タイ戦でチーム3点目をマークした久保裕也 [写真]=三浦彩乃
いつも以上に、クールな男が喜びを爆発させた。28日の2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選で4-0とタイに快勝した日本代表。UAE戦に続いて先発出場したFW久保裕也(ヘント)が1ゴール2アシストの活躍で、強烈に存在感をアピールした。
勢いに乗る23歳は、先輩のお膳立てだけでは終わらなかった。57分、右サイドでスローインを受けた久保は自らゴール正面にボールを運ぶと、ペナルティエリア手前から左足を一閃。「意外とフリーだったし、すごく落ち着いていた」と左足の一振りで射抜いた。
「ニアというか、右側を狙っていた。あそこまでうまくいくとは思わなかったですけど」
ゴール右上を打ち抜くミドルシュートで精度の高さを見せつけた。ネットを揺らしたことを確認すると、ジャンプしながら力強くガッツポーズ。埼玉スタジアムに駆けつけた約6万人の観衆を沸かせた。背番号14は、「ホームで(のゴールが)初だったので、うれしかったです」と素直な気持ちを明かす。報道陣の前で笑顔を見せることが少ない久保も、ゴールシーンを振り返った時ばかりは少しだけ微笑んだように見えた。
この日の攻撃の中心には久保がいた。8分にはMF香川真司(ドルトムント)の先制ゴール、そして19分にはFW岡崎慎司(レスター)の記念すべき代表通算50得点目をアシスト。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督から見ても納得の出来だったのだろう。久保がベンチに下がる際、ポンポンと頭をなでる仕草が印象に残った。
2試合で2ゴール3アシスト。無視することのできない数字に、周囲は「新たなエース候補誕生」と評価する。それでも久保のスタンスは変わらない。浮かれることも、ブレることもない。試合後の取材対応で聞こえてきたのは「まだまだ」、「もっともっと」という彼らしい言葉だった。
「前回(昨年11月)よりはチームに馴染めてきているのかなと。でも、もっともっとフィットすると思います。崩しの部分も、回しの部分ももっと良くなる。改善点はいろいろあると思います。足元もそうですし、裏への抜け出しももっとタイミングが合えば、チャンスの回数を増やせるはず」
一方で、右サイドでの仕掛けには一定の手応えをつかんだようだ。11月のサウジアラビア戦後に「右サイドは課題。まずはイメージを持ちたい」と語っていた久保が、2連戦を終えた今、「右サイドでの仕掛けのイメージは大分できてきた」と話す。「目に見える結果が出て良かった。でも、これから」という姿には自信が漂っていた。
競争が存在してこそ、チームは強くなる。久保は「自分は突き上げる立場」と、この2試合でベテラン勢を大いに刺激したが、本人にとっては“まだまだ”足りない。「もっとピッチで存在感を出せるようになりたいですし、中心的な選手になりたい。そういう意味ではまだまだ」。確かな爪痕を残した若きストライカーが、さらなる高みを目指す。
取材・文=高尾太恵子
By 高尾太恵子
サッカーキング編集部