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4年後の主役は俺! “東京五輪世代”のG大阪・MF堂安律、狙うは世界での活躍

2016.09.02

 次世代のエース候補が4年後に向けてスタートを切った。

 MF堂安律ガンバ大阪)は現役高校生ながら飛び級でトップチームに昇格すると、クラブ史上最年少記録となる16歳11カ月18日でJ1デビュー。今季は主にJ3に所属するU−23チームで得点を重ね、トップチームでの出場機会をつかみつつある。U−19日本代表でも主軸を担う18歳の成長は止まることを知らない。

 リオデジャネイロ・オリンピックが幕を閉じ、次の2020年夏季五輪の舞台は東京へと移される。堂安は将来の日本を背負う“東京五輪世代”の中核として注目を集める選手の一人だ。本人は「まだ実感がない」と語るが、その表情には「あの場所に立ってやる」という強い決意がにじんでいた。彼が見据える4年後とは——。

堂安律

インタビュー・文=高尾太恵子
取材協力=ナイキジャパン

堂安律とは何者なのか

――ついに、ジュビロ磐田戦(8月13日のJ1・セカンドステージ第8節)でJ1初アシストを記録しました。

「あのアシストは気持ち良かったです。自分でシュートを打とうか迷ったんですけど、中に味方が見えたのでクロスに切り替えました」

――一気に相手選手を置き去りにするドリブルは、見ていて気持ちが良かったです。

「あれが僕の特徴です。『特徴は何か?』と聞かれたら、あのプレーを見せたいですね」

――改めて、ご自身のプレースタイルを教えてください。

「簡単に言えば、得点に絡むプレーが自分の特長です。ドリブルで“ゴリゴリ”行くこともできますし、アシストもゴールも決められる。それが自分のプレースタイルです」

――セレッソ大阪戦(7月10日のJ3第16節)でも50メートルくらいドリブルをして、シュートまで持ち込みました。

「あれは最後のシュートが決まっていれば……まあ、右足だから仕方ないです。(利き足の)左足だったら間違いなく決めていましたよ(笑)。もともとはドリブルで仕掛けるようなタイプではありませんでした。高校生になって、ユースの監督に『お前はもっと仕掛けていい』と言われてから、一対一を意識するようになりました。目の前の相手には絶対に負けない、絶対にはがしに行く、という気持ちで仕掛けています」

――中学生の頃は、そんなに自分から仕掛けるタイプではなかったんですね。

「そうなんですよ。フィジカルの強さを生かして相手を潰したり、ボランチでパスをさばいたり。今のようにゴールを取るスタイルではありませんでした。中学3年生の時、当時の監督にいきなりFWを命じられて、そこから得点感覚が身についてきました」

――そこで得点を取る楽しさも覚えたのでは?

「それを一番に感じました。今ではアシストよりも自分が得点を取って、ヒーローになることが理想ですから(笑)。練習終わりのシュート練習はずっと続けていますよ。感覚を忘れないように、1日3本でも打つようにしています」

――利き足の左足だけではなくて右足も?

「まだ左足を極めかけている最中なので、左3本、右1本くらいの割合ですね(笑)。カットインして45度からのコースが100パーセント入るように練習しています」

――SC相模原戦(7月16日のJ3第17節)では無回転シュートを決めていました。

「実は、練習していたんですよ。(大森)晃太郎くんが打っているのを見て、『僕のほうがうまいっすよ』ってノリで蹴っていたら、少しずつ蹴れるようになってきて(笑)。実際に試合で使ってみました」

――長年、日本代表で守護神を務めた川口(能活)選手からゴールを奪ったのは自信になったのでは?

「自信というよりも、素直にうれしかった。ずっと見ていた選手ですし、偉大な選手です。実家に帰った時、両親に『やるやん』って言われました(笑)。家族が一番興奮していたようです」

堂安律

J3で得た自信、トップチームで見えた課題


――今季の序盤はJ3でプレーし、7月から徐々にトップチームでの出場機会が増えてきました。実戦で違いを感じることはありましたか?

「J3の選手が個で戦ってくるのに対して、J1の選手は組織として戦ってくる。J3は各選手がアピールしようと必死なこともあって、個々のプレッシャーが速いんです。でも、トップチームはより頭を使ったサッカーをしていると感じました」

――なるほど。では、トップチームでプレーする中で新たに見えた課題点は何でしょう。

「攻撃はできる自信があります。「絶対に一対一では負けない」という闘志むき出しの選手を相手にJ3で結果を残せたことは、自分にとって一つの成果です。足りないのはハードワークの部分だと思います。ポジション争いで阿部(浩之)くんや晃太郎くんに勝つためには、(長谷川)健太さんが求めている運動量に加えて、自分の特徴を出さないといけない。スタメンを取るために、まずはハードワークを意識して練習に取り組んでいます」

――ハードワーク以外に、長谷川監督に求められていることはありますか?

