代表合宿初日は杉本らFW陣がゴールで存在感をアピール [写真]=小林浩一
文=元川悦子
6月16日のシンガポール戦(埼玉)から始まる2018年ロシアワールドカップアジア2次予選に先駆けて、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が実施を熱望した国内組のみの日本代表候補合宿。その初日練習が12日夕方、千葉県内で行われたが、ウォーミングアップから最後の体幹強化まで含めるとトレーニング時間は約2時間半。いきなりの濃密練習に28人の選手たちは指揮官の飽くなき情熱とアグレッシブさをひしひしと感じたことはずだ。
この日の練習は3月の大分・東京合宿同様、全員がダッシュしてセンターサークルに集合し、10分近い青空ミーティングを消化するところからスタートした。監督の身振り手振りの熱血指導に初招集メンバーたちは度肝を抜かれただろう。
その後、全員でのランニングを経て、フィールドプレーヤーは短い距離での斜め走などのアップ、5人1組での対角線を意識した狭いエリアでのパス出し、タッチライン幅を使った4人1組での移動しながらのパス交換、タテに長いエリアを使った「6対6」のポゼッション練習(残り12人は外からパス出し)、「11対11+フリーマン」のゲームという形で練習が流れていった。一方、GKの方はランニングの後、別練習に入ったが、ハリルホジッチ監督が直々に蹴り方を指導する場面も見られ、GKの世界基準へのレベルアップを求める指揮官の心情がよく伺えた。
フィールドの「6対6」のところでは、武藤嘉紀(FC東京)が相手選手に削られて右大腿部を打撲。そのまま途中離脱するアクシデントが発生した。代表メディアオフィサーは「歩けているし、病院へ行くことは今は考えていない」と軽傷を強調していたが、13日の2部練をこなせる状態かどうかは未知数と言えそうだ。
そして最後の「11対11+フリーマン」のゲームでは、ミニゴールを6か所に置いて得点を競ったが、1本目は遠藤康(鹿島)が2点、大久保嘉人(川崎)が1点をゲット。2本目は豊田陽平(鳥栖)が2点、杉本健勇(川崎)と浅野拓磨(広島)がそれぞれ1点ずつを挙げ、FW勢がサバイバルをかけて猛烈アピールを見せていた。
2本目の開始早々に凄まじい勢いで飛び出し、豊田のゴールをお膳立てした大久保は、前線から激しいプレスをかけ守備面でも貢献。Jリーグの連戦明けとは思えないダイナミックな動きを見せ続けた。「厚みを持ってスピーディーさと運動量でやっていくスタイルは日本人に合っている。自分もそういうタイプだしね」と新指揮官の志向するサッカーに大いに手ごたえを感じた様子。前日にハリルホジッチ監督が強調した通り、32歳という年齢は一切関係ないようだ。
その大久保に追いつけ追い越せと、30歳になったばかりの豊田、潜在能力の高さを買われて大抜擢を受けた杉本、若く伸び盛りの浅野も存在感を示そうとしている。「監督がFW出身だと聞いているので楽しみ。新しいチームに来て学ぶことや直すべきことを敏感に感じたい」と豊田が前向きに言えば、浅野は「ここに来るまでは今までに味わったことのない緊張や責任感を感じたけど、ピッチに入ったらやるべきことははっきりしてる。がむしゃらにやりたい」と開き直った今の本音を吐露。杉本は「川崎で出ないと話にならない。それでも選んでもらったからには生き残れるように全力でやりたい」と危機感をのぞかせつつも、代表定着への意気込みを新たにしていた。
ハリルホジッチ監督も言うように、今の日本代表は得点力という部分がまだまだ物足りない。FWである程度のゴールが計算できるのは、ドイツ・ブンデスリーガで2シーズン連続2桁ゴールを挙げた岡崎慎司(マインツ)くらいで、本田圭佑(ミラン)や香川真司(ドルトムント)にしても一時の勢いが見られない。それだけに今回の中から誰が突き抜けてくるかはチームの命運を左右する大きなポイント。大久保や武藤、宇佐美貴史(G大阪)らを軸に、彼らには最終日まで意欲的な競争を繰り広げてほしいものだ。
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