ザンビア戦でフル出場し、2得点を挙げた本田 [写真]=Getty Images
2013年6月のコンフェデレーションズカップ以来、ワールドカップレベルの強豪相手のゲームで先制点を献上するゲームを繰り返しているザックジャパン。2日のコスタリカ戦も全く同じだった。最終的には逆転勝ちしたものの、本田圭佑(ミラン)は「やはりポイントは先制点。それを相手に与えてしまうと、前回王者のスペインでさえスイスとの初戦を落としていますから。先制点を取られたら負けるという危機感を持ってやらないといけない」とチームに改めて苦言を呈していた。
だが、6日のザンビア戦でも日本代表は同じことを繰り返してしまう。2006年ドイツ・ワールドカップ惨敗を経験している遠藤保仁(ガンバ大阪)が、「ドイツでは大会直前の親善試合のマルタ戦でふわっと入ってしまい、そのままの空気で本番に挑んでしまった。だからこそ、最後のテストマッチは非常に重要」と警鐘を鳴らしていたのに、日本は“インテンシティ”がまるで感じられない入りをしてしまう。2012年アフリカネーションズカップで優勝しているザンビアの身体能力の高さに後手を踏み、開始9分に課題のクロスから一撃を浴び、29分にはまたも問題視されているリスタートから2点目を食らったのだ。
「何試合も連続で先に失点を許しているのは何か原因があるからだと受け止めないといけない。ただ、誰かが1本サボったとかいう分かりやすい失点ならいいけど、全体の課題という気がする。全体の課題はすごくあやふやになりがち。こんな3失点もしたら、コートジボワールに4点取れる可能性はおそらくゼロに近い。そういう危機感で入っていかないといけない」と本田も苛立ちを募らせた。
前半悪かったのはチームの入りや戦い方だけではない。彼自身も動きがげきてきに改善されたわけはなかった。スッと伸びてくる足の長さ、リーチの長さというアフリカ勢特有の身体能力に手こずり、ボールを失う場面が目立つ。前線に位置する柿谷曜一朗(セレッソ大阪)や横関係にある岡崎慎司(マインツ)、香川真司(マンチェスター・U)らとの距離感も遠く、攻撃面で怖さを感じさせられなかった。
不安視する声が高まっていることを本田自身も感じ取っていたに違いない。ミランでの苦境を経験し、彼はそういうネガティブな視線をプラス思考で捉えられるようになった様子だ。
「僕を『大丈夫か?』と言っている人は、僕に何を求めているかっていうことがすごく高いんでしょうから、そういう人には大会が終わって感謝したいなと思う。逆にこれでよしとしている人には『本田圭佑はこれ以上もっといいパフォーマンス出せるよ』ってところは見せていきたい。どちらに対しても、いい意味でサプライズを起こせるといいと思っています」と彼は本音を吐露する。
こうしたポジティブシンキングが、その後の巻き替えしにつながったのかもしれない。前半終了間際に香川が奪ったPKを本田が決め、待ち望んでいたゴールを手にしたことで勢いがついたのだろう。
後半は大久保嘉人(川崎フロンターレ)の投入もあって動きが活性化。運動量もゴールへの推進力も出てきた。香川の同点弾が決まった後、本田は75分に森重真人(FC東京)の右クロスに飛び込んで逆転弾となる3点目をゲットする。試合終盤も激しい打ち合いとなり、日本は再び3-3に追い付かれたが、最終的に青山敏弘(サンフレッチェ広島)のピンポイントの縦パスに大久保が反応して4点目。壮絶な点の取り合いを制することになった。
「前回のワールドカップのような守備に重点を置いたスタイルと、今のような攻撃に重点を置いたスタイルの違いがあるから、単純に比較しても参考にならない。前回のスタイルだと失点はしなかったかもしれないけど、こうやって4点は取れなかった。悪いところばかり見るっていうのは、メディアのみなさんにお任せして、個のスタイルで行くって決めた以上はビビらず、これを維持しながら解決できるところはしていきたい」と本田は失点の多さについては危機感を忘れなかったが、チーム全体、そして彼自身が最後まで持ち続けた点を取りに行く姿勢には自信と手ごたえを感じたという。
尻上がりによくなった本田に対して、日本サッカー協会の原博実専務理事兼技術委員長も、「ちゃんと調子を上げている。ああいう中で決定的な仕事ができるし、体の強さを活かして苦しい時にファウルをもらってくれるのは大きい。自分を追い込みながらコンディションを上げてきているなと思います」とアルベルト・ザッケローニ監督の思いを代弁してくれた。
ようやく復活の兆しをつかんだ本田がチームを厳しく鼓舞し、課題に対して警鐘を鳴らすことで、1週間後の本番にはより引き締まった試合ができるはず。日本がドイツと同じ轍を踏むか否かは、本田の一挙手一投足にかかっているといっても過言ではない。
文=元川悦子
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