A代表初舞台で右SBをこなす遠藤航 [写真]=兼子愼一郎
文=元川悦子
5日の韓国戦で1-1のドローに終わり、2試合終了時点で早くも東アジアカップ連覇の道が断たれた日本代表。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「この大会で一番強い相手(韓国)に対して引き分けに持ち込めたので少し満足できるのではないか」と努めてポジティブに語ったが、就任後の公式戦でアジアに対していまだ未勝利という事実は変わらない。9日の最終戦・中国戦では不名誉な記録を絶対に払拭しなければならない。
その日本代表は韓国戦から一夜明けた6日、朝9時半から武漢全民健身活動センターのグランドで1時間半の調整を行った。この日はここ数日より多少はしのぎやすい気候となったが、それでも陽の当たる場所の気温は40度超。指揮官は練習に先駆けて15分間、炎天下で青空ミーティングを行い、「昨日の結果は妥当だと。ただもっとJリーグ、日本サッカーのレベルを上げていかないと。フィジカル面も高めないといけないといけない」と選手たちを鼓舞すると同時に、最終戦の勝利を強く求めたという。
トレーニングは韓国戦先発組とそれ以外の2グループに分かれて進み、前者は軽いランニングとストレッチ、後者は負荷の高い5対5や5対5+GKのゲームなどが盛り込まれた。前者のグループはダウンが早めに終わり、自然発生的に話し合いの場が持たれた。「スタッフからの意見と自分たちが率直に思ってる意見を合致させるために、自分たちが思ってるってことを伝えましたし、もっともっとよくなるための前向きなポジティブな話し合いはできてると思います」と槙野智章(浦和レッズ)は語っていたが、練習と試合を重ねるごとに守備の意思統一は着実に進んでいるようだ。
2試合続けて最終ラインの一角で先発した遠藤航(湘南ベルマーレ)も今大会がA代表デビューとは思えないほど落ち着いたプレーを見せている。
「守備に関しては自分のよさを出せてるし、ポジショニングだったり、カバーリングって意識は持ててると思いますけど、球際の部分ではもっと向上できる。攻撃参加の部分もまだまだ物足りないんで、運動量をもっと上げていかないといけないと思ってます。韓国戦でも対面のキム・ミヌ(サガン鳥栖)が中に切れ込んできてマークの受け渡しは難しかったけど、森重(真人=FC東京)さんや中盤の選手に声かけたりしながらやりました。北朝鮮より動きが前はあったし、サイドバックも高い位置に出てきたりして、前からはめられないシーンも多かったけど、割り切ってブロック敷きながら最後やらせないってところは悪くなかったと思います」と彼はいつも通り客観的に自分自身を振り返っていた。
A代表初舞台で、しかもクラブでやっているのとは異なる右サイドバックでこれだけの安定感を見せられるのであれば、今後も戦力として定着していく可能性は少なくない。ただ、代表の右サイドで生き残っていくとしたら、欧州組の内田篤人(シャルケ)や酒井宏樹(ハノーファー)、酒井高徳(シュツットガルト)らとの競争に勝たないといけない。
「まだ自分が優ってるところとかはあんまり考えないですけど、これから欧州組のプレーを見ながら参考にする部分は参考にしながら、自分に還元していければいい。実際にこうやってプレーすることで、自分は自分なりにサイドバックとしてのイメージができつつあります。2試合やって守備はだいぶよくなりましたけど、攻撃はまだまだ改善できる。これから出場機会を増やしながら、成長していきたいと思います」と本人もこれから直面するであろう生存競争への覚悟を胸に秘めているようだ。
ただ、遠藤の場合、右サイドバックだけでなく、センターバックやボランチもこなせるマルチな能力がある。韓国戦で藤田直之(鳥栖)が担ったアンカー役は最も得意とする役割の1つ。「中盤ではアンカーやボランチも自分のよさとしては出していけるともちろん思ってます」と自信をのぞかせながらも「今は与えられたポジションを今はやっていくのが自分の仕事」とあらゆることに積極果敢にチャレンジしていく意欲を見せている。
日本として芳しい結果が出ていない今大会だけに、遠藤航のような若くフレッシュな人材が活力をもたらさなければ、完全アウェーの環境下で中国に勝ち切れる勢いや機運は生まれない。本人も3試合連続スタメンは望むところ。ここで一気にブレイクしてほしいものだ。
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By 元川悦子