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【コラム】UAE撃破の原動力・今野の離脱で中盤の危機再び…タイ戦はどうする?

2017.03.25

日本代表は25日に埼玉県内でトレーニングを実施した [写真]=三浦彩乃

 久保裕也(ヘント)と今野泰幸(ガンバ大阪)の2ゴールを守り切って勝利した23日の敵地・UAE(アラブ首長国連邦)での死闘の直後、チャーター便で帰国の途に着いた日本代表。1日のオフを挟み、25日にタイ戦(28日)の地・埼玉で再始動したが、大一番の最大の功労者である今野が左第5趾基節骨骨折の重傷を負ったことが判明。同じく左ひざを負傷した大迫勇也(ケルン)、右足親指を痛めていた高萩洋次郎(FC東京)とともにチームを離脱することになった。

「折れてなきゃいいなと思っていたけど、試合の時から疑いはあった。ケガは誰も好き好んでやるわけじゃないし、サッカー選手としてすごく悲しいこと。本当に残念ですね。あと1試合あるし、ホームで難しい試合になると思うけど、とにかく勝ってほしい」と今野は悔しさをにじませつつコメントした。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は代わって小林悠(川崎フロンターレ)と遠藤航(浦和レッズ)を追加招集したが、中盤の手薄感は否めない。長谷部誠(フランクフルト)の穴を今野が十分すぎるほど埋めてくれていたのに、2人が揃っていなくなったのだから深刻だ。長谷部は今シーズン絶望、今野も過去に足の小指を骨折した香川真司(ドルトムント)、清武弘嗣(セレッソ大阪)の例を踏まえると実践復帰まで3、4カ月かかると見られるため、今回のタイ戦のみならず、6月のイラク戦(イラン)での復帰もかなり厳しいだろう。2人の先輩ボランチの闘争心を引き継ぐべき山口蛍(C大阪)が「いる選手で頑張るしかない」と語った通り、現有戦力で乗り切るしかないのが実情だ。

 ハリルホジッチ監督が次戦でシステムを「4-2-3-1」に戻すか、UAE戦と同じ「4-3-3」で行くかにもよるが、前者であれば山口と誰を組ませるかがポイントになる。有力候補者と言えるのは、追加招集の遠藤、UAE戦で香川と交代した倉田秋(G大阪)のいずれかだが、1月まで在籍したセビージャでボランチに入ることもあった清武、あるいは所属のハンブルガーSVでボランチを務める機会も多い酒井高徳も考えられる。

「(山口を含めて)一緒にやっている選手は多いですし、そういう意味ではすんなり溶け込めるのかな」と遠藤は言う。確かに彼は2015年の東アジアカップ(武漢)や2015年11月のカンボジア戦(プノンペン)などで山口とコンビを組んでいて、その感覚を思い出しながらプレーできるだろう。ただ、この日ハリルホジッチ監督から「クラブでもボランチをやってほしい」と要望を出された通り、浦和でリベロをやっている分、運動量や寄せの部分に不安がある。中盤で奪った後のパス出しもすぐに出せるかどうか分からない。そこを指揮官がどう考えるかだろう。

 倉田に関しては、豊富な運動量と攻撃センスを考えると山口と組ませても面白い。本人もUAE戦で背番号7をつけたことで、G大阪の大先輩・遠藤保仁のプレーを少なからずイメージしたのではないか。ただ、倉田は最終予選先発経験がなく、山口とボランチを組んだこともない。そのあたりはやはり未知数だ。彼を投入する場合には、やはりUAE戦と同じ「4-3-3」のインサイドハーフの方がベターではないか。

 清武に関しては、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ人指揮官の中では香川に代わる先発候補と位置付けている可能性が高く、ボランチ起用の確率は高くないかもしれない。ただ、清武と山口であれば、2012年ロンドン・オリンピック、ハノーファー、C大阪と長い時間ともに戦った経験があり、お互いにやりやすいはず。清武が主に攻撃、山口が主に守備と役割を明確に分けながらプレーできるのもメリットだろう。一方で守備力の問題が生じる。

 守りを考えれば、むしろドイツ・ブンデスリーガでタフに戦っている酒井高徳の方がいい。本人も「『ない』とは自分で言っていますけど、必要とされたり、しなければならない状況が来ればもちろん準備したい。与えられたところでやるのはプロとしての仕事。1つの強み」と強調しているだけに、守備を第一に考えるなら、山口・酒井高コンビは有効だろう。

 対戦相手のタイもオーストラリア戦で引き分けに持ち込むほど底力があるが、今回は移動を伴うアウェイ戦。23日にホームでサウジアラビアとタフな戦い(0-3で敗戦)を強いられていて、かなり厳しい状態に違いない。そういう相手に主導権を握って勝とうと思うなら、「4-3-3」を踏襲し、山口のアンカーの前に香川と清武をインサイドハーフで置くといった形も効果的だろう。香川を休ませて、倉田・清武といったかつてC大阪で一緒に戦ったコンビを組み合わせていくのも面白い。

 いずれにしても「タイに勝たなければUAEに勝った意味がなくなる」という指揮官の言葉通り、次戦で勝ち点3を奪うことがすべて。そのためにも、中盤のベストバランスを見出すこと。それが極めて重要である。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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