7日の練習に臨んだ日本代表MF武藤雄樹(中央)
文=元川悦子
すでに東アジアカップ連覇の道がついえた日本だが、9日の最終戦・中国戦はアジア3試合連続未勝利の泥沼から抜け出すための重要な一戦。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もこれ以上、風当たりが強まることだけは避けたいはずだ。
そんな指揮官の今大会初勝利への意欲が強く表れたのが、7日朝9時半から武漢市内の全民健身活動センターで行われた練習時の青空ミーティングだった。この日も陽の当たるピッチの気温が40度を超える中、指揮官は選手たちばかりでなく、日本サッカー協会の田嶋幸三副会長、原博実専務理事も円陣に招き入れ、25分近い長い訓示を行ったのだ。
「強い気持ちを持つとか、日本に足りない球際や最後まで走り切ること、フィジカル的にも体が細いんで世界で戦うためにもっと筋肉をつけなあかんって話はしていた」と倉田秋(ガンバ大阪)がかいつまんで話の概要を説明してくれたが、身振り手振りのオーバーアクションで選手たちに改めて奮起を促したのは間違いない。「25分の話?集中してたんで5分くらいに感じました」と武藤雄樹(浦和レッズ)は冗談交じりにコメントしていたが、選手たちは炎天下も関係なく、神妙な面持ちで話を聞いていた。
この後の練習内容はコンディション調整が軸で、この日も戦術確認やフォーメーション練習はやらなかった。ただ途中でメンバーをビブスで2組に分けたシーンが一瞬だけあり、次のスタメン組と見られる側には、GK東口順昭(G大阪)、DF遠藤航(湘南ベルマーレ)、森重真人(FC東京)、槙野智章(浦和)、太田宏介(FC東京)、MF山口蛍(セレッソ大阪)、倉田、武藤、興梠慎三(浦和)、永井謙佑、川又堅碁(ともに名古屋グランパス)が入っていた。
武藤は「槙野さんが『ハイハイ』という感じで配ったんで、意味はないと思います」と軽く受け流していた。だが、5日の第2戦・韓国戦で出番なしだった武藤が中国戦で再びスタメン出場する可能性は非常に高い。2日の初戦・北朝鮮戦で代表デビュー戦史上最速ゴールを挙げ、一気に株を上げただけに、次のゲームが代表定着へのより重要な試金石になるだろう。
「自分のプレーをしっかりやりたいってのはありますし、監督からは『点を取れ』ってことをすごく言われてる。前回取れたことで自信にもなりましたし、次の試合もゴールは狙っていきたいと思ってます。ゴール決めないと試合にも勝てないですし、そのために決めたいなというのはあります」と武藤はゴールへの強いこだわりを今一度、口にした。
北朝鮮戦では不慣れなトップ下で先発して攻守両面で奮闘。武藤は「トップ下のポジションでそんなに困ることはなかったですし、見えている部分はありました。ボールを引き出すこと、裏に飛び出すことだったり、自分の特長は十分生きる場所だと思ったので、次はもっと精度を上げて代表の勝利に貢献したい」と不慣れな位置に果敢にチャレンジした手ごたえを語っていた。後半途中からは4-3-3への布陣変更に伴って左FWにも入ったが、いずれも浦和でやっている2シャドウの一角とは異なる役割。それでも臨機応変にこなしてしまう適応力の高さは際立っていた。
中国戦ではどのポジションで使われるのか全く分からない。仮に前述のスタメン組が先発イレブンなら、同選手はインサイドハーフでの起用もあり得るということになる。そういう異例の状況下で再びインパクトを残せれば、完全なるユーティリティープレーヤーとして今後もハリルホジッチ監督に重宝されるだろう。そういう立場に慣れるかどうかは、次の最終戦の一挙手一投足次第だ。
今大会の日本代表は強烈アピールを見せた選手が遠藤、倉田ら数人しかいないだけに、武藤が頭一つ抜け出すことができれば面白い。そういう存在が出てこなければ、今後の日本代表は頭打ちになってしまう可能性が大だ。今季飛躍的な成長を遂げている武藤にはその停滞感を打ち破るべく、代表戦連続ゴールをぜひとも期待したい。
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By 元川悦子