コスタリカ戦終了後、勝利を喜ぶ日本代表 [写真]=Getty Image
調整は、順調といったところか。
試合を振り返るアルベルト・ザッケローニ監督も、口ぶりこそ淡々としていたが、「主導権を握って自分達のサッカーをやるんだと思ってくれたことは非常に良かった」とコスタリカ代表戦での手応えをしっかりと語っていた。
大きく負荷のかかった状態だったキプロス代表戦から先発メンバーを4選手入れ替えて臨んだが、各選手のコンディションの上向きぶりは明白だった。1点ビハインドで折り返した前半についても、指揮官は「個人的には前半のパフォーマンスも悪くなかったと思っていて、多くのチャンスを作れていた」と評価を口にする。
そして、選手起用で鉄板だという考えがなくなりつつあることは、歓迎すべき点ではないか。かつて、遠藤保仁と長谷部誠のダブルボランチはチームの屋台骨と言える存在だったが、本番まで2週間を切った現時点では、2人が絶対的なファーストチョイスではなくなっている。
コスタリカ戦では、3月のニュージーランド代表戦と同様、山口蛍と青山敏弘がボランチを構成したが、前回同様に出色の出来栄えと言える内容だった。守備では激しさを持ちながら、広くボールを散らしながら一気に急所を突くようなラストパスも織り交ぜたプレーは、文字通り心臓部として機能していた。既に計算できるオプションと言え、今回も同点ゴールを叩き出す結果となった遠藤の後半からの投入策も、2選手の出来があってこそだろう。
そして、注目される1トップの定位置争いだが、出場選手がそれぞれ持ち味を出したところは喜ばしいはずだ。途中出場で1ゴール1アシストという結果を残した柿谷曜一朗のインパクトは言うまでもないが、先発出場した大迫勇也の出来も見逃せない。逸機もあり無得点に終わったものの、安定したポストプレーでしっかりと存在感を示していた。この日は右サイドで先発出場して好機に絡んだ大久保嘉人を含め、特長の異なる3選手を調子や対戦相手の相性で使い分けても面白いはずだ。
また、ディフェンスラインに目を移しても、収穫は少なくない。4試合連続フル出場となった森重真人は守備だけでなく度々縦パスを前線に供給し、貫禄も出てきている。酒井高徳の負傷により、左サイドバックを務めることとなった今野泰幸も及第点の出来を見せた。試合復帰2戦目となった吉田麻也はフル出場し、内田篤人も70分過ぎまでプレーした。「トレーニングのところで少し疲れが見えた」ということで欠場となった長谷部に心配は残るが、吉田と内田に関しては、復活に向け順調のようだ。
出場した各選手が存在感を発揮したことで、本番直前になって今更チームの再構築かという声も聞こえてきそうだが、それぞれがチームのやり方を熟知しているだろうから心配は無用だろう。むしろ、高温多湿と長距離移動という条件下で連戦をこなすことを考えれば、コンディションの良い順番に起用してもチーム力が落ちないことを歓迎すべきだろう。指揮官も常々、コンディションの重要性を説いている以上、願ってもないことのはずだ。
とは言え、痛快な逆転劇に心配事がないわけではない。キプロス戦よりは大幅に復調したものの、いまだにトップフォームではない本田圭佑の状態を危惧する声は根強いだろうが、初戦のコートジボワール戦まで時間があることからさほど心配はいらないだろう。ただ、数少ない絶対的な存在である本田と周囲の調子のギャップは懸念材料かもしれない。
逆転ゴールを挙げた香川真司は試合直後、「すごく良い状態なので、初戦に向けしっかりキープしていきたい」と、コンディション面について言及している。初戦が行われる14日はまだ先で、6日にはザンビア代表との試合も組まれている。本田がコンディションを戻す時間がある一方、チームの調子が下り坂に差し掛かってしまうといういらぬ心配が頭をよぎる。
「当然、これから2週間あるので、今がトップフォームでありえるはずはない」
こればっかりは、指揮官の言葉を信じるしかない。
文=小谷紘友
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