会見に臨んだ大仁会長、ハリルホジッチ監督、霜田技術委員長 [写真]=足立雅史
日本代表の新監督に就任したヴァヒド・ハリルホジッチ氏が13日に都内で就任会見を行った。以下、記者会見の挨拶および質疑応答。
■ハリルホジッチ氏挨拶
(日本語で)コンニチワ。ここに来ることができ、本当に嬉しく思う。日本ではフットボールがとても人気があると思っている。この2週間で日本サッカー協会が私にコンタクトしてきた。いろいろとコンタクトがあり、議論した。大仁会長をはじめ、協会の方からありがたい言葉をいただき、ここに来ることができた。皆さんと日本代表で何かを大きなことを成し遂げようと思っている。ここで戦えることを嬉しく思っているし、大きな責任も感じている。
今一度、大仁会長はじめ、多くの関係者がここへ呼んでくれたことに感謝したい。監督のオファーは日本以外にもクラブ含めてあった。その中から日本を選んだ。なぜなら、私に似たメンタリティを持っていると思ったからだ。私がこれまでと同じような気持ちで仕事ができるし、厳しさ、規律、人を尊敬すること、真面目さ、このフットボール界で大事なものを兼ね備えていると感じている。
ブラジル・ワールドカップ後、少し成績が下がっていたが、復活するのに十分なクオリティ、そしてそれを成し遂げる力がある。FIFAランキングは55位(直前の発表では53位)だが、数年前はもっと良い成績だった。アルジェリア代表では就任時、52位からスタートして私と仕事をすることにより3年間で17位まで上がった。日本代表も同じことができると確信している。そのためにきた。
第1の目標はロシア・ワールドカップ出場。さらにワールドカップに出場するだけでなく、さらに上を目指したい。グループリーグを突破して、決勝トーナメントに進出する。そのクオリティを日本は持っている。
スタッフとチーム、メディカルもすでにいる。日本のスタッフも助けてくれるし、まずは強い代表のスタッフチームを作りたい。日本でたくさんの人と仕事して良い結果を出したい。そして、サポーターとともに戦いたい。フットボールは日本で人気のあるスポーツだし、ジャーナリスト、国民のみなさんのためにも戦っていきたい。
皆さんへのお願いは少し時間が欲しいということ。初めて代表監督になったとき、今回と同じようなシチュエーションだった。すぐに成功が得られたわけではない。少しだけ我慢して、辛抱強く見てもらえれば、良い結果を出す。皆さんとは初めて会うので、良い関係、プロフェッショナルな関係を築き、互いにリスペクトする関係を作りたい。代表が上手くいかなければ批判が出るのは当たり前のこと。その状況でも皆さんとともに戦うのが大事で、国全体でフットボールを盛り上げていきたい。
■質疑応答
――日本サッカーの印象と課題、どんなサッカーをすれば世界のトップと戦えるか?
この2週間、いろんなビデオを見て、ブラジル・ワールドカップやアジアカップも全試合見て、しっかりと分析した。クオリティはある。結果が全て良かったとは思わないが、クオリティは見せていた。しかし、少し自信は失っているかもしれない。簡単なこと、難しいことはあるが、これを向上させることはできる。先ほども言ったが時間が少し欲しい。そうすることでより良い結果を出すことができると思っている。
私は要求が高いし、負けることも大嫌いだ。負けた時には病気になってしまうことだってあった。私は最初に口にすることは“勝利”だ。世界で一番強いチームと対戦するときも、『勝つトライをしよう』と。トライをせずに負けることが最悪なことだ。ここに来ている意味は、勝利への気持ちを植え付けることだ。3月に2試合あるが、絶対に勝利しなければいけない。ネガティブなことを言うのは嫌いだ。彼らを復活させなければならない。夏には大事な試合(ロシア・ワールドカップ、アジア2次予選)がある。まず3月の2試合をワールドカップ出場への最高の試合にしたい。
――メンバー選考の基準はこれまでの選手がベースか? それとも1から選ぶのか?
