オーストラリア戦で1得点を挙げた安井 [写真]=安藤隆人
一瞬のミスが命取りになる。AFC U-16選手権のグループリーグ第3戦で98ジャパンは痛感することになる。戦前からグループの中で、オーストラリアが一番の難敵だった。ふたを開けてみると、やはり香港、中国の力は下で、オーストラリアは違った。
両者とも2連勝で決勝トーナメント進出を決めているとあって、立ち上がりはどこか緊張感が欠けていた印象だった。試合のペースが上がらない中、14分にFKを直接決められ、日本は今大会初の失点を喫する。この失点で目が覚めるかと思いきや、24分、オーストラリアのロングボールをGK井上聖也が処理を誤り、チェックに来た相手FWジョイスにボールを奪われ、無人のゴールに流し込まれた。
痛恨の2失点だった。オーストラリアは日本のポゼッションサッカーを警戒し、守りを固めながらも、一瞬の隙を狙っていた。そして、その隙をモノにした。そしてその図式は、試合が終了するまで続いてしまった。
26分にFW佐々木匠が起点となって、DF阿部雅志から左のDF堂安律に展開し、クロスを佐々木がニアで合わせて1点を返したが、その後が続かなかった。吉武博文監督は選手を配置転換し、打開策を見出そうとするが、「オーストラリア相手にボール保持できたが、持たされた感じ。我々のテンポが上がらず、パススピードも上がらず、相手に狙われてボールを奪われた。フリーのCBの選手が持ち運べないという、日本の課題がもろに出た」と振り返ったように、オーストラリアはむやみに飛び込まず、連動をしながら、要所でボールホルダーに複数でプレスをかけてきた。
日本としては相手が複数でプレスに来たその瞬間こそ、近い距離感で素早いパスワークで剥がしていけば、多くのチャンスを作ることが出来た。しかし、出足が悪く、パスがテンポよく回らなかった。
1点を決めた佐々木、MF安井拓也、右サイドバックから右ワイドトップにポジションを上げたDF田中康介などが、前線で精力的に動いてパスコースを見出そうとするが、59分に再びFKから失点。
69分に途中出場のMF永澤竜亮のスルーパスに抜け出した安井が決めて、再び1点差に迫り、ここからようやくパスのテンポが上がり始めたが、81分にカウンターからスルーパスを通され、ジョイスが独走から試合を決定づける4点目を挙げた。
後手、後手に回った試合は、それ相応の結果を生み出す。この試合はエンジンがかからず、ミスから失点し、取り返そうとするが、思うようにテンポアップできないまま、追加点を浴び、反撃の機運を掴んでも、一瞬の隙でとどめを刺される。完全なる負け試合の展開だった。
「アジアの厳しさを感じた。やっぱり体格とかスピードとか、僕らには無いものを持っているので、それを僕らは僕らのやり方で対抗していきたい」(阿部)
「失点は自分たちのミス。1本もミスも許されないなと感じた」(途中出場のMF菅大輝)
重要なのはこの試合を、いい教訓として次につなげること。ポジティブに捉えれば、グループリーグの段階でこういう試合が経験できてよかったのかもしれない。次の準々決勝こそ、今大会で一番重要な一戦となる。勝てばU-17ワールドカップ出場が決まり、負ければ出場権を逃すという、重大な一戦に気を引き締めて臨める。間違いなくこの試合のような入り方をしてしまったら、勝機はなくなる。ようやく若き日本代表は、『本物のアジアの怖さ』を体験することが出来た。だからこそ、次の試合に彼らの本当の真価が問われてくる。
運命の準々決勝、韓国戦は14日に行われる。
文=安藤隆人
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