イエメン戦で先制ゴールをマークした小川 [写真]=JFA
前半終了のホイッスルと同時に漏れたのはため息だったか。AFC U-19選手権、イエメンとのグループステージ初戦に臨んだU-19日本代表は驚くほどの低パフォーマンスだった。もしかすると、スコアこそ0-0だが、このチームが結成されてからワーストの内容だったかもしれない。そんな前半を、FW小川航基(磐田)も「今までにないくらい自分たちのサッカーができなかった」と振り返る。
チームの売りは「縦パスを入れたらどんどん連動していくところ」だが、この試合は「個人突破だけになっていた」(小川)。初戦で硬くなった影響なのかイージーミスも頻発し、不用意なカウンターを受ける場面も作られていた。前半の日本からポジティブな材料を抽出するのは、ハッキリ言って無理だろう。それくらい悪い内容だった。
ハーフタイムには雷も落ちたようだが、実際に反省点は多々あった。すぐに改善できる部分として挙がったのは、拙攻が目立ったセットプレー。高さで優っているのはハッキリしていただけに、そこを活かさぬ手はない。後半開始早々の47分、日本は小さく繋ぐのではなくダイナミックに小川を狙うボールを2本続けて繰り出し相手を押し込むと、右サイドで堂安律(G大阪)の仕掛けからFKを獲得。「柔らかいボールでニア」(神谷優太/湘南)というボールは、走り込んできた小川の頭にピタリと合わさり、待望のゴールが生まれた。
「初戦ということでチームが硬くなるのは分かっていた。こういう試合は経験のある選手がやる必要がある」と小川は言う。前半まるで何もできなかったチームに命を吹き込むようなゴールだったのは間違いない。DF舩木翔(C大阪U-18)が「小川くんが決めてくれるとチームが乗る」と言う通り、ここから試合は完全な日本ペースに一変することとなった。
このあと1点を加えた日本は88分にも追加点。MF原輝綺(市立船橋高)のパスから抜け出した小川が「打とうかと思った」ものの、思い直してパス。これを原が押し込んで3点目となった。「角度もなかったし、少しでも可能性の高いほうを選んだ」と言うものの、シュートに向かうことに関しては常にどん欲な男だけに、少し意外な回答でもある。そこを突っ込んでみると、当然「自分が決めたいのはあります」と率直に認めたが、同時にこんなことも話してくれた。
「前日のミーティングでみんなで話したんです。個人がどういう思いでこの大会に臨んでいるのかとか、世界大会への思いとか、みんなに話してもらった。(3点目の場面で)中に人がいるのは分かったときに、そのときのことが思い浮かんだ」
根っからのストライカー気質である小川にパスを選ばせたのは、仲間たちが漏らした本音の数々だったということだろうか。要するに「この大会は絶対に勝ちたい」ということ。勝負強さを見せ付けた小川らしい先制点と、フォア・ザ・チームに徹した3点目。どちらもエースの看板にふさわしいプレーだったのは間違いない。
文=川端暁彦
By 川端暁彦