2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選・UAE戦の最関心事は、本田圭佑が出場するか否かだろう。重たいプレッシャーを受けるアウェイゲームを勝ち抜くために、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は彼の経験を必要とした。
起用法については不確定だ。本田がスタメンに名を連ねると、指揮官は明言していない。リーダーシップと経験を兼ね備える長谷部誠の戦線離脱により、本田や長友佑都らの存在感が必要となっているが……。
昨年11月のサウジアラビア戦は、後半開始からの途中出場だった。ACミランでの出場頻度は、4カ月前より悪化している。本田の起用について、ハリルホジッチ監督を慎重にさせる何よりの理由だ。
違う角度から考えてみる。
主力と見なされている選手のコンディション不良は、新たなタレントが台頭するタイミングと成り得るものだ。例えば、CSKAモスクワでプレーしていた23歳の本田が、31歳の中村俊輔に代わって南アフリカ・ワールドカップで攻撃を牽引したように、である。
これまでと同じ4-2-3-1のシステムで戦うとすれば、本田のポジションは2列目の右サイドになる。今回のメンバーならば、宇佐美貴史、久保裕也、浅野拓磨が候補者だ。原口元気は左サイドでの先発が濃厚として、ここでは加えていない。
所属クラブでのパフォーマンスでは、久保がリードしている。新天地ヘントでコンスタントに得点を挙げており、ゴールの感覚を研ぎ澄ました中で日本代表に合流している。心身の充実は迷いのない大胆なプレーにつながり、それが対戦相手に脅威を与える。今の彼は“使い時”だ。
浅野もゲームには絡んでいる。ブンデスリーガ2部で昇格争いを演じているシュツットガルトで、ここまで消化された25試合のうち21試合に出場している。2シャドーの一角やサイドアタッカーのポジョションで、持ち前のスピードと突破力を表現している。
物足りなさがあるとすれば、ゴール数だろう。リーグ戦ではここまで2ゴールで、最後にネットを揺らしたのは昨年11月だ。ただ、チャンスに絡むことはできている。パフォーマンスは悪くないだけに、代表でも力を発揮できるはずだ。
宇佐美は難しい立場にある。リーグ戦出場はここまで8試合にとどまり、ゴールも挙げていない。それでも、ハリルホジッチ監督は彼を招集した。
「日本代表を見ると、自分でボールを持って仕掛けて違いを生む選手が2、3人しかいない。それができる数少ない選手が宇佐美です。ボールを受けて自分で相手を抜いていける」
ハリルホジッチ監督はこう語り、「タイ戦でのジョーカー起用」を示唆している。守備組織に穴を開けるオプションとして、宇佐美のドリブルを活用するとのプランを描く。
22歳の浅野も、23歳の久保も、24歳の宇佐美も、世界的に見れば若手でない。国際Aマッチの出場試合数は少なくとも、国際的な経験は積んでいる。
あとは、ハリルホジッチ監督が決断を下すだけである。
文=戸塚啓