韓国代表の司令塔として活躍するキ・ソンヨン [写真]=Getty Images
ドイツ人のウリ・シュティーリケ新体制でアジアカップに臨む韓国はオマーンとの初戦で苦しみながらも何とか勝利を飾った。ブラジル・ワールドカップ後に辞任したホン・ミョンボ前監督の後で、経験豊富な外国人監督を探していた韓国サッカー協会(KFA)がようやく探し当てたシュティーリケは現役時代にレアル・マドリードなどで活躍した名選手だが、監督としての実績は華々しいものではなく、手腕を疑問視する声もある中、初戦で勝ち点3を取ったことでチームがしっかり前を向いていけることができるだろう。
シュティーリケは高い位置からのプレッシングとテクニカルで自由度の高い攻撃を掲げながら、試合の中で柔軟な状況判断をしていけるチームを目指している。そのシュティーリケからキャプテンとして、司令塔として高い信頼を得ているのがキ・ソンヨン(スウォンジー)だ。若くして将来を嘱望された長身MFは欧州で何度か壁に当たりながら成長を重ね、今シーズンのプレミアリーグでは大きく評価を高める活躍を見せている。
もともとロングキックの正確さには定評があったが、状況に応じて長短のパスを振り分ける攻撃ビジョンが高まり、タイトな守備にも動じることなくチャンスの起点になることができる。現在の韓国代表ではパク・チュホとボランチのコンビを組むが、ダイナミックな動きを持ち味とする相棒を走らせながら、幅広くバランスを取る役割をこなしている。そこからタイミング良く上がってアクセントを付けるプレーは硬質になりがちな韓国の攻撃を単調にしない効果を果たしている。直接フリーキックで過去に何度も鮮やかなゴールを決めているキ・ソンヨンは、CKや間接FKで味方の豪快なゴールをアシストすることもできる。守備を固めてくるチームが多いアジア杯では、頼りになる武器だ。
19歳からA代表に名を連ねる超エリートであり、類い稀な能力は若くして国際レベルで評価されてきたが、前回アジアカップの日本戦での“猿真似”行為や2012年にはTwitterで当時の監督を風刺するなどが物議をかもし、勝負ではメンタル面の問題がたびたび指摘されてきた。しかし、シュティーリケ監督からキャプテンマークを託され「大きな責任を感じる」と語り、気持ちを新たにしている様子はうかがえる。
そのキ・ソンヨンにとってオーストラリアは12歳から5年間を過ごし、フットボールの基本を学んだ第二の故郷でもある。快足FWのソン・フンミンや気鋭のサイドアタッカーであるイ・チョンヨン、オマーン戦で決勝ゴールを決めたチョ・ヨンチョルなど攻撃陣にタレントが多い韓国代表だが、彼らを多彩なパスで活かすキ・ソンヨンのプレーに注目するとともに、試合の状況に応じた影響力にも注目してみたい。
文=河治良幸
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