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【コラム】「国内組の意地とプライド」で奮起する齋藤&槙野 日本代表の停滞感を打破するキーマンとなれるか

2016.10.02

初日の練習に参加した齋藤学(中央)と槙野智章(左奥) ©JFA

 すでに初戦・UAE戦(埼玉)で苦杯を喫している日本にとって、10月のイラク(埼玉)・オーストラリア(メルボルン)2連戦は2018 FIFAワールドカップロシア出場権獲得に向け、絶対に負けられない大一番。とりわけ、最終予選序盤2連敗とB組5位に甘んじているイラク相手の勝ち点3獲得が必須だ。その重要な一戦に向け、日本代表が2日から埼玉県内で強化合宿に入った。

 初日は山口蛍(セレッソ大阪)を除く国内組11人と、1日に行われたリーガ・エスパニョーラ第7節のアラベス戦でベンチ外となり、いち早く帰国した清武弘嗣(セビージャ)の計12人が参加。冒頭のミーティングでは今回から合流した手倉森誠コーチがミーティングで挨拶し、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督らメンバー全員に拍手を送られる場面が見られた。

 緊張感と和やかさが同居する中、17時半頃から練習が始まり、ランニング、体幹強化、複数種類のボール回しが約1時間行われた。スペインで凄まじい競争にさらされている清武が高度な技術を見せつける一方、前日のJ1リーグ・ヴァンフォーレ甲府戦で2ゴール2アシストと爆発し追加招集された齋藤学(横浜F・マリノス)もキレのある動きを披露。彼らを中心にチーム全体の士気は明らかに高まっている様子だった。

「1年10カ月くらい前から食生活を変えて、去年はすごく痩せました。そこからいろんなトレーニングをやって体重はブラジル・ワールドカップの頃くらいに戻ってきたけど、90分やってもすごく疲れるとかはないですね。マリノスでは自分が仕掛けることで何か変化を加えられると思って、すごく責任感を持ってプレーできている。ボールを取られることはあるけど、それでも何度も仕掛け続ける姿勢が今のパフォーマンスにつながっていると思うので、変わらずやり続けます」と齋藤は目を輝かせたが、その勝負への姿勢はUAE戦の日本には確かに不足していた部分。それを武藤嘉紀(マインツ)、宇佐美貴史(アウグスブルク)の代役に抜擢された国内組屈指のドリブラーがピッチ上で示してくれれば、チーム全体に活気が生まれるはずだ。

 国内組で燃えているのは攻撃陣だけではない。9月のUAE・タイ(バンコク)2連戦をケガで棒に振った槙野智章(浦和レッズ)も虎視眈々と出場機会を伺っている1人。すでに前回シリーズで吉田麻也(サウサンプトン)と森重真人(FC東京)がイエローカードを1枚ずつもらっていることもあり、両センターバックに頼り続けるわけにはいかないというチーム事情もあるのだ。

「僕は前回の代表でケガをしてピッチを離れて、一回リーグ戦出た時に再発って形になったけど、チームとA代表スタッフとつねに連絡を取りながら昨日の試合(ガンバ大阪戦)に照準を合わせてコンディションを上げてきました。一回代表を離れてみて、自分のプレーだったり、今の代表チームを外から見たうえで何をしないといけないのかを考える時間もあったんで、それを今回ぶつけないといけない。とにかく大事なのはチームとしてまとまること。難しい時間帯もあるだろうけど、まとまることだと思います。僕ら国内組の選手もJリーグを代表して選んでもらってる。『国内組の意地とプライド』ってのを見せないといけないと思ってます」と槙野は自分たちJリーグ所属選手の奮起の重要性を改めて強調していた。

 確かに6日のイラク戦に向けて、欧州組の大半は調整時間を十分には得られない。本田圭佑(ミラン)と長友佑都(インテル)の帰国は4日、他のメンバーが3日に帰国するが、岡崎慎司(レスター)、吉田、酒井宏樹(マルセイユ)の3人は夕方着で同日の練習には参加できない。そういう状況だけに、コンディションを考えれば国内組がより多くピッチに立った方がスムースに戦えるだろう。ハリルホジッチ監督はこれまで本田、香川真司(ドルトムント)、長谷部誠(フランクフルト)、吉田ら軸を担う選手を外さずに戦ってきたが、特にイラク戦は彼らよりいい状態の選手にフォーカスすべきではないか。その筆頭が齋藤であり、槙野だ。ピッチ内外で強烈なアピールを続けている2人が今回、日本代表の停滞感打破のキーマンになるかもしれない。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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