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【コラム】狙うはアジア制覇 U19日本、「ここから先」の戦いを東京五輪への布石に

2016.10.25

タジキスタン戦に臨んだU-19日本代表メンバー [写真]=JFA

 4年後への大きな一歩が踏み出された。AFC U-19選手権に出場しているU-19日本代表が、5大会ぶりにベスト4入りを果たした。これにより、来年5月に開催されるU-20ワールドカップの出場権を獲得したのである。

 24日に行なわれたタジキスタンとの準々決勝は、スケジュールのアドバンテージがあった。内山篤監督が率いる日本は、グループリーグを20日に終えた。一方のタジキスタンは、翌21日に最終戦を消化している。徐々に疲れが溜まっているなかでは、スケジュールのわずかな違いがパフォーマンスに影響を与えるものだ。

 もっとも、日本に油断はなかっただろう。2年前のU-19選手権の準々決勝でも、日本はスケジュールに恵まれ、北朝鮮よりも1日休養が多かった。しかし結果は、PK戦による敗退である。そもそもスケジュールは、大会前から分かっていたことだ。結果の言い訳にできるものではない。

 ここまで4試合を戦い、日本は無失点を継続している。幸運に恵まれるシーンがあったとしても、スキのない戦いをしていると言えるはずだ。

 勝つためには相手のゴールをこじ開けなければならないが、守備の安定は勝利への大前提だ。短期決戦における守備の重要性は、1月のAFC U-23選手権でも、先のリオデジャネイロ・オリンピックでも明らかになっている。先制点を許さないことでゲーム運びに余裕が生まれ、失点をしないことで大会を勝ち上がっていく勢いが高まることを、日本サッカーは改めて確認するべきである。

 そのうえで、再認識しておきたい事実がある。今大会の出場枠だ。

 来年のU-20ワールドカップは韓国で開催される。それに伴って、アジアの出場枠は「4」から「5」へ増枠されている。

 韓国はグループリーグで敗退しており、日本の戦いぶりには直接的に関係していない。ただ、韓国がオブザーバーのような立場だったのは、大会の行方に少なからず影響を与えたのではないだろうか。

 5大会ぶりに世界への扉を開いた選手たちは、2020年の東京五輪で中核を担う世代である。地元開催の五輪で狙うのは、グループリーグ突破ではない。ターゲットはメダルだ。だとすれば、アジアのベスト4で満足してはいけない。

 今回のU-19選手権は23名でチームが構成されているが、五輪は18人である。選手1人ひとりのフィジカル的な負担は、今回よりも大きくなる。そのなかで、グループリーグと決勝トーナメントで3試合ずつ、合計6試合を戦い抜かなければ、メダルには手が届かないのである。

 U-20ワールドカップの出場権を獲得しただけでなく、東京五輪への布石とするためにも、「ここから先」の戦いを“ボーナス”にしてはいけない。アジアの頂点を目指すのだ。

 日本サッカー協会の技術委員会が、どのような強化プランを用意するのかも大切だ。日本サッカーのカレンダーはシーズンオフが近づきつつあるが、U-20ワールドカップの開幕は7カ月後だ。ゆったりと構えている時間はない。

 日本と韓国は距離的に近い。2008年の北京五輪を控えたアルゼンチンは、直前のテストマッチで日本を訪れた。同じようなマッチメイクは、今回も実現可能だろう。

 技術委員会はすでに、予選突破後の強化プランを描いていると聞く。本大会の組み合わせ決定を待たなければならない部分もあるが、上位進出の裏付けとなるような強化を組みたてられるのか。「ここから先」が大切になるのは、技術委員会も同じだ。

 U-19日本代表がアジアの壁を突破したことで、17年はU-17、U-20両ワールドカップに出場できることになった。2015年はどちらも観戦するだけだったことを考えれば、アジアにおいて巻き返しを印象付けたシーズンである。

 その嚆矢となったのは、1月のU-23選手権だった。劣勢が予想された手倉森誠監督率いるチームのアジア王者就任が、日本サッカーに勢いをもたらし、プライドを呼び覚まし、自覚を促したのである。

 世代を問わずに結果を残していくことの重要性は、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表も例外ではない──。

文=戸塚啓

By 戸塚啓

スポーツライター。法政大学法学部法律学科卒。サッカー専門誌記者を経て、フリーランスとして20年以上にわたってスポーツ現場を取材。日本代表の国際Aマッチは、2000年3月からほぼ全試合を現地取材。

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