ザンビア戦で決勝点を決めた大久保(左)とハイタッチをする香川(中央) [写真]=Getty Images
結果的には5連勝でワールドカップに臨むことになったが、3失点を喫したこともあって、試合後の会見では守備の問題点への質問が飛ぶ。そして、指揮官も実にあっさりと認めた。
「当然このままではいけないと思うし、修正していくべきポイントであると思う」
大久保嘉人が試合終了間際に挙げた決勝ゴールで4-3と乱戦を制したものの、4日前のコスタリカ代表戦に続いて、ワールドカップ前では最後のテストマッチとなったザンビア代表戦でも、先制点を許した。約1年前に行われたコンフェデレーションズカップのブラジル代表戦から17試合をこなしたが、完封したのは昨年9月のグアテマラ代表戦と先月末に行われたキプロス代表戦の2試合のみ。勝つには勝ったが守備面の不安も伴う内容となったことには、アルベルト・ザッケローニ監督も「2点ビハインドから逆転して、4ゴールを奪っての勝利だが、そういったところはあまり興味がない」と語るとともに、「チームのロジックに従ってプレーすればより勝利への可能性は高まる。また、その逆の場合は敗北への可能性が高まる。この試合に関しては、後者だったのではないかと思う」とはっきりと口にして、低調な出来だったことを認めている。
14日にコートジボワール代表と対するワールドカップ初戦までは約1週間というところで、不安を煽りかねない発言だったが、指揮官の意図は違うところにあるようだ。淡々とした口調で続ける。
「逆転して勝って満足していると想像される方もいるかもしれないが、全くそういうことはなくて、逆に心配しているかと言われても心配はしていない」
要するに、落ち着けという具合だろうか。劇的な勝利、あるいは課題といったものは、そのままコートジボワール戦でも引き継がれるわけではないのである。チームの生命線であるインテンシティの低さにも触れたが、「戻ってからしっかりと分析していきたい」と改善に余念がない。とは言え、修正点や反省点ばかりが強調されることになった最後のテストマッチだが、案外に収穫は多いのではないか。
試合後、勝利にも選手達が押し並べて危機感を募らせたことも心強い。2試合連続ゴールを挙げた香川真司が「これがワールドカップの初戦だったら厳しいと思うし、大会前で本当によかった」と言えば、前日練習は別メニューながらフル出場した長友佑都も「気を引き締めないと、このままではワールドカップが1つのお祭りで終わってしまう」と語っている。何しろ、4年に1度の大舞台である。勝って兜の緒を締めよという言葉があるように、ふんどしを締め直して臨むくらいがちょうどいいはずだ。一方で、5連勝という事実もある。ザンビア戦前の4日に内田篤人が「ポンポンポンと勝って入るのはすごい大事だと思う」と語っていたが、危機感を抱きながらも、所謂勝ち癖自体はついた状態と言えそうだ。
もちろん、収穫は大会に臨む上での精神面だけではない。決勝点を挙げた大久保やそれをアシストした青山敏弘、3点目を生み出した森重真人は途中出場ながら結果を残した。交代枠が3選手のみとなる本番では、今回のような采配を振ることはできないないだろうが、前日会見で指揮官が語ったように、あくまでも「最後のテストをできる場」である。本番に向けた慣らし運転に終始するのではなく、大会直前まで競争原理を働かせることには成功したのではないか。
守備面をはじめ、個々のコンディションのズレなど、目を背けるわけにはいかないポイントは少なくない。ただ、指揮官はもう1週間しかないのではなく、まだ1週間あるとでも言わんばかりに、会見を締めくくった。
「今週もこれまで通り、自分達のやってきたことやこれまでの結果をもたらしてくれたサッカーをさらに突き詰めていくだけ」
かつての大会前のような、異常なまでの期待感も、深い絶望感もない。確かな自信を基に、程よい緊張感も保たれた。4年間の集大成となる大一番は、実に自然体で迎えられそうである。
文=小谷紘友
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