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地元・鹿児島で世界への一歩を踏み出した点取屋…大迫勇也は1トップのレギュラーを奪えるか?

2014.05.27

日本代表に選出された大迫勇也 [写真]=VI-Images via Getty Images

文/元川悦子

 21日からスタートした2014年ブラジルワールドカップに向けた日本代表の指宿合宿。鹿児島県出身の遠藤保仁(G大阪)、大迫勇也(1860ミュンヘン)、それから宮崎県生まれで鹿児島実業高出身の伊野波雅彦(磐田)の3人は、地元メディアや関係者からの注目がつねに集まっていたが、大迫は地元でブラジルへの重要な一歩を踏み出せたことを素直に喜んだ。
 
「鹿児島に帰ってこられるのはすごく嬉しいことだし、ここでプロとしてやれるのはいいですね。鹿児島のしゃぶしゃぶも食べましたし、元気が出ました」と日頃シャイな彼も爽やかな笑顔を見せていた。
 
 これまで代表合宿が指宿が行われると、注目されるのは鹿児島実業出身の遠藤だった。鹿実からは城彰二(解説者)、松井大輔(磐田)ら代表選手が何人も出ていて、伊野波も彼らの後輩に当たるが、大迫は鹿児島城西出身。2009年正月の高校サッカー選手権で大会新記録となる通算10ゴールを挙げ、全国に名前をとどろかせたことは記憶に新しい。そういう力を蓄えた故郷から、彼は初の世界舞台での1トップの定位置を狙うつもりだ。
 
 大迫はこれまで世界大会に縁のない男だった。城福浩監督(現甲府)率いるU-17日本代表時代は最終候補まで行っていたが、本大会メンバーからは漏れてしまった。ユース年代の時も牧内辰也(現ファジアーノ岡山ネクスト監督)率いるU-19日本代表候補に選ばれながら、最終的に落選。日本が世界舞台を逃した2008年AFC・U-19選手権(サウジアラビア)も参戦すら叶わなかった。さらに2012年ロンドン五輪も、予選では関塚隆監督(現解説者)からFWの柱と位置づけられていたのだが、本大会はまさかのメンバー外。選出確実と言われていただけに、本人もショックは大きかったに違いない。
 
 それだけに、今回のブラジル大会には並々ならぬ思い入れがあるはずだ。昨夏の東アジアカップ(韓国)でチャンスをつかみ、その後もザックジャパンに呼ばれるようになったが、しばらくは柿谷曜一朗(C大阪)の後塵を拝していた。その地位が大きく変化したのが昨年11月のオランダ戦(ゲンク)で奪った前半終了間際のゴールだった。あの一撃がチームに大きな活力を与え、2-2のドローに持ち込む原動力となる。次のベルギー戦(ブリュッセル)では柿谷も得点したが、数少ないチャンスをモノにしたという意味で、大迫の方が勝負強い印象を残した。
 
 その勢いを力に変えるため、彼は今年1月に1860ミュンヘンへ移籍。ドイツ2部で屈強な男たちと対峙することで、ポストプレーやゴール前の動きに磨きをかけてきた。

「ドイツの激しい中でやることで、球際の部分や競り合いだったりで、自分のプレーを出せるようになってきたかなと。そこはプラスになってると思います」と本人も手ごたえをつかんだようだ。

 その実績と経験が日本代表でのプレーにも表れている。指宿合宿ではベテランの遠藤や大久保嘉人(川崎)らと同じ組でプレーすることも多いが、周りとスムーズに意思疎通を図れるようになってきた。

「少しずつはチームに慣れてきてるとは思うし、その中で自分のプレーを出すのが今は大事。まだまだまだまだよくなると思うんで。今はまだフィジカル中心の練習が多いけど、チームコンセプトを頭に入れつつ、整理している感じです。嘉人さんも一緒にやるのは全く初めてだけど、知らないとか言ってる場合じゃない。コミュニケーションはしっかり取らないといけない。僕がプロになる前から五輪とか代表で活躍してる選手ってイメージはありますけど、本番までにどういう関係が作れるかすごく楽しみ。2列目から飛び出すのが得意だし、抜け出しもうまいし速いんで、そういうところを流れの中でうまく出せるように自分も動ければいいと思いますね」と大迫は大久保とのタテ関係に具体的なイメージを描きつつある。
 
 トップ下に本田圭佑(ミラン)が入るのと、大久保が入るのでは、動き方は全く違う。1トップの大迫がしっかり体を張ってタメを作り、彼らにプレーする時間を与えることが、それぞれの長所を引き出すカギになる。そういう使い分けができれば、ブラジル本番で1トップのファーストチョイスになれる可能性はより高まる。
 
 加えてゴールという結果を残すことが肝要だ。その重要性はドイツへ赴いて、より強く感じているはずだ。

「1トップはゴールに一番近いし、単純に考えて一番ゴールに向かえるポジションだと思う。代表の1トップはちょっと特殊ですけど、今まで個人でやってきたことを出せたらいい」と彼自身も初めての世界舞台での1点を虎視眈々と狙っていくという。

 年代別代表時代の3度の挫折をバネに、這い上がってきた男の一挙手一投足が大いに気になる。

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