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ザックが選んだもの、捨てたものは何か? 大久保を選んだ明確な理由

2014.05.12

22ゴールで得点ランクトップに立つ大久保嘉人 [写真]=Getty Images

文=川端暁彦

 5月12日、日本代表W杯登録メンバー23名が選抜された。何かを選ぶということは何かを捨てるということ。日本に限らず、W杯に臨むチームの監督は「24人以上選びたかった」というのが本音だろう。あらゆる事態に備え、あらゆる戦況に応じることを考えれば、23人という枠はいかにも狭いのだ。ここではアルベルト・ザッケローニ監督が「選んだ=捨てた」ものは何なのかを考えていきたい。

 大久保嘉人のサプライズ選出が注目度で抜けているが、今回の選考における大きなポイントとして挙げたいのは、ボランチだ。基本正副合わせて4枠と考えられている位置ではあるが、ザッケローニ監督は「悩みどころとして、ボランチを1枚多く連れて行こうかどうしようかという問題があった」と語る。これには、長谷部誠が負傷明けで復帰したばかり、遠藤保仁もコンディションが万全には見えず、高温多湿のブラジルを考えると二人とも90分のフルタイムで使えるのか微妙なところという背景がある。リスクマネジメントという意味では、山口蛍と青山敏弘に加えてもう1枚を選んでおきたかったというのが指揮官の本音だろう。ここで考えられていた「5人目」は普通に考えると、細貝萌ということになるのだが、ザッケローニ監督がこの「5人目」について「ユーティリティー性」を挙げていたことを考えると、CBのサブにもなり得る高橋秀人がその候補だったのかもしれない。

 ただ、指揮官は「5人目」を選ばなかった。ここに1枚を使うということは、「そのためにディフェンスを削るのか、FWを削るのかということだ」(ザッケローニ監督)。DFを削るとすると、両SBをこなせる酒井高徳、さまざまな位置をこなせる伊野波雅彦は外しづらい。となると、実質的に右SB専任となっている酒井宏樹となるのだが、この位置は負傷からの復活が懸念されている内田篤人のポジション。ここを削ってしまうのは、これまたリスクとなる。こうなるとDFは削りづらい。攻撃的な選手を外す、つまり「大久保を選ばない」といったチョイスはあり得たのだろうが、指揮官はボランチの位置に抱えるリスクよりも攻撃のオプションを選んだということになる。

 その大久保の選出は意外ではあったかもしれないが、懸念事項である岡崎慎司のサブになりつつ、柿谷曜一朗と同じく裏を狙えるタイプのFWのサブにもなれて、さらに4年前のように左MFとしてハードワークすることも期待できる。さらに言うと、控え不在が言われて久しい本田圭佑の位置でも考えられなくもない。攻撃のオプションでありながら、多彩な位置での「スペア」になれるということが選考の決め手だったのではないか。

 一方、多彩なメンバーを選んだ攻撃陣に関して指揮官が「捨てた」のは、明確に一つある。「高さ」のオプションである。豊田陽平、ハーフナー・マイクといった高さで勝負できるタレントを外したことは、攻撃面で高さ勝負の選択肢をあえて捨てたということだろう。豊田のような選手を途中から投入するのは、セットプレーでの守備力を高める効果も持つだけに、小さくない意味がある。

 複数のリスクは、あえて冒したリスクでもある。「主導権を握るサッカーをする。攻撃的にいく」という指揮官の宣言は、単なるハッタリではなさそうだ。

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