「点を取ることですね。J3の時から『点を取れ』と言われ続けていて、それは今も変わりません。最近は、とにかく調子がいいんですよ。コンディションの良さを実感していなくても、体が勝手に動いてしまう。頭も体もよく動いていて、今までで一番コンディションがいいかもしれません。それを(丹羽)大輝くんに話したら、『その感覚は覚えておいたほうがいい』とアドバイスされました。今まで体感したことのない感覚なんですけど、それをトップチームの中で体感しながらプレーできていることは自信になっています」

――これまでも飛び級で上のカテゴリの選手たちとプレーしてきました。無理をしてでも、上のレベルに身を置くことが自分の成長にもつながっていると思いますか?

「そう思います。先輩であろうと負けたくない。実力的にまだまだ劣っていますけど、高いレベルについていくことで、自分がうまくなっていっていると実感しています」

堂安律

Road to Tokyo


――リオデジャネイロ・オリンピックの3試合を見て、率直にどう感じましたか?

「『勝てたんじゃないか』というのが一番の感想です。内容も負けていなかったので、『何で、勝てなかったんだろう』という思いが強かった。だから、ハルくん(藤春廣輝)や(井手口)陽介くんに直接聞きました。失点しても追いつける。でも、なかなか勝ち越せなかった。その結果に、二人も納得していないようでした」

――短期決戦のむずかしさや、大舞台での緊張感は見ていても感じたと思います。

「そうですね。ただ、短期決戦はこれまでも経験していることなので、言い訳にできないと思います。僕たちには、U-20ワールドカップや東京五輪が控えていますけど、その舞台で経験を言い訳にすることはできない。勝たないと意味がないんです。U-19代表でも、勝ちにこだわっていこうという話をしています」

――4年後の東京五輪を見据えた時に、まずは今年10月に行われるAFC U-19選手権バーレーン2016でU-20ワールドカップの切符を取ることが重要になってきます。勝ち抜くためにはどのような戦いが必要になってくると考えますか?
(編集部注:グループステージを総当り戦で戦い、各グループ上位2チームがノックアウトステージに進出。準々決勝に勝利した上位4チームが来年韓国で行われるFIFA U-20ワールドカップの出場権を獲得する)

「理想は圧倒的に勝つことです。『アジアで日本は抜けている』と言わせたい。でも、過去の成績を見たら、それが簡単なことではないことが分かります。だからこそ、自分たちがうまくいかない時に簡単に失点するのではなく、よりチームで我慢したり、一人ひとりが体を張れるか。自分も含めて、その“耐える部分”がまだまだだと思うんです。そこができれば絶対に結果はついてきます」

――直近の4大会はU-20ワールドカップに出場できていません。そのプレッシャーは?

「ないですね。4大会連続で出ていたほうがプレッシャーは大きいと思いますよ」

――確かにそうかもしれませんね。では、堂安選手が勝負したいポジションはどこですか? U-16代表ではサイドバックでも起用されて、U-19代表では練習試合で小川(航基/ジュビロ磐田)選手と2トップを組んだり、さまざまなポジションで起用されています。

「前ならどこでもやれる自信はあります。ガンバではトップ下や右サイドをやっていますけど、左サイドもFWもできます。ボランチより前のポジションですね。とにかく前に仕掛けたいんですよ(笑)」

――ぜひ、世界の舞台で果敢に仕掛ける姿を見せてください。最後に、4年後はどのようなプレーヤーになっていたいですか?

「A代表に入っていたいです。ポルトガル代表のレナト・サンチェスは19歳でバイエルンに移籍して、A代表デビューを果たしています。それを見ていたら、『自分は何してんねん』って思うんですよ。でも、ガンバ大阪でまだ何も成し遂げていないのも事実。この夏に海外のクラブからオファーが来て、個人的には行きたい気持ちもありました。すごく行きたいけど、このまま行っていいのか。クラブや健太さんとも話をして、残ることを決断しました。海外挑戦は一つの夢ですけど、ガンバにプレーで恩返しするのも自分の通過点というか、やらないといけないことだと思ったんです。オファーがあったおかげで、また気持ちを新たに頑張ろうと思えました。もちろん、今でも海外にいくことは目標です。東京五輪の時にはA代表で試合に出て、チャンピオンズリーグにも出ていたい。4年後は東京五輪の主役としてピッチに立ちたいですね」

By 高尾太恵子

サッカーキング編集部

元サッカーキング編集部。FIFAワールドカップロシア2018を現地取材。九州出身。

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