いきなり、崖っぷちに立たされた。初戦を逆転負けで落とした日本代表は、連敗となれば大会からの敗退が決定的だ。ドローでも、決勝トーナメント進出はかなり苦しくなる。一方、対するギリシャ代表も日本同様に黒星スタートとなったため、引き分け以下は許されない。
19日に行われるグループCの第2戦は、互いに必勝を期する、まさにサバイバルマッチとなった。
日本は14日のコートジボワール代表戦で、終始劣勢のまま、1-2で敗れ去った。主導権を握って自ら仕掛けることを志向していたことや、アルベルト・ザッケローニ監督をはじめ、選手達の多くが初戦の重要性を口にしていたことあり、敗戦はかなりのショックとともに重くのしかかるものだったはずだ。
ただ、選手達はたちいほどわかっているはずだが、いくら悔やんでも時は戻らない。決戦の時は、既に目の前に迫っている。
実力が拮抗していると見られていたグループCでの黒星スタートは、紛れもない痛恨事だ。しかし、16強への扉が閉ざされたわけではない。明るさが弱まったことは確かだが、それでも光は差している。そして、光源となっているのは過去のチームの戦いぶりからだ。
指揮官は、4年間でのベストゲームに母国との一戦を挙げる。1年前、ブラジルの地で行われたコンフェデレーションズカップのイタリア代表戦で、日本は3-4で敗れたが誰もが絶賛する戦いを見せた。
昨年11月に行われた欧州遠征も同様だ。
今大会の初戦で王者のスペイン代表を5-1の大差で粉砕し、既に16強入りを決めたオランダ代表相手に2-2で引き分け、敵地でベルギー代表を3-2で下した戦いもあった。
イタリア戦では前戦のブラジル代表戦で0-3と為す術もなく完敗し、欧州遠征でも前月にセルビア代表とベラルーシ代表に2試合連続で完封負けを喫していた。ザッケローニ監督に率いられた日本は、逆境で常に高い反発力、あるいは修正力を見せてきたのだ。
そういう意味でも、キーパーソンは香川真司だろう。
香川と長友佑都がコンビを組み左サイドは、攻撃の生命線だ。しかし、攻守が一体となっている現代サッカーでは、攻撃の生命線は守備でのそれも意味する。初戦では対面するセルジュ・オーリエが高い位置に張り出してきたことで守備に追われた結果、チーム全体も押し込まれる戦いを余儀なくされた。一方で、左サイドでの攻防を制することができていれば、戦いぶりも変わっていた可能性もある。
前述したイタリア戦では、チームが敗れたにも関わらず、香川はマンオブザマッチに選出されている。後半から出場したオランダ戦では、対面したアルイェン・ロッベンを守備に奔走させることで、チームに推進力を与えていた。コートジボワール戦では後手を踏んだからこそ、守備的なギリシャが相手とは言え、香川がサイドを制圧できれば、一気にチームも勢い付くのではないか。
幸いにも、ショッキングな敗戦から、気持ちの切り替えは上手くいったようだ。試合前日の18日には、「ここで気持ちが折れているようでは、この4年間、何のためにやってきたっていう話ですから」と語っている。
生き残りをかけた一戦を控え、迷いはないだろう。実力を発揮した時、必ず結果はついてきた。日本の命運をかけたサバイバルマッチは、背番号「10」の真価が問われる戦いになる。
文・小谷紘友