PKを決めたU-19中国代表のウェイ・シャオ [写真]=ChinaFotoPress via Getty Images
U-19日本代表が4大会ぶりの「世界切符」を目指すAFC・U-19選手権は、考え得る限り最悪の立ち上がりで幕を開けた。開始25秒、U-19中国代表の攻勢に対してボールへのアプローチが遅れると、MF川辺駿がペナルティーエリア内で相手を倒してしまい、PKを献上してしまった。
「立ち上がりはいつもと違う雰囲気だったというか、呑まれてしまった部分はあった」(南野拓実)
大会の初戦ということで、独特の緊張感が出ること自体は予想されていた。試合前日には鈴木政一監督も「そこは読めない部分」と懸念していたが、それが最悪の形で表出してしまうこととなった。
心理面でもダメージを残す立ち上がりの失点で、日本のリズムは明らかに狂ってしまった。パスに微妙な乱れが生じ、いつもより視野が狭くなったような窮屈なプレーをする選手が目立つ。決して相手の強さに押されるような展開ではないが、「どこかおかしい」と言わざるを得ない流れに陥った。
それでも、エースは健在だった。6分にドリブルからのミドルシュートで初めて中国ゴールを脅かすと、迎えた16分。少し苦しい体勢から相手DFたちを引っ張るように縦へのドリブルで抜け出すと、最後は角度のない位置から“ゴールの天井”へと左足で突き刺すファインゴール。1-1の同点に追い付いてみせた。
このゴールで少しリズムが出た日本だったが、35分、44分と連続して迎えた決定機はいずれも決まらない。さらにハーフタイムを挟むと、流れはむしろ悪化。ボールは持つものの攻撃が「詰まる」シーンが目立つ流れとなった。「(後半は)両サイドハーフの受ける位置が悪く、リズムが出なかった」(鈴木監督)。
日本ベンチは打開のための切り札として、ドリブラーのMF奥川雅也を左サイドへ投入。単独突破に秀でるこのファンタジスタは相応に機能し、投入早々の65分には突破から決定機も演出。ただ、MF関根貴大のシュートは空振りに終わり、続く74分に南野が迎えた絶好機も、相手GKの好守に阻まれてしまった。
こうなってくると、雲行きが怪しくなるのはサッカーの掟(おきて)のようなもの。記者席で「これは最後にポーンとセットプレーを決められて負けるパターンじゃないのか」なんて不吉な会話が交わされた、その数分後だった。78分、ゴール前でのFK。前半にPKを決めていたMF韋世豪(ボアビスタ=ポルトガル)の放ったシュートは、憎らしいほどに美しい放物線を描いてゴールネットを揺らした。
「セットプレーでやられて、時間も時間だったんで、急いでしまってミスが多くなった」(奥川)
ロスタイムも入れれば、残り時間は15分あった。ただ、もう一度心理的に落ち着くだけのチームとしての精神的な余力はなかったのかもしれない。この後の決定機は、88分に交代出場のFWオナイウ阿道のクロスから南野がシュートを放ってGKに防がれた一本のみ。カターレ富山のDFコ・ジュンイらが固める中国守備を崩すには至らぬまま、試合終了の笛をきくこととなった。
黒星スタートとなった日本は、「割り切ってあと二つ勝つしかない」(南野)状況となった。中1日で戦術面の修正は難しいだけに、心理面でどこまで立て直せるか。指揮官の手腕はもちろんだが、選手個々のメンタルタフネスが問われることとなる。苦しくなったが、決してまだ終わったわけではない。
文=川端暁彦
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