27日にトレーニングを行った清武弘嗣 [写真]=三浦彩乃
2018FIFAワールドカップロシア出場へより大きく近づくために、28日の最終予選第6戦・タイ戦(埼玉)は絶対に勝ち点3がほしいゲームだ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も前日会見で「最終予選1戦目で負けたら突破できないと言われたが、本当に最終予選突破候補のところまで来た」と気持ちが高揚している様子を見せた。その反面、「少しの気の緩みで受け入れられない結果を招く」とも強調。2015年6月の2次予選初戦・シンガポール戦(埼玉)の悪夢を繰り返さないように再三再四、警鐘を鳴らしていた。
その後、試合会場の埼玉スタジアムで最終調整に臨んだが、やはり気になるのはタイ戦のスタメンだ。今回はUAE(アラブ首長国連邦)戦で的中した「4-3-3」、これまで積み重ねてきた「4-2-3-1」の両方が考えられる。前者であれば、中盤は山口蛍(セレッソ大阪)がアンカーに入り、インサイドハーフに香川真司(ドルトムント)と清武弘嗣(C大阪)のコンビが有力。後者であれば、所属のハンブルガーSVでしばしばボランチを務めている酒井高徳が山口とボランチコンビを組む可能性が浮上。トップ下は香川か清武になりそうだ。現状では後者の可能性が高いという見方が大勢を占めている。
一方、大迫勇也(ケルン)離脱の1トップは岡崎慎司(レスター)が最有力だが、高さのある本田圭佑(ミラン)の抜擢もあり得る。指揮官の最終判断が待たれるところだ。それ以外の守備陣と、久保裕也(ヘント)&原口元気(ヘルタ・ベルリン)の両サイドは不動だろう。
いずれにしても、UAE戦で出番なしに終わった清武は今回、どこかのタイミングでピッチに立つはずだ。今年2月にスペインの強豪・セビージャから古巣・C大阪に復帰した彼は5年ぶりに「国内組」として代表戦に挑むことになる。
「(代表への)入り方は今まで通り変わらないですね。飛行機の移動がなくなったくらいで、コンディションはいいですし」と清武は淡々と言う。セビージャ在籍時から抱えていた右足首痛も癒え、Jリーグでも北海道コンサドーレ札幌戦とサガン鳥栖戦の2試合に出場。複数回の決定機を迎えながらゴールが奪えていないのは残念だが、キラリと光るチャンスメークは依然として健在だ。その傑出した才能を国際舞台で出せるのは、今や代表戦しかないのが実情だ。
「スペインでやるようになってから、こっちの人はパスを出したら絶対1人で1枚をはがすか1回こねる。自分がドイツや日本でやっていた感覚で、ダイレクトではたいて動き直そうとするとボールロストにつながってしまう。僕は意思疎通の問題だと思うけど、ロストと取られてもしょうがない。1人ではがすことをしないとこのチームでは生き残っていけない」と清武は昨年末、スペインサッカーとの価値観の違いに直面し、辛い胸の内を語っていた。こうした苦しみも悔しさもすべてをひっくるめてこの先の国際舞台に生かさなければ意味がない。日本代表ならば意思疎通の問題もないし、お互いに生かし生かされるというサッカー観も共通している。彼のよさが最も発揮できる環境なのは間違いない。
「日本代表にはボールを持てる選手が沢山いる。真司君の技術は高いですし、蛍や今ちゃん(今野泰幸=ガンバ大阪)もボールを持てる。明日のタイ戦はホントに中盤の三角形が大事になってくる試合。その三角形の中でボールを引き出し合いながら、相手をプレッシャーに来させながら、というふうにしていかないといけない。真司君とはタイプが似ていますし、考えていることも似ているとは思うので、意思統一はできると思います」と清武も香川との競演に強い意欲を示していた。
おそらく試合の入りはダブルボランチとトップ下1枚の正三角形でスタートするだろうが、状況によっては清武と香川、山口が逆三角形になる中盤の形にシフトすることも考えられる。タイという相手に対して、日本屈指のダブル司令塔がどんな連携を見せるのかはぜひ確認しておきたいところだ。2011年8月の日韓戦(札幌)で国際Aマッチデビューを飾って以来、香川の背中を追いかけ続けてきた清武にしてみれば、一緒に攻撃を組み立てる役割を担えれば理想的ではないか。そうすれば、右サイドの久保、左サイドの原口という推進力のあるアタッカー陣もより思い切ってゴールに迫れるだろう。
Jリーグに復帰した清武がどんな状態なのかは多くの人々が懸念するところ。国際舞台に戻って、昨年11月のサウジアラビア戦(埼玉)同様の輝きを放ってくれれば、今後を考えても安心だ。彼には卓越した戦術眼と高度なテクニックを駆使して、日本の攻めにしっかりとメリハリをつけてほしいものだ。
文=元川悦子
By 元川悦子