U-22日本代表の合宿に参加した浦和MF関根貴大
来年1月のリオデジャネイロ・オリンピック アジア最終予選に向けた「最終選考の場」と位置付けられた10月25日から29日までのU-22日本代表候補のトレーニングキャンプ最終日――。サガン鳥栖との練習試合は「これまで取れていなかったぶん、帳尻を合わせたような」と手倉森誠監督も表情を緩ませるゴールラッシュとなった。
原川力(京都サンガF.C.)のCKに2度合わせた奈良竜樹(FC東京)の2ゴールを皮切りに、中島翔哉(FC東京)のPK、相手DFのミスを逃さなかった浅野拓磨(サンフレッチェ広島)の2ゴール、野津田岳人(広島)の30メートル級のミドルシュート、そして最後は鎌田大地(鳥栖)が所属クラブのゴールに容赦なくボールを蹴り込み、大量7ゴールを奪ってみせた。
7月1日のコスタリカとの親善試合(仙台)に2─0と完勝して以降、8月に行われた京都との練習試合(1-2)、9月にJリーグ・アンダー22選抜として臨んだFC町田ゼルビアとのJ3リーグ戦(0-1)、27日の福岡大との練習試合(0-0)で結果を残せていなかったこともあり、この大量得点が「焦りがあった」(浅野)、「責任を感じていた」(野津田)といったモヤモヤした気持ちを晴らしてくれたのは間違いない。
だが、手倉森監督の視線は、別の方向へと向けられていた。
試合後、7-0という結果について感想を求められた指揮官は「7点取ったのはすごいけど」と前置きした上で、「失点が少なくなってきていることに手応えを感じている」と胸を張り、さらにこう続けた。
「選手たちは派手に勝ちたいとは絶対に思っていないし、俺も思っていない」
失点をなくす――。派手に勝つつもりはない――。
その言葉には、指揮官が何を大事にしてチーム作りを進めてきたのかが示されていた。ベガルタ仙台で指揮を取っていた時代を振り返れば分かるように、守備から着手する手堅いチーム作りは指揮官のスタイルではあるが、一方で、最終予選の方式を意識してのものでもある。
これまでホーム&アウェー方式による総当たりのリーグ戦で行われてきた五輪のアジア最終予選は、今回からセントラル方式によるトーナメント戦に変更された。
アジアに与えられた出場枠はわずか3つ。グループステージ突破は大前提として、ベスト8と3位決定戦は「勝てば天国、負ければ地獄」の大一番となる。これまでに経験したことのないプレッシャーに苛まれることにもなるだろう。しかも開催地は中東、カタールのドーハである。気候もピッチ状態も慣れ親しんだものとは大きく異なる。そうした状況において、自分たちの強みを出せない時にどうするか、相手が嫌らしいことをしてきた時にどう対処するか、重圧の懸かったゲームで膠着した時にどう打開するか――。
様々な状況を想定した手倉森監督は、チーム結成当初から「守備の意識を高める」ことに重点を置き、「柔軟性と割り切り」を重要なコンセプトとして掲げてきた。もちろん、その背景には4大会連続してベスト8で敗退する勝負弱さを露呈し、世界への切符を逃し続けているU-19アジア選手権や、自分たちのサッカーに固執して惨敗に終わったブラジル・ワールドカップの反省もある。その点で言えば、来るべき最終予選に向けて、より有意義なテストマッチとなったのは、鳥栖戦よりも福岡大戦のほうだったかもしれない。
福岡大との練習試合は“対アジア”を明確に意識して組まれたものだった。あらかじめ福岡大サイドにロングボールを多用し、遠慮なくガツガツ来てくれることを依頼。実際に福岡大が長身FWへロングボールを放り込んでくれたことで、ピッチ上では激しい肉弾戦が繰り広げられた。
さらに、試合当日は大雨に見舞われた。ゲームが始まってすぐに止んだものの、ピッチの至るところに水たまりが生じ、ゲームコントロールが難しい状態でもあった。それでも守備陣は、前半の岩波拓也(ヴィッセル神戸)&奈良、後半の中谷進之介&秋野央樹(ともに柏レイソル)のセンターバックコンビを中心に福岡大の攻撃を跳ね返し、喜田拓也(横浜F・マリノス)や三竿健斗(東京ヴェルディ)らボランチ陣がこぼれ球をよく回収し、攻撃へとつなげた。
ところがトレーニングで裏を狙う意識を強調していたこともあり、特に前半の攻撃は縦一辺倒になりがちで、関根貴大(浦和レッズ)がクオリティの高さを証明した以外はほとんど見せ場を作れなかった。後半に入ってボランチの川辺駿(ジュビロ磐田)が広範囲に動いてボールを引き出し、トップに入った金森健志(アビスパ福岡)が積極的にシュートを放ったが、結局ゴールは奪えず。キャプテンの遠藤航(湘南ベルマーレ)は「球際で戦う意識や切り替えの部分は浸透してきたけど、攻撃面でのサポートの距離やミスを少なくすることに関してはまだまだ」と課題を口にしていた。
