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決定機もバー直撃…3戦無得点で左サイドの難しさを再認識した宇佐美貴史

2015.08.10

中国戦でシュートを放つ宇佐美 [写真]=兼子愼一郎

文=元川悦子

「チームとして『らしい形』でまだ点は取れない。もう少しボールを保持して外で張って仕掛けるなり、中で受けて味方と絡みながらシュートまでいくかとか、いろいろ考えながらやっていきたい。どういう状況でボールを受けても、自分のアイディアとか質を攻撃の中で出せるようにしたいなと思ってます」

 2015年東アジアカップ(武漢)最終戦・中国戦を控えた前日練習で、背番号11をつける男・宇佐美貴史ガンバ大阪)は今大会に入ってからまだ奪えていないゴールを強く渇望していた。自分自身が点取屋としての責務を果たし、日本を最下位から救い出す…。それが彼自身にとっての理想的な展開だったはずだ。

 迎えた9日の中国戦。開始早々の3分に右CKのこぼれから放った強引なシュートに始まり、2分後にも同じ右CKの流れから強烈シュートをクロスバーに当てるなど、この日の宇佐美からはこれまでにないほど得点への意欲が色濃く伺えた。タテ関係に位置したガンバ大阪のチームメート・米倉恒貴との連携もスムーズで、自らが中に絞って彼に上がるスペースを作るような気の利いた動きも見せた。後半にはトップ下の武藤雄樹浦和レッズ)とポジションを代えながら中央でプレーする時間も作った。今大会の3試合の中で、明らかに中国戦の宇佐美が一番怖さを感じさせた。

 けれども、なぜかゴールが遠い。時間を追うごとに焦りの色が見えてくる。本人も苛立ちを募らせたに違いない。

「点が取れない時にどう取るかって話はガンバでもしてますけど、そこはもう少し突き詰めていかないといけない。突き詰めるべきなのがボールを持ってからなのか、ボールを持ってない時なのか、よく分からないですけど、そういうところはまだまだムラがあるというか、まだ(答えを)見つけることができてないかなと思います」と本人も言うように、最終的には出口の見えない迷路に迷い込んでしまった印象だ。結局、日本は中国に勝ちきれず、宇佐美自身もノーゴールのまま戦いを終えることになってしまった。

「自分はサイドなんで、得点を取るパターンが真ん中より絞られる。サイドからドリブルで行くのか、右からのクロスで合わせに行くのか、カットインしてシュートなのか、サイドで出た時にもう少しバリエーションを多くやらないといけないなと思いますね。普段は真ん中でやってるので、真ん中だと左からも右からもあるし、真ん中で受けてミドルとかいろいろ幅がある。それがサイドになるとやっぱり狭まりますし、狭まった中で何をチョイスするのかが難しい。ポジションも少し下がるし、そこからどう前に絡んでいくかってところの質を高めていかないといけないですね」と宇佐美は左サイドとしてゴールを奪うことの難しさを痛感したようだ。

 その課題は6月の2018年ロシア・ワールドカップのアジア2次予選・シンガポール戦(埼玉)の時からすでに垣間見えていた。この一戦で宇佐美は本田圭佑(ミラン)、香川真司(ドルトムント)とともに2列目を形成したが、本田も宇佐美も中へ中へと入りがちで、香川が飛び出すスペースがなくなるという悪循環に陥った。シュート力に絶対の自信を持っている宇佐美にしてみれば、よりゴールに近いエリアに侵入した方が得点確率が上がるからそうしたのだろうが、周囲とのバランスをもっと考える必要があった。

 その反省を踏まえて、今回は比較的ポジションを左に固定しつつプレーしたが、今度はゴールまでの距離が遠くなりすぎる傾向が強かった。「サイドよりトップの方がいい?いや、全然あそこでいいですし、1人2人かわしてゴールにするのが自分のスタイルですし、そこが自分の持ち味でもあり、課題でもあるって感じなんで、全然あのポジションでいいと思ってますけど」と5日の韓国戦後には自らに言い聞かせるようにコメントしていたが、やはり本音の部分では難しさを感じていたのだろう。今大会は一緒にプレーする選手も試合ごとに変わり、連携を合わせようとしても難易度が高かった。それも宇佐美が持てる力の全てを出し切れなかった一因だろう。

「ヨネ君(米倉)ともう少し2対1を作って、裏を回った時に崩すようなシーンがあってもよかった。全体的に(力を)出し切れずに終わったかなという感じです」と宇佐美は失意の様子でポツリと言い残して、武漢スポーツセンターを去っていった。2年前に開催された前回大会の柿谷曜一朗(バーセル)のように新エースの座に躍り出るイメージを持って中国に乗り込んできた若きアタッカーにとって辛い経験だったのは間違いない。

 それでも宇佐美はこの悔しさを糧にしなければならない。不発に終わった今回の経験を自分なりにしっかりとフィードバックして、左サイドから点を取る術を見出していかなければ、代表での活躍は叶わない。4カ国で最下位に沈んだ日本を引き上げることが、これからの宇佐美貴史に課された重要な責務だ。

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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