合宿6日目の練習を行った日本代表MF長谷部誠 [写真]=兼子愼一郎
文=元川悦子
ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督の初陣となった27日のチュニジア戦(大分)は岡崎慎司(マインツ)と本田圭佑(ミラン)の揃い踏みで2-0で勝利した新生・日本代表。藤春廣輝(ガンバ大阪)や川又堅碁(名古屋グランパス)ら新戦力が台頭し、決めるべき人が得点を奪うなど、3年後のロシア・ワールドカップに向け、幸先のいい一歩を踏み出した。
その一戦から一夜明けた28日午前、日本代表は大分合宿最期のトレーニングを行った。桜も開花し、初夏のような気候となったこの日は、負傷の酒井宏樹(ハノーファー)を除く選手たちが青空ミーティングから練習をスタートさせた。新指揮官は個別メニューを渡してクラブで取り組ませる意向を語るとともに、31日のウズベキスタン戦(東京スタジアム)でも大幅にメンバーを変えることを明言。チュニジア戦に出なかった選手の多くが次戦に出場することが確実になった。
その後、練習は①チュニジア戦先発組フィールドプレーヤーの酒井宏樹を除く8人、②それ以外のフィールドプレーヤー15人、③GK4人の3グループに分けられた。①のグループは軽いランニングだけで終了。練習場に集まった地元小学生へのファンサービスを入念に行った。②のグループはランニング、アップの後、5人1組のパス回し、4対1、10対5、8対8+GKを1時間半ほど消化。途中出場でゴールという結果を出した岡崎や本田も意欲的に汗を流した。GKはリカルドGKコーチとともにキャッチング練習などを実施。試合翌日とは思えないほどの負荷の高い内容だった。
新体制初陣でもキャプテンマークを託され、90分フル出場した長谷部誠(フランクフルト)は、早々とトレーニングを切り上げ、ファンサービスの前にメディア対応に臨んだ。「今、自分たちが取り組んでいるのは、裏への速い攻撃。遅攻は今までやってきたものがあるし、ボールポゼッションに関しては自信もあるんで、今は1タッチ2タッチでの速いプレーを仕掛けて、トライして行く時期。監督の言うことをやり過ぎるくらいでいいと思う」とあえてスピーディーな戦い方を実践していく必要性を改めて強調していた。
カウンタースタイルを突き詰めていくためには、高い位置でボールを奪って素早い切り替えから攻めに転じることが肝要。それだけアグレッシブな守備が求められてくる。チュニジア戦に出たメンバーは、長谷部と山口蛍(セレッソ大阪)の両ボランチを筆頭に、相手を激しくつぶしにいくシーンが目立った。そこが一番の収穫だったと長谷部は口にした。
「選手全員が球際で戦う部分だったり、アグレッシブさであったり、試合の中での強度は間違いなく上がっていた。どうしてもああいう試合は攻撃に目が行きがちだけど、守備の部分でも相手にチャンスを作らせなかったですし、全体としてすごくいい守備ができていた。そこに一番手ごたえがありました」と長谷部はハリルホジッチ新監督が真っ先に指摘した課題にチーム全体が意欲的に取り組んだことをポジティブに捉えていた。
遠藤保仁(G大阪)が外れた今、長谷部は今野泰幸(G大阪)、川島永嗣(スタンダール・リエージュ)に続くチーム3番目の年長者。チュニジア戦スタメン11人の中では最年長だった。新指揮官も「長谷部はロジックだ。これまでも多くの代表の試合をこなしてきて経験もある」と長谷部のことをリスペクトする発言をしていたが、その一方で「だが決まったキャプテンではない。私はキャプテンになれる資格のある者をキャプテンにしたい」と異なる人材を模索していく意向も口にした。そうなると同選手自身の立場も安泰ではなくなる。ロンドン五輪世代の山口、リオデジャネイロ五輪世代の遠藤航(湘南ベルマーレ)といった新世代のボランチも台頭しつつあるだけに、タテに速いサッカーに率先して順応しなければならない。長谷部の新たな挑戦が今、再び始まったと言える。
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