ニコ生ユーザーが選んだ7選手(左から鈴木、輪湖、鎌田、齋藤、関根、柿谷、ハーフナー) [写真]=Getty Images
文=河治良幸
ロシア・ワールドカップ二次予選初戦のシンガポール戦で引き分け、東アジアカップは最下位で連覇を逃してしまった日本代表。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は国内外にまだ招集はしていないが気になる選手が何人かいることを明かしており、欧州組が加わる9月3日のカンボジア戦(埼玉)と9月8日のアフガニスタン戦(イラン/テヘラン)に向けたメンバー選考でも新戦力の抜擢が期待される。
そこで、ニコ生で平日12時から連日放送しているサッカーキングチャンネルの『ハーフ・タイム』で“ハリルJAPANを救う神セブン”と題してCB、SB、ボランチ、トップ下、ウィング、FWに分け、Twitterの募集で名前があがった選手を候補とし、番組内で投票を行った。
CBは田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)、岩波拓也(ヴィッセル神戸)、丸山祐市(FC東京)、藤井航大(カマタマーレ讃岐)、田村友(アビスパ福岡)、鈴木大輔(柏レイソル)、近藤直也(柏)、大武峻(名古屋)、高橋祥平(神戸)の9人がエントリー。投票の結果、38.9%で鈴木が選ばれた。ポジショニングと人に対する厳しさ、強く当たりに行くところとステイするところの判断力など対人戦のスキルはACLの舞台でも証明済みで、チャンスに直結するフィードはハリルホジッチ監督が志向する攻撃スタイルでも大きな武器になりうる。圧倒的な高さは無いが、空中戦のポジショニングが良くセットプレーでも得点力がある。
ただ、多くの視聴者が“全体的にCBは人材不足”と指摘する状況で、2位に入った闘莉王の強さがまだ求められているのも事実。その意味でも3位だった岩波、闘莉王と同じ名古屋で成長中の大武などがA代表に割って入ってくることが求められる。
SBは塩谷司(サンフレッチェ広島)、高橋峻希(神戸)、車屋紳太郎(川崎フロンターレ)、輪湖直樹(柏)、小林祐三(横浜F・マリノス)、亀川諒史(アビスパ福岡)、下平匠(横浜FM)、中村太亮(ジェフユナイテッド千葉)、そして中盤とのマルチロールで三門雄大(横浜FM)が候補に。一度は5月のミニ合宿メンバーでもある塩谷が1位となったが、高橋、輪湖との三者による決選投票で輪湖が1位に。
番組内で左SBが駒不足になっている状況を説明したこともあるかもしれないが、JリーグとACLの両方で高いパフォーマンスを見せている点は評価に値する。中盤と素早くパスを交換して高い位置まで駆け上がることもでき、左利き特有のライン際をうまく使ったアップダウンや対人戦の粘り強さも選出に値する。デビュー当初も才能の片鱗は見せていたがけがに泣かされ、出世が遅れた選手だが、チャンスがあればしっかり掴んで定着につなげてほしいところだ。
また候補として拾えなかったが、名古屋で右SBとして新境地を開拓している矢野貴章を推す声が目に付いたことも注記しておく。恵まれた身長に加えて身体能力が高く、サイドのポジションにあって攻守のセットプレーに高さを加えられるという部分は欧州ベースの監督が意外と重視するポイントであり、特に高さに不安のある日本代表では重宝される可能性もある。
ボランチでは多くのファンが名前をあげた青山敏弘(広島)が圧倒的な支持を得た。Jリーグを代表する実力者であるのにミニ合宿、イラク戦とシンガポール戦、東アジアカップのメンバーから漏れた状況が待望論を高めているのは間違いないが、3月のウズベキスタン戦に出場して得点も決めているため、今回の企画ではあらかじめ対象外とするべきだった。
そのためボランチの選出はここでは“保留”とするが、青山をのぞくとルーマニアのアストラからトルコに環境を移した瀬戸貴幸(オスマンルスポル)が13.8%で3位の永木亮太(湘南ベルマーレ)をわずかにおさえ1位となる。欧州で無名の状態から叩き上げで現在のポジションを築いた瀬戸はFW出身だがボランチとして評価を高め、闘争心に溢れるディフェンスと積極的な攻め上がり、強烈なミドルシュートを武器とする。
すでに29歳だが貪欲な姿勢はさらある成長を予感させるものがある。ハリルホジッチ監督が言うところの“デュエル”(意訳すると“激しくボールを奪う強さ”)をハイレベルに備えた選手であることは間違いないが、攻撃における日本代表のテンポと正確性にしっかり付いていけるかが評価の分岐点になる。
3位は東アジアカップを負傷で辞退した柏木陽介(浦和レッズ)、予備登録のメンバーに入っていた大谷秀和(柏)、喜田拓也(横浜FM)と続き、彼らが引き続き期待されていることを示す結果に。その後には小泉慶(アルビレックス新潟)、SBでも候補に挙がった三門、矢田旭(名古屋)が入った。ともに複数のポジションをこなせるバーサタイル(適応範囲が広い)選手だが、東アジアカップで山口蛍(セレッソ大阪)や中国戦の遠藤航(湘南)が見せた様に長い時間に渡りハードワークをこなせることは選考のベースになりそうだ。
攻撃的MFは[4-2-3-1]のトップ下と[4-3-3][4-1-4-1]のインサイドハーフを想定してリストアップ。大宮アルディージャで絶大の存在感を見せる家長昭博や鹿島アントラーズで好調の土居聖真と金崎夢生、すでに代表実績のある森岡亮太(神戸)、韓国のFCソウルでプレーする高萩洋次郎といった実力者が名を連ねる中で、今月19歳になったばかりの鎌田大地(サガン鳥栖)が1位となった。