まず、私がまだ日本代表をそんなに深く知らないということを伝えたい。霜田委員長とは短い期間でディスカッションした。これまで代表としてプレーしている選手を見たし、知ることはできた。メンバーリストは少し今までと同じような感じになるかもしれない。負傷している選手もいるが、そういった選手とも会いたいと思っている。まだ知らないからだ。私の意見や哲学、仕事の仕方を伝えたいと思っている。早く彼らと会って、その説明をしたい。明日、あさっては(Jリーグを)何試合か見たい。日本でプレーしている選手の長所をなるべく早くを見つけたい。選手を知るためにビデオも見る。最初は難しい仕事になるかもしれないが、すぐに解決すると思っている。
――3カ月でワールドカップ予選が始まるが、短い期間でチームを作れるか?
時間は確かにない。そのためにこれから日本代表のスタッフ含め、多くの仕事をしなければならない。いろんなところへ赴く必要もある。現段階よりももっと力を引き出さなければならないと思っている。
デリケートなシチュエーションでの仕事の経験はある。できるだけ早く自信を取り戻させ、勝利への意欲を与えなければいけない。早く話さなければいけないし、ビデオもたくさん準備する。攻守の分析も必要だ。当然、多くのアイディアは持ってきた。私のやり方に選手がモチベーションを持って取り組んでくれることを望んでいるし、どうやってプレーするかを受け入れてもらわなければならない。日本代表は規律正しく、大きなことを成し遂げられる準備はできていると思っている。そこについては楽観的だ。
――サッカーに対する哲学は?
フットボールには2つの面がある。ボールを持っている時と持っていない時だ。ボールを持っていない時は、全員が同時にディフェンスをしてブロックを作っている。守備ブロックの高さの違いはあるが、全員が携わる必要がある。全員が努力する場面で誰か1人でも欠けてはいけない。
ボールを持っている時も全員がかかわらなければいけない。全選手に求めることは“効果的な選手”であるということ。攻撃が大好きだし、ビルドアップはどんどん前に、たくさんの選手が関わって、人数をかけたい。また、スピードアップの向上やボールタッチ数も制限したい。ペナルティエリア内では何人も(3、4人)関わっている状況を作りたい。
日本代表はこのクオリティを持っているし、さらに高いレベルを見せられると思う。こういったことを個々に話したいし、個々のクオリティがチームに活きると伝えたい。バルセロナやブラジル代表のようなサッカーをしたい指導者もいるかもしれないが、我々は日本なので、日本代表らしい戦い方をしたい。
現代のフットボールは高いレベルを求められる。フィジカル、技術、戦略、精神面もだ。高いレベルに到達しなければならないし、そのためにはさらに向上させなければならない。しかし、それはできると考えている。
勝利するということが大事で、みなさんに勝利という言葉をたくさん届けたい。この考え方に貢献する選手が必要。スターとはチームがスターだと思っている。ただ、個々の能力をダメにしてはいけないとも思っている。スター選手もチームのために仕事をしてもらう。どうやって組織的にやるかを選手に伝えたい。攻守においてそうだ。できるだけ早く取り掛かりたい。
これからグループとしてプレーしていくが、もしかしたらメンバーは毎回変わるかもしれない。今、先発はもちろん、確定している選手も決まっていない。まずはプレーしてもらう。もちろん国内外の選手がそうだ。Jリーグには能力の高い、若い選手がたくさんいると聞いている。できるだけたくさんの選手に可能性を与えたいと思っている。日本代表とは全ての人のためのもの。ただ、そこに入るための能力が必要だ。
――アジアの印象、そしてFIFAランキングは具体的にどれくらいまで上がる可能性がある?
アジアについては各国レベルが上がっている。ただ、強国と言われる欧州・南米のレベルには達していない。前から日本のことは知っていたし、今はより知っている。このチームはもっと上のレベルに行ける。私と仕事する全てのクオリティがある。ただ、先ほど言った通り、いくつか向上させなければいけない点はある。日本は数年前、20位より上だったが、そこまでは上げたい。ただ、それには時間が必要で、皆さんの我慢が必要だ。たくさんの仕事もある。大仁会長にも要求した。まず我々スタッフがファミリーになることが大事で、良い仕事をするために良い雰囲気を作ることを求めた。この良い関係作りがピッチにも良い影響をもたらす。
私のこのノートにもやるべきことがたくさん書いてある。今日は詳細を話さないが、いくつかの点を伸ばしていきたい。良い選手、テクニックを持った選手がいる。たくさんのことはできないが、あることはできる。どの選手もボールをたくさん欲しがる。そういった選手にももっといいプレーができると言いたい。引いた相手、そうではない相手への戦い方も伝えたい。ポジショニングについてもだ。もちろん、スピードだけでなくリズムの変化の必要性など、そういった小さなことも教えていきたい。元々、私はFWだったので経験もふまえて向上させたい。
――希望の愛称はあるか?
