過酷なアウェー戦、長谷部の経験値と宇佐美&柴崎のプラチナコンビが勝利の鍵か

長谷部誠

イランのテヘランで練習に臨んだ日本代表MF長谷部誠(中央)[写真]=Getty Images

文=元川悦子

 中立地・イランの首都テヘランで行われる2018年ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選のアフガニスタン戦が翌8日に迫ってきた。5日に現地入りした日本代表は最初の2日間を市内のパススタジアムで練習したが、7日は決戦の地となるアザディ・スタジアムへ移動。本番とほぼ同じ17時から1時間半程度のトレーニングを冒頭15分以外、完全非公開で消化した。

 この公式練習に先駆け、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が記者会見に臨み、「我々は勝利を続けるだけ。明日も勝利しなければならない」と語気を強めた。2次予選突入後の根深い問題である決定力不足については、「得点に関してディスカッションを重ねたが、センタリングはかなり重要なテーマになってくる。ゴール前で戦略的に3つ4つのポジションを取りなさいと。クロスに対してオートマティックにしていこうと。そして最後のシュートを冷静に、集中をして蹴りなさいという話をした」とクロスからのディテールを突き詰めて3日のカンボジア戦(埼玉)で果たせなかった大量得点を奪うつもりだ。

 10月8日にはE組首位を争うシリアと中立地・オマーンの首都マスカットでのアウェー戦も控えているだけに、今回はとにかく勢いをつけたいところ。高温・乾燥・悪条件のピッチと三拍子揃った過酷な環境ではあるが、キャプテンの長谷部誠(フランクフルト)は、「日本でプレーするのとは明らかに違う環境だが、それを含めてワールドカップ予選。今回は高地で息の上がり方とか戻りとかが多少違うとみんなで話してますけど、4日経ってますし、慣れてきてるところもあります」と努めて前向きにコメントしていた。そういうタフさと逞しさを発揮する重要性を長谷部らベテラン勢は熟知している。その経験値を今こそ、いかんなく発揮してほしいものだ。

 そんな日本代表のスタメンだが、指揮官は「2つのポジションで誰を先発で行くかを決めかねている状況」と発言。その2つとは、ボランチ・山口蛍(セレッソ大阪)と武藤嘉紀(マインツ)ではないかと推察される。6月のシンガポール戦(埼玉)ではボランチに柴崎岳(鹿島アントラーズ)、左FWに宇佐美貴史(ガンバ大阪)が先発した通り、この両ポジションを巡る争いは熾烈を極めている。カンボジア戦の山口は2アシストと目に見える結果を残したが、ハリルホジッチ監督が要求していたミドルシュートは少なく、やや物足りなさを感じさせた。武藤にしてもゴールに急ぎすぎるあまりスペースを消してしまい、本人も反省の弁を口にしていた。

 山口、武藤のところを柴崎と宇佐美に変えれば、もちろんチーム全体のバランスは変わる。柴崎の方が長谷部より前目で攻撃的にプレーし、長谷部がアンカー気味に下がることになる。カンボジア戦で長谷部が山口と組んだコンビとは逆となるわけだ。その方が柴崎も伸び伸びプレーでき、持ち前の得点センスも出しやすい。柴崎は1月のアジアカップ準々決勝・UAE戦(シドニー)で見せた通り、ミドルシュートを確実に沈める精度と技術を持っている。それを結果に結びつけて、レギュラー奪回を実現したいところ。

 一方、宇佐美は7月25日のJ1セカンドステージ第4節・ヴィッセル神戸戦以来、Jリーグと代表で計8試合ゴールがないが、本人は「僕自身、いろいろポジションが変わって左サイドとして確率が少なくなる中で、やっぱり成長の波かなと思います」と焦らずじっくり取り組んでいる。今回のアフガニスタン戦がアウェームード一色に覆われる可能性が高いことも歓迎する余裕を持っているようだ。

「もちろんホームでサポートしてもらえる空気もすごくいいけど、殺気立ったというか、殺伐とした空気も個人的には嫌いじゃない。その空気のなかで楽しめればいいかなと。大観衆を黙らせたい? そうですね」と目を輝かせていた。ギリギリの状況になればなるほど、宇佐美は底知れぬ能力を押し出す選手。そういう意味でも今回は大いに期待を寄せてもいいのかもしれない。

 ボランチは柴崎だけでなく遠藤航(湘南ベルマーレ)もおり、左FWは爆発的スピードを誇る永井謙佑(名古屋グランパス)も候補者の1人だ。そういうフレッシュな選手たちがチームを活性化できるか否か。そこもアフガニスタン戦の大きな見どころになるだろう。いずれにしても勝ち点3を奪って帰る。そこだけは絶対的なノルマだ。

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