2ゴールを挙げた岡崎だが、長所が生かされていないと指摘する [写真]=Getty Images
文=戸塚啓
ワールドカップ予選を突破するだけでなく本大会で上位を目ざすなら、9月8日のアフガニスタン戦は物足りない。6対0というスコアは、チャンスを生かし切った結果ではなかったからだ。ゴールラッシュの陰に隠れてしまっているものの、W杯本大会なら痛恨と表現されるシュートミスはあった。
もっとも、グループリーグ最大の敵と目されるシリアと同じスコアで、アフガニスタンを下したのである。現時点では及第点を与えられる一戦だったことも事実だ。シンガポール戦のスコアレスドローで揺らいだ日本の対外的な評価は、カンボジア戦とアフガニスタン戦で再び持ち直したと言っていいだろう。
サッカーが秘めるメンタルスポーツとしての側面を、改めて感じさせた一戦である。キックオフ直後のアフガニスタンは、いわゆるベタ引きではなかった。攻撃の手数は序盤から少なかったが、まがりなりにもホームの雰囲気に包まれていたこともあり──だからといって、日本を威圧するアウェーの空気感はなかったが──彼らの戦いぶりは密やかな野心を感じさせた。キックオフから専守防衛を決め込んでいたカンボジアとは、異なるゲームプランを用意していた。
試合の色合いが変わったのは、開始10分のワンプレーだった。原口元気からパスを受けた香川真司が、原口のランニングを利用して鋭くターンする。右足で持ち出してシュートコースを確保すると、低い弾道の一撃がゴールネットを揺らしたのだった。
シンガポール戦とカンボジア戦の教訓から、日本は早い時間帯の先制点が欲しかった。それと同時に、アフガニスタンのゲームプランも理解していた。無失点の時間をできるだけ長くすることで、彼らは精神的優位性を持ちたかったはずだ。
対戦相手の野望を早々に打ち破った日本は、前半のうちにもう1点を追加した。カンボジア戦で吉田麻也が2点目を決めた50分には、香川が自身2点目をあげてスコアを3対0とした。
日本の選手たちを縛めてきたシンガポール戦とカンボジア戦の記憶は、すでに彼方へ消え去りつつある。57分と60分には岡崎慎司が立て続けにネットを揺らし、リードをさらに広げた。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はここから交代のカードを切り、途中出場した宇佐美貴史のアシストから本田圭佑がゴールラッシュを締めくくる6点目をゲットした。
1点目が2点目を呼び、2点目が3点目を生む。W杯予選で初めて「ケチャップがあふれ出た」日本は、FIFAランキング130位の格下に力の差を見せつけた。
9月8日にはカンボジア対シリアの一戦も行われ、シリアが敵地で6対0と大勝した。3連勝でグループ首位を走るライバルは、確実に勝点を重ねている。2勝1分けで勝点7の日本は、なおもシリアの背中を追いかける立場だ。
気になることがある。
アフガニスタン戦で2ゴールを挙げた岡崎が、いまひとつ生かされていないのだ。自身2点目のゴールは彼らしい瞬発力と嗅覚が発揮されたが、今回の2試合を通じて特徴を引き出されたとは言えない。
日本代表とマインツは、攻撃パターンが違う。日本代表とレスターも違う。それゆえのギャップなのだが、彼はチームでもっとも信頼できるFWだ。岡崎の良さを引き出す攻撃があっていい。
DFラインと駆け引きをしながら、抜け目なく背後を狙う彼の長所が、専守防衛の相手によってあらかじめ封印されていたところはある。だとすれば、アフガニスタン戦の前半に見せたDFラインからのロングフィードは、10月のシリア戦で岡崎の特徴を生かすための布石だったのか。
シリア撃破とその先に見据えるW杯へ向けて、視界良好とみるのはまだ早い。改善すべきポイントは、依然として少なくないのだ。
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