ちょうど放送後にU-22の代表キャンプに招集が決まった鎌田は1stステージの第11節にデビュー戦でいきなりゴールを決めると徐々に出場時間を増やしている。攻守のハードワークをベースとする鳥栖にあって荒削り感はかなりあるが、状況とイメージがシンクロした時の打開力と躊躇のない意識は目を見張る。ガンバ大阪のジュニアユースから高校サッカー(東山高等学校)に進んだキャリアもあり本田圭佑(ミラン)にイメージを重ねる声も強く、今や10代で最も期待される選手の1人だ。
筆者の見解としてはA代表の救世主になりうるのはもう少し先だとも考えるが、ハリルホジッチ監督はコートジボワールやアルジェリアで個性的な選手たちに自分の哲学を植え付け、勝利のために献身できる選手に進化させている指導者だ。投票した多くのファンが期待する通り、荒削りでも大粒の個をチームに取り込み、使いながら育てる意味では恰好の素材であることは確かだ。U-22代表の手倉森誠監督がA代表のコーチを兼任しており、そこでの評価も影響してくるかもしれない。
また昨季は惜しくもプレーオフでドイツの1部昇格を逃した山田大記(カールスルーエ)もチームに打開力と勝負強さを注入してくれる期待は高く、一時はけがなどで壁に当たった梅崎司(浦和)もサイドの経験をへて再び2列目で輝きを放っており、欧州組が揃うポジションでも東アジアカップで2得点した同僚の武藤雄樹と共に代表候補になるだけのパフォーマンスは示している。ベガルタ仙台で攻撃の中心を担い、前節は古巣の鹿島から2得点を決めた野沢拓也も状態が良く、34歳という年齢ながら強く推す意見が見られた。
ウィングは欧州組を含め層が厚いポジションだが、強いて言えば生粋のドリブラーがいない。その意味でも横浜FMで調子を上げている齋藤学と成長著しい関根貴大(浦和)に票が集まったのは世論を良く反映している。特にシンガポール戦ではブロックの中にボールを持って切り込むプレーが少なく、そうした意識と能力はアジア二次予選、さらには最終予選の相手にリードされた時間帯などにも求められてくる。カイオ(鹿島)の帰化を望む声もあったが、今回は対象外としたい。
ここでは22.2%で1位となった齋藤を選出するが、関根も7番目の枠の候補として残した。3位の柏好文は広島で[3-4-2-1]のサイドハーフを担当しており、4バックのどこではまるかの判断が難しいが、もともと快足のウィングとして鳴らしたタレントでもあり、豊富な運動量や高いバランス感覚は日本代表のウィング像にも当てはまる。同率で3位の田中順也(スポルティングCP)はクラブで構想外が伝えられ、米MLS移籍も噂されたが、現在は不透明な状況にある。ただ、ハビエル・アギーレ時代に見せたプレーから代表復帰を望む声も根強い。
その他に水沼宏太(鳥栖)、小川慶治朗(神戸)、武富孝介(柏)、高山薫(湘南)、U-22代表の野津田岳人(広島)といった候補が挙がった。それぞれ個性的なキャラクターと技術を持つタレント達だが、選手層の厚いポジションに割ってはいるにはさらに強烈なインパクトを放ち、中心的な働きでチームを勝利に導くことが代表選出につながる。
FWは岡崎慎司(レスター)というエースストライカーはいるものの、前線で力強さを発揮して攻撃を牽引できる存在が求められている。ブンデスリーガの開幕戦でゴールを決めた大迫勇也(ケルン)を推す声が非常に強かったが、彼もすでにハリルホジッチ監督のチームでウズベキスタン戦とシンガポール戦で出場経験があるため対象外とした。
22.2%で1位となったハーフナー・マイク(ADOデン・ハーグ)と21.3%で2位の柿谷曜一朗(バーゼル)はタイプこそ全く異なるものの、やはり前線で相手の脅威になれる選手であり、ハーフナーはスペインからオランダに復帰した最初の試合で強豪トゥウェンテから先制ゴールを奪うなど、再び活躍の予感を漂わせている。柿谷はリーグの開幕戦でゴールするも現在は負傷欠場中だが、スタイルが現在の日本代表に合っていることもあり、高い支持を維持している様だ。
広島のスーパーエースである佐藤寿人が3位の16.3%を獲得したのに続き、同じくJリーグでゴールを量産し、5月のミニ合宿を経験している豊田陽平が4位。韓国のFCソウルに続き、移籍した中国の江蘇舜天でも主力を担うエスクデロ・競飛王も支持の声が多い。U-22のエース候補でもある南野拓実(ザルツブルク)も期待は高まっているが、久保裕也(ヤングボーイズ)ともども更なる成長を欧州で示していってほしい。
ここまで6ポジションで投票を見てきたが、保留としたボランチの瀬戸も含め、柿谷、関根、永木、闘莉王、家長、瀬戸、高橋で投票を行った結果、柿谷が23.0%で1位、関根が22.5%となった。この2人を加えて“ハリルJAPANを救う神セブン”としたい。ただ、まだチームを固めていく段階ではなく、アジア予選を戦いながらもできる限り多くの可能性ある選手をテストしていくならば、所属クラブでしっかり高いパフォーマンスを見せ、代表監督の求める資質を示す限り、チャンスは巡ってくるはずだ。
【ハリルJAPANを救う神セブン】
鈴木大輔(柏)
輪湖直樹(柏)
鎌田大地(鳥栖)
齋藤学(横浜FM)
ハーフナー・マイク(デン・ハーグ)
柿谷曜一朗(バーゼル)
関根貴大(浦和)
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