マスカットで初日の練習を行った香川真司(中央) [写真]=兼子愼一郎
2018年ロシアワールドカップ・アジア2次予選E組の1位通過を大きく左右するシリア代表との大一番を8日に控え、5日午前中に決戦の地であるオマーン・マスカット入りした日本代表。日中の気温は35度を大きく超える猛暑に、香川真司(ドルトムント)も「想像以上に暑い」と驚きを隠せない様子だった。
同日17時過ぎからスルタン・カブース・スポーツコンプレックス横のサブグランドで行われた現地初練習時も気温33度、湿度63パーセントという過酷な条件に見舞われた。この状況下で改めて気合を入れようとしたのか、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は今回も青空ミーティングを13分間も実施。「今年一番の試合だ。絶対に勝たなければいけない」と選手たちを鼓舞した。所属クラブの試合日程の影響で合流が遅れた本田圭佑(ミラン)と南野拓実(ザルツブルク)以外の21人は神妙な面持ちで話に聞き入っていた。
その後、トレーニングがスタート。21分間のランニング、短い距離のダッシュなどのウォーミングアップ、2組に分かれたボール回しと進んでいった。このボール回しの間に指揮官は柏木陽介(浦和レッズ)、塩谷司(サンフレッチェ広島)、長友佑都(インテル)、酒井高徳(ハンブルガーSV)、武藤嘉紀(マインツ)、柴崎岳(鹿島アントラーズ)、清武弘嗣(ハノーファー)、槙野智章(浦和レッズ)の8人を順番に呼び、ピッチに座り込みながらの面談を実施した。
柏木と塩谷は久しぶりの招集組、長友と酒井高徳は所属クラブで試合出場機会が少ない選手、武藤と柴崎はクラブでは結果を出しながら代表ではなかなかブレイクしきれない選手、清武と槙野はケガ明けと、ハリルホジッチ監督はそれぞれに確認しておきたい部分があったのだろう。塩谷が「サイドバックで(監督が)考えている体のコンディションとか、もっといい状態にできると言われた」とコメントしている通り、彼らは監督からの注文を受け、気持ちを新たにした様子だ。
練習は1時間半弱で終了。取材ゾーンに現れた中で一番の注目は香川だった。9月のアフガニスタン戦(テヘラン)では先制点を含む2ゴールを挙げ、6-0の大勝の原動力となっただけに、今回もコンスタントな活躍が期待されるところ。本人も「シリアは本当に簡単な相手ではないし、難しい試合になると思う。自分は勝つことしか考えてないし、絶対勝たなきゃいけない試合の中で勝ち切れるかって意味では自分たちが試されていると思う」と意気込みを新たにしていた。9月代表2連戦後のドルトムントでは、9月20日のレヴァークーゼン戦で1ゴールを挙げただけ。8月の勢いがややなくなりつつあるだけに、今回は奮起が求められるところだ。
その香川だが、現地初練習の最初のランニングで清武、山口蛍(セレッソ大阪)のC大阪出身者と仲良く談笑しながら走っていた。この3人に加え、今回は昨季までC大阪の背番号13をつけていた若い南野も参戦。古巣の仲間たちとのプレー機会が増えそうだ。
「拓実とはあいつがユースの時、ちょっと練習で一緒にやりました。若いだけに、自分がサポートしてあげたいですね」と香川も前向きに語っていた。勝負のかかったシリア戦では少し難しいかもしれないが、右FWの本田と南野、左FWの原口元気(ヘルタ・ベルリン)あるいは武藤と清武が交代し、元セレッソトリオが2列目で競演する可能性もゼロではない。その3人を山口がサポートする形になれば、非常にいい連携が構築できそうだ。
9月2連戦でも、香川は山口に対し「自分が左で下がり目にプレーしたいから低めの位置を取ってほしい」と注文をつけている。それも「自分が攻撃のリーダーだ」という強い自覚の表れだろう。そういう意識をより強めていくことが、ドルトムントで見せているようないいバランスのプレーにつながるはずだ。
もちろん清武もトップ下で勝負したい意向を持っているため、香川とはライバル関係になることも考えられるが、そういう危機感を持って代表戦にのぞむことも、結果を残すうえで重要だ。このところ本田がミランで出場機会を得られず、岡崎慎司(レスター)もプレミアリーグ1点止まりとやや苦境にあえいでいるだけに、香川の得点に直結する仕事が日本の命運を左右する。彼にはこれまで以上に大きな期待を寄せたいものだ。
文=元川悦子
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By 元川悦子