16日にトレーニングを行った日本代表の選手たち [写真]=兼子愼一郎
17日に行われるカンボジア代表との2018FIFAワールドカップ アジア2次予選は、高温多湿な気候に加えて、対戦相手と同時に不慣れな人工芝と多量のゴムチップ、蹴り心地の重いボールというアウェーの“三重苦”を乗り越えなければならないゲームとなる。
12日のシンガポール戦では金崎夢生(鹿島アントラーズ)、柏木陽介(浦和レッズ)といったハリルジャパンでの“新顔”が活躍して3-0で勝利。特に前半は人もボールも動く流麗なパスワークで守りを固める相手を崩し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「悪夢」と称していた6月のスコアレスドローを払拭する内容を見せた。指揮官もシンガポール戦の前半については「素晴らしかった。あとは継続させること」と語っており、課題だった引いた相手への攻撃パターンに手応えを感じている様子。ハリルホジッチ監督は「新しい選手を使う」と明言しており、入れ替えたメンバーで内容の伴った結果を出すことができれば、さらにチーム全体の底上げと競争激化が進むことになると言っていい。
今回対戦するカンボジア代表はFIFAランキング183位で、現在グループEの最下位に沈む。同代表のイ・デフン監督は前日会見で「我々とはレベルが違う。引き分けることも難しい」と弱気な姿勢を見せているが、敵地では何が起こるか分からない。アクシデントに対してのリスクマネジメントには細心の注意を払わなければならない。
試合会場となるオリンピックスタジアムは、多量のゴムチップが含まれた人工芝。練習に臨んだ選手たちは一様に「ボールの転がりが悪い。思ったよりもフカフカしていて足が疲れそう」と感触を説明している。しかもピッチの至るところにゴムチップ溜まりができており、そこにボールが落ちるとチップが目の高さまで飛び跳ねるだけでなく、ボールの跳ねも悪くなってしまうという。つまりボールがどこでバウンドするか=ゴムチップ溜まりがないかを事前確認する必要性も出てくるわけだ。
さらに同試合ではカンボジアサッカー協会の判断でベトナム製のボールを使用することになっている。分厚い合成皮革を使用していることからか、普段とはボールタッチの感覚が異なる。山口蛍(セレッソ大阪)が「蹴った時に重い感じがする」と話し、本田圭佑(ミラン)も「人工芝よりボールが気になる。早く慣れるしかない」としていた。また、西川周作(浦和レッズ)は「確かに重い感じはあるし、思ったよりもブレる」と説明。林彰洋(サガン鳥栖)は「しっかり正面に入らなければ」と、より意識を高め、集中して臨むことを明らかにしている
問題は転がりの悪い芝と重いボールの“合わせ技”だ。細かいパスをつないで攻めようとした場合でも思いどおりボールが転がらずに途中でショートしてしまう危険性がある。そうなると相手にカウンターのチャンスを与えかねない。ピッチで戦う選手たちは普段よりも強めのパスを出すように意識しなければならないし、周囲も通常以上に万が一に備えてのリスクヘッジをしておくことが必要となる。
ハリルホジッチ監督も、やはり“合わせ技”が気になったのだろう。オリンピックスタジアムで行われた前日練習ではダイレクトでパスをつなぐトレーニングを重点的に取り組ませていた。選手たちは3日間の練習でピッチにもボールにも慣れたはずだが、それでもアクシデントは起こりかねない。ただ、アクシデントを恐れていては、自分たちのサッカーをすることはできないのも事実。とにかく集中力を研ぎ澄ませ、引いて守る相手にどこでリスクを掛けるのか、ピッチ上でどんなことが起こるのかを普段以上に予測しながら試合を進めることが求められる。
敵将が話したとおり、実力を考えれば勝って当たり前。今回のゲームで注目すべきはアウェイの環境をいかに乗り越えるか、そして指揮官が選んだメンバーがいかに持ち味を発揮し、的確に状況を判断してプレーできるかだろう。アジアを戦い抜かなければ世界にはたどりつけない。こういった困難を乗り越えることも、日本代表が背負った宿命である。
文=青山知雄
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