1日の代表合宿で練習を行う長友佑都
文=元川悦子
3日の2018年ロシアワールドカップアジア2次予選・カンボジア戦(埼玉)まで2日。8月31日から埼玉県内で事前合宿を行っている日本代表は1日、合流が遅れていた香川真司(ドルトムント)と長友佑都(インテル)、先月末に結婚したことを発表した原口元気(ヘルタ・ベルリン)の3人が合流。負傷離脱した槙野智章(浦和レッズ)に代わって追加招集された丸山祐市(FC東京)も含め、23人全員が揃った状態でメディア非公開の戦術練習を1時間半程度実施した。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は27日のメンバー発表会見で、「カンボジアはかなり引いて5人ディフェンスを置いてくるだろう。5人のディフェンスを使ってトレーニングする準備をしている。この低いブロックをどのように不安定にするか。オフェンス面のいろんなソリューション(解決策)を用意している」と語っていたが、実際に相手の布陣を「5-3-1-1」と見立て、「4-2-3-1」のシステムで攻略する方法を具体的に確認した模様。指揮官は練習前に香川と長友を呼んで直々に指示を与えており、彼らに大きな期待を寄せているのは間違いなさそうだ。
実際、引いた相手を攻略するにはサイド攻撃が非常に重要になる。ベテラン左SB・長友の一挙手一投足がポイントになるのは間違いない。彼自身も「やっぱりサイドから1対1で仕掛けていくことができれば、自ずと相手が開かなきゃいけなくなるし、間のスペースをどんどん突けるんじゃないかと思う。敵の前でパスを回してるだけでは結局は崩れなくて、1人が1対1ではがして相手がもう1人出なきゃいけない状況になったら、マークがずれていく。ブラジルやアルゼンチンといった強豪はそういった選手が必ずいて、相手をはがせている。自分がどれだけそういう勝負ができるかだと思います」と強い自覚を口にした。
2014年ブラジルワールドカップ惨敗以降、長友は苦境を強いられ続けてきた。昨季インテルではケガが重なってセリエAで14試合の出場にとどまり、日本代表でも今年1月のアジアカップ(オーストラリア)では輝きを見せられなかった。3月のハリルホジッチ監督就任後は3月2連戦(チュニジア=大分、ウズベキスタン=味の素)シリーズに参戦できず、満を持して合流した6月シリーズも肝心のシンガポール戦(埼玉)を負傷欠場。本人も不完全燃焼感でいっぱいに違いない。
その後オフを経て、新シーズンのインテルでの復活を期したが、シャルケやジェノア、ストークやガラタサライなど連日移籍話が報道され、周囲の喧騒に巻き込まれた。インテルでも7月のバイエルン戦では3ボランチの右、インターナショナル・チャンピオンズカップのミラン戦では左SB、レアル・マドリード戦では左MF、8月に入ってからのアル・アハリとのゲームではトップ下とまさに便利屋状態で使われた。それでも本人は「チームのために戦ってるっていう犠牲心だったりは監督の心にも届くかなと思っていて、僕が逆の立場で監督をしてたら、そういう選手をやっぱり使いたいなと思うし。自ずとそういうプレーができてると、自分のパフォーマンスもいいっていうことなんじゃないかなと。イコールじゃないかなと思います」と目の前の仕事だけに集中し続けた。
8月23日の今季開幕後も試合出場機会が少なく、出番が回ってきた30日のカルピ戦で失点に絡んでしまうなど歯切れの悪い状態が続いている。インテル残留こそ正式決定したが、彼を取り巻く状況は順風満帆とは決して言えない。だからこそ、今回の日本代表2連戦では本来の長友佑都らしいキレのあるパフォーマンスを示さなければならないのだ。
「チームでいろんなポジションをやったのがすごくいい経験。前の選手の気持ちを学ばせてもらったので、それを生かしていきたい。ハリル監督になってからまだ公式戦に出ていないし、まずはチームが勝つために自分らしいプレーを心掛けたいですね」と本人も9月シリーズを新たな飛躍のきっかけにするつもりだ。
今回、タテ関係を形成するとみられる好調・武藤嘉紀(マインツ)を背後からサポートしその勢いを生かしつつ、逆に自分も生きる…。そんな賢く老獪なパフォーマンスで、長友には完全復活をアピールしてほしいものである。
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By 元川悦子