「イタリア戦に出たらゴールを決めてきます!」
イタリア人指揮官のマッシモ・フィッカデンティに、そう宣言してきたFW田川亨介(サガン鳥栖)。まさに、そのイタリア戦で出番が訪れようとしている。U-20日本代表は27日、FIFA U-20ワールドカップ韓国2017・グループD最終節に臨む。勝てば2位以上が確定、引き分け以下なら他グループの結果次第で決勝トーナメント進出が決まる一戦だ。
ここまでの出場時間はゼロ。それでも「必ずチャンスはある」と、田川は準備を怠ることなく出番を待ち続け、イタリア戦前日の練習でFW小川航基(ジュビロ磐田)が抜けた2トップの一角に入った。「ここで結果を残すか、残さないかで本当に変わってくる。自分の役割もそうですけど、チームが勝つことを一番に考えて、自分ができることを精一杯やっていきたい」。先発が濃厚となり、気持ちが高ぶっているようだ。
ただ、懸念点が1つある。おそらくコンビを組むのはFW岩崎悠人(京都サンガF.C.)になるだろうが、どちらもスピードを生かした背後への抜け出しを得意とするタイプ。国内での最終合宿中もゴール前での動きがかぶる場面がしばしばあり、互いの連係がポイントになる。岩崎が「田川も背後に抜けたいと思うので、そこは見ながら。僕が落ちてスペースで受けながらやれればいい」と言えば、田川に関しては「タイプは似ているんですけど、大丈夫だと思います。連係面は問題ないです」といつもの爽やかな笑顔を見せた。なんとも楽観的というか、頼もしいというか。その前向きさが田川のいいところでもある。
本来であれば、エースの穴埋めにプレッシャーを感じてもおかしくはない。実際に「イタリア戦ではルーズボールの競り合いも大事になってくる」と、これまで小川が担っていた役割を意識した発言もしていた。何より田川にとっては初の世界舞台でもあるわけだが、「緊張はそんなにないですね」と楽しみで仕方がないといった様子だ。ウルグアイ戦の翌日にこんなことを言っていた。
「こういう体験はなかなかできないんで。世界を相手にどこまでできるか。早く試合に出てみたい」
目の前であれだけの熱い戦いを見せられたら、プロとしてピッチに立ちたいという欲が出てきて当然だろう。2試合をベンチから見守り、「だいぶ悔しさもある」。その悔しさをぶつけ、実力を試す時が来た。得意の左足でネットを揺らし、「まあ、がんばれよ」と笑ったフィッカデンティ監督を見返してやろうではないか。
取材・文=高尾太恵子