日本で過去、何があったかは分からないが、早く仕事をしたいという気持ちでいっぱいだ。大仁会長はじめ協会は私を信頼してくれている。ただ、私がここに来たことは皆さんと仕事がしたいということ。助けが必要だ。今の日本よりもさらにデリケートな状況で就任したこともある。しかし、向上させることができた。日本には日本代表のことが大好きなサポーターがいる。イビチャ・オシムと仕事していたことも知っている。彼はフットボールの情熱を教えてくれた。日本の皆さんもフットボールに情熱があり、仕事熱心だと言うことも聞いている。そのことは幸せなことだし、何かを成し遂げられたらさらに幸せなことだ。
代表の監督として嬉しかったことは、『ここに来てくれてありがとう』とアルジェリアでブラジル・ワールドカップ後に、とある人に言われた。日本と比べるわけではないが、アルジェリアは代表レベルで結果を出した国ではなかった。彼らが私に対してリスペクトしてくれたが、日本代表でもそのようなことが起きてほしいと思う。今、アルジェリアの人はすれ違うと幸せそうな顔をしてくれている。私もここで結果を残したいが、その責任は私にある。
――ボスニア紛争が与えた影響は? 人生においての哲学は?
ボスニアは難しい時代を送ってきた。妻が2、3日前に日本の歴史の本を買ってくれたが、日本も非常に難しい歴史があったと知った。個人としても人生で困難な時期があった。ユーゴスラビアの戦争では私もそこにいたし、負傷もした。守ることを知り、国を守るためにたくさん戦った。そこでは自分の仕事に信頼を持っていた。その中でフットボールと出会い、フットボールのおかげで人生が素晴らしいものになった。選手そして監督としてタイトルも数多く取った。
今、集中していることは日本代表を監督としてより良い状態にすること。このことについては熱意や向上心を持っているし、何かを成し遂げられると思っている。日本がフットボールに真摯に向き合っている中、呼んでもらえて嬉しい。フットボールはマジックのようなもの。フットボールへの情熱は様々なものに影響していく。私の全てはフットボールに支えている。
――日本の国、文化の印象、サッカー以外の楽しみは?
少し日本の文化を知っている。日本食レストランもパリにたくさんある。家族は私よりスシが好きだ。今晩、大仁会長たちと日本食を食べたいね。だんだん慣れていきたいと思っている。皆さんの文化をリスペクトしていきたい。そうすることで私の生活もうまくいくだろう。私に日本を紹介してくれる人は皆、日本は素晴らしいと言っている。家族は常に一緒にいるわけではないので、難しい時期もあるかもしれないが、仕事には集中できる。
――選手の自信を回復させる具体的な方法は?
個人的、グループとしても話をしなければならない。選手の何人かは自分自身への自信を失っているようだ。2、3年前はもっと良い選手だった。そのために勇気づけることが必要だ。私の仕事の多くは勇気づけること、自信を回復させること、喜びを持ってもらうことだ。彼らに良いプレーをしていたことを忘れさせないための経験が私にはある。個人的な問題を抱えていることもある。私のやり方で選手と個人的に話もしたい。会話をすることで建設的な関係を築ければ良い。選手がもっと努力し続けてもらえれば。
――オシム氏はどういった関係? 日本に来るにあたりもらった言葉は?
オシム氏は健康状態が今、良くない。アルジェリアを率いていた時、ボスニアと試合をすることがあったが、その時に彼とはたくさん話をした。素晴らしい人物だ。フットボールについても素晴らしい仕事をしたし、ボスニアでは本当に素晴らしい人物として評価されている。さらにフットボールだけでなく、政治的にも国をサポートした。親友だ。
最近は会えていないが、彼の友人含めて健康状態についてのコンタクトもする。日本代表の関係者がコンタクトをとったかは私は知らない。彼についてはそれくらいだが、いつか彼が日本に来て、試合を見てくれることを期待している。見に来ることを喜んでくれるのではないか。なぜなら彼は日本のことが大好きで、日本のことをたくさん話してくれた。
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