「ミドルシュートは大事。1本決めたいですね」
FW原口元気(ヘルタ・ベルリン)の一言が頼もしく響いた。26日、日本代表は2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選のタイ戦に向けて練習を実施。相手は勝ち点1の最下位と実力差はあるが、決して油断はできない。原口は、自身のポジショニングが一つのポイントになると話す。
「相手がどう出てくるか分からないけれど、引いてくるならサイドがポイントになる。僕のポジショニングや張るタイミング。ただ、張りすぎていても、右サイドからの攻撃に遅れてしまう。どのタイミングで中に入るのか、入った時にサイドバックがいつ上がってくるのか。そこはもう一度、話し合いたい」
快勝したUAE戦の前にも選手間でのコミュニケーションは積極的に行われたという。「ポジションが近い選手と話し合った。選手同士でのすり合わせ作業は、試合を重ねるごとに質が高まっている」。実際に「4-3-3」の左FWに入った原口は、同サイドのMF今野泰幸(ガンバ大阪)、DF長友佑都(インテル)とうまく連係しながら攻守に渡り奮闘。「オマル(アブドゥラフマン)の受け渡しやサイドバックの攻め上がりにどう対応するか。中盤とサイドバックを見ながらうまい具合にできた」と手応えを感じていた。
タイは負ければ後がないという崖っぷちの状態。前がかりで仕掛けてくる可能性もあるが、おそらく今回も人数をかけて守りを固めてくるだろう。仮に日本がボールを持たされる展開となった場合の打開策は何か――。原口はミドルシュートが効果的な手段の一つだと主張した。
ミドルシュートは今季、原口が取り組んでいる課題の一つでもある。昨年末に話を聞いた時、彼はこんなことを言っていた。「ヘルタでは真ん中にスペースがないし、走り込んでもボールが入ってこない。武器である運動量を落とさずに数字を残すためには、ミドルシュートのクオリティを上げることが必要。僕のようにサイドでプレーしながら結果を残している選手は、ミドルシュートで点を取っている」。その精度を高めるために、原口は日々のシュート練習を欠かさなかった。
UAE戦でもミドルレンジから積極的にゴールを狙う姿勢を見せた。前半終了間際、MF香川真司(ドルトムント)のリスタートから原口がペナルティエリア手前まで一気にドリブル突破。その勢いのまま放った右足でのシュートは、惜しくも枠の左に外れた。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もまた、2次予選時から「ミドルシュートが少ない」と指摘している。アジアの引いて守る相手に対して、遠目からでも積極的にシュートを放つ意識を求めてきた。しかし原口が、「ゴール前に入れて、というだけではバリエーションが少ないと思う」と語るように、ペナルティエリア外からシュートを打つ数はまだまだ物足りない。タイ戦においては、「(自分は中にも)入っていけるし、ミドルを打てるとなるとキックフェイントも利いてくる」と、原口を中心に多彩な攻撃で相手ブロックを揺さぶりたいところだ。
持ち前の運動量や鋭い仕掛けにミドルシュートという武器が加われば、勝利を手繰り寄せるだけではなく、自分自身の成長につながるはず。「得点が一番チームを救えるだろうし、一番分かりやすい結果なので、そこは求めていきたい」。最終予選で4得点を挙げている背番号8が、頼もしく攻撃陣を引っ張る。
取材・文=高尾太恵子