2日間の合宿で意識改革を求めたハリルホジッチ [写真]=兼子愼一郎
文=元川悦子
12日に千葉県内でスタートした国内組の日本代表候補合宿も13日がラスト。台風一過、晴れて暑くなったこの日は、午前中にメディア非公開で1時間半の戦術練習を実施。午後は恒例の青空ミーティング、ランニングから始まり、複数パターンのパス回し、「6対5+GK」を消化したところで攻撃陣と守備陣が別々に。前者は縦の動きを意識したシュート、クロス&シュートを実施し、後者はクリア練習の後、クロスからの競り合いを徹底的に確認した。トータルの練習時間は午後も1時間半。サバイバルの意味を込めた紅白戦が最終日には盛り込まれると見られたが、残念ながらゲームはなし。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はJリーグやアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の過密日程の疲労を踏まえ、負荷の高いゲームを回避した模様だ。
前日右太もも前の打撲を負った武藤嘉紀(FC東京)が練習を欠席し、昨年手術した右ひざの状態を見ながら大事を取った山口蛍(C大阪)が別メニュー調整する中、残る26人はハードな2日間を全力で消化。最後には全員でセンターサークルに集合して円陣を組み、手を合わせて気合を入れるなど、チーム全体に一体感も見て取れた。
大久保嘉人(川崎)の復帰で現時点での日本代表最年長ではなくなったものの、間違いなくベテランの域に達している32歳の今野泰幸(G大阪)も全てのエネルギーを使い果たし、疲労困憊の表情を浮かべていた。
「2日間の練習だけど、疲労感はやっぱり強いし、普段どれだけやってないか、やってるつもりだけども、1つ1つの練習への意識の低さがあったのかなと思います」と彼はしみじみと語っていた。
ハリルホジッチ監督は就任最初の活動だった3月2連戦(チュニジア・ウズベキスタン)の際は、日本代表が惨敗した2014年ブラジルワールドカップや8強止まりに終わった2015年アジアカップ(オーストラリア)で出た攻守両面の課題を抽出し、プロジェクターなどを使いながら選手たちにプレゼンテ―ションする形で改善点を明示していった。が、今回は5月6日のUEFAチャンピオンズリーグ準決勝・バルセロナ対バイエルン戦を基に、日本に何が足りないかを具体的に示し、意識改革を促した模様だ。
「ミーティングの内容は詳しく言ったら怒られそうだけど、やっぱり世界のスタンダードに近づくために何をしなくちゃいけないのかていうのは日々、言われてる。今までのJリーグの感覚でやるんじゃなくて、もっともっと上を目指せってことは常々言われます。具体的に言うと、もっとプレッシングにどんどん行くとか、プレースピードを上げるとか、そういうことじゃないですかね」と今野は合宿で受けた刺激を説明する。
練習1つ1つも考えさせるものばかりで、気を抜いていられる場面などない。今野はかつての代表指揮官、イビチャ・オシム氏の指導を脳裏に浮かべながら、ここ2日間を過ごしたようだ。
「ハリル監督のサッカーは考える+フィジカル、それに意識も必要。かなり難しいと思います。速いスピードで動きながら技術も発揮しなきゃいけないってことだから、今までのようじゃダメ。それをできるようになるには、もっともっと経験してかなくちゃいけない」と強調する。
これはウズベキスタン戦後に本田圭佑(ミラン)が語っていたことと全く同じだ。スピードが速くなればなるほど正確な技術を出すのは難しくなる。それをやらない限り、日本は世界で躍進することはできない。ブラジルの惨敗を実体験している今野には、その意味がよく分かるのだろう。
「最後に円陣組んで手を合わせるみたいなことを見ても、監督はすごい変えようとしてくれてるなと感じるし、自分も変わらなくちゃいけない。やっぱりワールドカップで惨敗して、何か変えないと世界では勝てないって分かってるから。今回はそういう話を若い選手にするとかはなかったですね。みんな個人個人のことに必死だし。示してくれる道についていくのに精いっぱいだし。僕も一瞬でもダメだったらもうダメだと思うから、すごい危機感がありますし、意識高くやっていこうと思ってます」
3月2連戦の合宿以上に、ハリルホジッチ流のサッカーを深く理解した今野ら代表常連組。彼らと新戦力とのサバイバルは所属クラブに帰ってからが正念場だ。競争の答えは6月シリーズで出る。
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