ブラジル・ワールドカップでの惨敗から2カ月あまり。メキシコ人のハビエル・アギーレ監督率いる新生・日本代表が1日、札幌市内でついに始動した。8月31日の欧州各国リーグに出場した本田圭佑(ミラン)、岡崎慎司(マインツ)ら7人を除く16人が参加し、約1時間半の新体制初練習を消化した。
トレーニングの冒頭、新指揮官は選手たちを集めて円陣を組み、約5分間の所信表明を行った。「今日から来年のアジアカップ(オーストラリア)で勝つためにしっかりやっていこう」というアギーレ監督の言葉を聞いて、アルベルト・ザッケローニ監督時代から日本代表で戦ってきた長谷部誠(フランクフルト)、吉田麻也(サウサンプトン)らも、ゼロからの競争が始まった緊張感を改めて強く実感したようだ。
「新しい顔ぶれがいるし、全てが変わって新鮮。全員が一律にフラットなところからスタートするから1からのアピールになる。呼ばれ続けて、試合に出続けた立場とはまた違った状況からのスタートなので、よりエネルギーを使わなければいけない」と吉田が気を引き締める一方で、長谷部も「代表はつねに競争が厳しい場所だし、厳しくあるべき場所。自分も30(歳)なんで、若い世代にどんどん自分を追い越してもらうくらいじゃないと困るし、自分もまだまだ成長できると思ってるから、いい競争をしていきたい」と次の4年間も代表に戦い続ける強い覚悟を口にした。
ザックジャパンの4年間、彼らはコンスタントに招集を受け、つねに主力組として戦う特権を与えられた。しかし、アギーレ監督は「過去の実績は関係ない」と繰り返し強調し、どんな時も凄まじい競争意識を求め続けるつもりだ。頭抜けた代表実績を誇る遠藤保仁(ガンバ大阪)がいきなり外されたのを見ても、その厳しさがよく分かる。
吉田も長谷部も現時点では欧州新シーズンの公式戦にスタメン出場しているが、ひとたびコンディションを崩せば、代表落ちを強いられる可能性もゼロではない。とりわけ長谷部は左ひざの違和感を訴えてこの日のトレーニングを別メニューで調整するにとどまっており、5日のウルグアイ戦(札幌)に間に合うかも微妙だ。4年前のザックジャパン初陣の時も、2010年南アフリカワールドカップ16強進出の立役者だった田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)が負傷で試合に出られず、そのまま代表から遠ざかるというケースがあった。そうならないように、まずはコンディションをベストに持っていくことが肝要だ。
練習2日目の2日に合流予定の本田や岡崎、川島永嗣(スタンダール・リエージュ)らも状況は同じ。アギーレ流に彼らがどう適応していくか。そこが非常に興味深いところだ。
文=元川悦子