一方、鳥栖戦は「チームとしてやろうとしていることをほとんど出せた」と岩波が振り返ったように、「全員攻撃・全員守備」のコンセプトを体現し、7-0という大差のゲームによくありがちな大味な内容ではなく、最後まで引き締まったゲームを披露。ただし、「ピッチ状態が良好」、「相手がパスをつないで来てくれる」という一定の条件が揃えば同程度の内容を披露できるということは、2-0で快勝した7月のコスタリカ戦でも証明されている。
問題は前述したように、思い描いたようにゲームをコントロールできない時にどうするかだ。その点で、鳥栖戦は得点の多さではなく、得点の内容において評価できるものだった。確かに複数の選手が連動し、きれいに崩したゴールは1つもなく、物足りなさを感じなくもない。だが、最終予選で美しくゴールを奪える保証などなく、実際にその可能性は高くないだろう。
むしろ、粘り強く戦いながら1点をもぎ取って勝ち切るという最終予選の試合展開を想定すれば、セットプレーやミドルシュート、あるいは相手のミスを突いて鳥栖からゴールを奪い取ったことに価値がある。
では、「最終選考」=「チーム内競争」という点ではどうか。
今回は通常より1日長く5日間の合宿を組み、普段よりも多い28人が招集された。ほとんどが「常連」と言えるメンバーだが、それでも指揮官はここに来て新顔を2人加えた。川崎フロンターレで売り出し中のサイドアタッカー中野嘉大と、浦和でレギュラーを張り、ここまでタイミングが合わずに招集できなかった関根である。
この28人に、ヤマザキナビスコカップ決勝を優先させた鹿島アントラーズの植田直通、豊川雄太、伊東幸敏、ガンバ大阪の西野貴治、井手口陽介、さらに欧州組の久保裕也(ヤング・ボーイズ/スイス)と南野拓実(ザルツブルク/オーストリア)、そして負傷中や負傷が明けたばかりの鈴木武蔵(水戸ホーリーホック)、松原健(アルビレックス新潟)らが加えられ、その中から最終予選に臨む23名が選ばれることになるはずだ。
中でも、熾烈さが増しているのが攻撃陣のポジション争いである。この年代の代表チームは、もともとボランチより後方に所属クラブで試合経験を重ねている選手が多かった。遠藤、大島僚太(川崎フロンターレ)、岩波、植田、山中亮輔(柏)、松原、櫛引政敏(清水エスパルス)といった選手たちである。
一方、2列目より前には所属クラブでポジションをつかめない選手が多く、昨年9月のアジア大会ではスタミナ不足を露呈して指揮官の頭を悩ませる選手もいた。
ところが、今年に入って浅野がA代表に呼ばれるまでに成長すると、前年は出番に恵まれていなかった矢島慎也(ファジアーノ岡山)や前田直輝(松本山雅FC)が期限付き移籍先でポジションをつかみ、高卒ルーキーの鎌田も夏頃から鳥栖で頭角を現した。そして福岡戦、鳥栖戦では関根が初めてこのチームに招集されたとは思えないほどスムーズにプレーし、指揮官から「戦術理解度が非常に高く、満足している」との賛辞を引き出すほどだった。
一気に激化した攻撃陣のポジション争いについて、指揮官も喜びを隠さない。
「野津田がシュートを決めた時、ベンチで(同じポジションの前田)直輝が頭を下げていた。見せつけられたなっていうところだね。やっぱり試合ではチーム内のライバル同志で見せ合いがある。いいんじゃないですか、ああいうのは」
ここに久保や南野、鈴木らが加われば、タイプの異なるアタッカーが揃うことになり、アジア大会とは異なる意味で、指揮官は頭を大いに悩ますに違いない。
U-22日本代表は今後、11月の国内合宿、12月半ばのドーハ合宿、12月末の石垣島合宿を経て、年明けすぐに決戦の地・ドーハに向かう予定になっている。12月のドーハ合宿では2〜3試合のトレーニングマッチが組まれる予定だというが、このゲームは快勝するよりも、むしろ苦しんだほうがいいだろう。今一度、自分たちがゲームコントロールできない時の戦い方について共通意識を深めておきたい。
あとは、手倉森監督がベストの23人を選び、チームの最大値を引き出せるような組み合わせと、戦況・戦術にマッチした人選を見極められるかどうか。柔軟さを持って戦い、時に割り切ってでも勝つことを意識づけられてきたチームの真価が問われる日が、迫ってきている。
文=飯尾篤史
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