川崎戦に出場した小林祐希(手前)。30日からは日本代表合宿に参加する [写真]=Getty Images
「もちろん」
テレビカメラの前で「日本代表の中でやっていける自信は?」と聞かれ、彼はまっすぐに質問者の顔を見ながら、即座に力強くこう答えた。
29日に行われた2016明治安田生命J1リーグ・ファーストステージ第14節。川崎フロンターレとのアウェーゲームに臨んだジュビロ磐田は粘り強い守備を見せながら終盤に失点を喫して惜しくも敗戦。日本代表初招集で注目を集めたMF小林祐希はトップ下で先発出場し、決定機には絡むことはできなかったものの、強烈なミドルシュートを放つなど存在感をアピールした。
リーグ戦3試合連続ゴールと勢いに乗って挑んだ首位川崎との一戦。だが、この日は相手の素早い守備ブロックと寄せを受けて前方へのパスに乱れが生じてしまい、得点に絡めないまま83分に松井大輔との交代でベンチへ退く。試合後のミックスゾーンでは「自分のプレーには全く納得できていない。交代させられているようではまだまだ」と厳しい表情を浮かべていた。
もっとも川崎相手に全く持ち味を発揮できなかったわけではない。前半には縦パスを受けてフリックで前方へ流し、この日がケガからの復帰戦となったジェイとのコンビネーションで相手ゴールへと迫った。後半には「右サイドに寄せて中にスペースを作ることを一瞬で思いついた」という予備動作から空いたスペースを生かして左足で強烈なミドルシュート。これは相手GKチョン・ソンリョンに弾かれたものの、その特長はしっかりと見せた形だ。
同じレフティということもあり、一部報道では“本田圭佑二世”と称されている。だが、彼の良さはボールを数多く触りながらリズムを作ってチームに落ち着きを与えるプレー、そして攻撃に変化を加える一瞬のひらめきだ。左足キックのフォームなど確かに本田と重なる部分はあるが、彼自身も「プレースタイルが似ていると言われるけど、自分ではあまり似ていないと思っていて。本田圭佑は本田圭佑、小林祐希は小林祐希。そこをかぶせて見られるのはあまり……。本田さんにとっても嫌なのかなと思います」と率直な印象を語る。
30日からは愛知県内で日本代表合宿がスタートする。期待の新戦力ということもあって周囲は盛り上がりを見せるが、本人は至って冷静だ。「もちろんワクワクする気持ちはありますけど、いつもと違うプレーができるわけじゃない。自分の実力以上のものを出せるわけではないし、緊張もワクワク感もそこまでではないです。いつもどおり、ジュビロで練習しているのと同じようにやろうかな」と平常心を貫く。取材に囲まれる回数や人数が増えたことにも「代表に入れば注目されるわけだし、こういうことにも慣れていかなければ」と全く意に介さない。加えて「(日本代表に選ばれたことで)簡単なミスもできなくなるし、プレーに対する要求や見る目が厳しくなっていくのは当然。自分にもっとプレッシャーをかけて、代表らしく日本を引っ張っていくプレーを見せなければいけない」と気持ちを引き締めている。
意識は高まっている。今シーズン開幕前に掲げた最低目標が「日本代表に入ってアピールすること」だった。「まだ代表に選ばれただけで達成に至ったわけではないけど、まず入れたことはプランどおり。とにかく練習でアピールして、試合に出たら出場時間にかかわらず、とにかくシュートを1本打つつもりでやってきます」と自身の未来を思い描く。そして「代表のプレッシャーに打ち克っていけるメンタルをいろいろな選手から学んで、自分の身に付けるようにやっていければ」と先輩たちの経験を吸収する意欲にも満ち溢れている。
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が直接視察の上で選んだ若き司令塔。海外組が揃う二列目、中でもトップ下のポジション争いは熾烈を極めるが、彼が香川真司(ドルトムント)や清武弘嗣(ハノーファー)とは一風変わった持ち味を持つことは間違いない。あとは指揮官の求めるデュエルの強さやハードワークでいかに結果を出すかだ。世界で輝きたいという意向を持つ小林祐希にとって、日本代表入りは単なる“入り口”にすぎない。だが、現在地への到達が周囲の協力あってこそであることは十分に理解している。
「(代表入りを)達成させてくれたチームメートがいるので、そこは心に持ってプレーしたいし、いろいろなものを吸収して、ジュビロに還元したい。そして行くからには結果を残したいので、左で持った時にコースが空いたらシュートを打てる部分とラストパスでアピールして、ジュビロと同様に何度失敗しても狙い続けていきたい」
普段着のまま、いつもどおりの自信を胸に――。小林祐希が初めての日本代表で“自分”を表現することを誓う。
文=青山知雄
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