっぱいです」と安堵の表情を見せていた。
とはいえ、最終的な目標はパリ五輪での金メダル獲得。長谷川も「金メダルを目指すのは、はっきりチームとしても話しています。内容のところはまだ話せていないですが、オリンピックは出場だけでなく、金メダルを目指すというところは、全員の共通認識として持っています」と気を引き締める。そして、「第1戦で苦しい思いをして、試合の中で流れを変えられなかった」と課題を語り、「3-4-3がいつも上手くいくわけではないので、4-3-3もチャレンジしてやっていくしかないかなと思います」と、第1戦で機能しなかった『4-3-3』のシステムの完成度を高めることが必要だと話していた。
「自分自身、4-3-3のインサイドハーフはやりやすいタイプだと思っています。ただ、ベレーザ(日テレ・ベレーザ/日テレ・東京ヴェルディベレーザ)の時は少しフリーで動くこともありましたが、これまでやってきた4-3-3はポジションを守ることが多く、基本的には理論的にやるサッカーでした。そういった意味では、今の代表の4-3-3は少し異なるサッカーかなと感じています。それでもやり方はいろいろあると思うので、答えは自分自身まだ見つかっていないですけど、メンバーや相手に合わせてどんどんやっていかないといけないなと思います」
なでしこジャパンではインサイドハーフを務める長谷川だが、マンチェスター・シティでは4-3-3のアンカーを担う。また、長谷川とともに第1戦でインサイドハーフで起用された長野風花も、所属クラブのリヴァプールではアンカーの役割を務めている。限られた代表活動の時間の中で、連係をどう高めていくべきか。
長谷川は「代表とクラブは別々で考えていて、監督も違えば、求められている役割も違うので、『代表のためにシティでこういうプレーをしよう』みたいなことは考えていないです。個人戦術は共通で使える部分はありますけど、代表に来たら割り切って違うポジションのプレーをしようと思っています」と意識の違いを語り、「風花との連係については、本当に上手くいっていると思っていて、風花がどちらかと言えば『動かないアンカー』の本職だとわかっているので、代表では少し自分がフリーに動いたり、前に行くことは意識しています」と、説明していた。
7月のパリ五輪まで残された時間は少ない。ただ、大きな重圧を乗り越え、本大会までにさらなる強化を図れるはずだ。長谷川もパリ五輪での目標を問われ、「日本女子サッカーの未来に関わりますし、自分が目指してきた舞台なので、楽しんでプレーして、自分のためにもチームのためにも、いろいろな人のために金メダルを目指して戦いたい」と、力強く語っていた。
By サッカーキング編集部
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