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【コラム】ゴールへの姿勢で代表けん引へ…エース候補・大迫の野心「今は結果が一番大事」

2017.05.29

大迫は29日に合流し、個別トレーニングを行った [写真]=元川悦子

 6月の日本代表2連戦(7日・シリア戦=東京、13日・イラク戦=テヘラン)に向け、28日から千葉県内で強化合宿をスタートさせた日本代表。初日はサプライズ招集の加藤恒平(REC・ペロエ・スタラ・ザゴラ/ブルガリア)を含む欧州組10人で始動したが、2日の29日は大迫勇也ケルン)が合流。11人でトレーニングを行った。

 午前中はボールを一切使わず走りメインの内容。午後からは初日合流組がランニング、ボールを使ったコーディネーショントレーニング、30秒間の4対1、ミニゴールを4つ使った4対4のゲームなどを1時間半にわたって消化。右足首負傷を抱えている乾貴士(エイバル)が4対1の前に全体練習を切り上げるアクシデントがあった。日本代表のメディアオフィサーが「その後も走っていたのでチーム離脱はないと思います」と説明していたが、もともと抱えていたケガだけに不安が募る。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も慎重にならざるを得ないかもしれない。

 そんな傍らで、大迫は1人黙々と走りを繰り返した。最初は軽いジョギング程度だったが、徐々にスピードを上げ、最終的には強度がかなり高まった。彼にとっては2年ぶりの欧州組合宿だが「やっぱ走るなと。予想通りの練習でした」と苦笑するしかなかった。

 昨年11月のオマーン戦(カシマ)で1年5カ月ぶりの代表復帰を果たして以来、大迫の評価はうなぎ上りだ。2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選の天王山とも位置づけられた3月のUAE(アラブ首長国連邦)戦(アルアイン)でも先発1トップに陣取り、今野泰幸(ガンバ大阪)の2点目につながるヘディングでの巧みな落としを見せた。だが、試合終盤に相手と接触して負傷。そのままチームを離れる羽目になった。4月はその影響でケルンでもキレを欠き、5月に入ってからは風邪で体調を崩した。そんな苦しみもあったが、今シーズンのブンデスリーガ最終節・マインツ戦で1ゴール1アシストと大爆発。リーグ戦7ゴールという渡独後最多得点でシーズンを締めることができた。

「いい流れでスムーズに来れましたけど、代表は別なんでね。やり方も雰囲気も違うし、切り替えてやりたい。今季7点って数字も正直、もっとほしかった。FWは2ケタは取らないと。今シーズンの残りは代表戦しかないので、しっかり結果を出したいですね」と大迫は得点への野心を強く押し出した。

 2ケタゴールというのは、代表1トップのライバル・岡崎慎司(レスター)がマインツ時代に2年続けて残した結果。加えて代表通算50点の先輩と、5点という自分には大きな実績の違いがある。それを埋めるためにも、ここからゴールを量産していくしかない。大迫が危機感を覚えるのも当然のことだろう。

「代表で得点を増やすには、やっぱりゴール前に入る回数を増やすこと。あとはシュートの意識を普段以上に持つことですかね。それが1トップに求められると思うし、ゴールに向かっていく姿勢を出すことでチームに勢いが増すから。代表全体としてやるべきことは少しずつ整理されてきているかなと思いますけど、もっと結果がついてくれば、個人個人もっと自信を持ってプレーできる。今は結果を出すことが一番大事じゃないかな」とエースFW候補筆頭の男は自分に言い聞かせるように語っていた。

大迫勇也

今季ブンデス日本人最多7ゴールを決めた大迫。“相棒”のモデストとケルンの攻撃をけん引した [写真]=Getty Images

 大迫はケルンで常日頃から得点のツボを心得ているフランス人FWアントニー・モデストとコンビを組んでいる。今シーズンのブンデスリーガで25ゴールを叩き出した絶対的点取屋の一挙手一投足を目の当たりにして、「あいつは得点のためにゴール前でしっかりとパワーを溜めておくってことをすごく割り切ってやる選手。全部が全部頑張るわけじゃなくて、うまくサボりつつ、ゴール前で100で行ける準備も大事。そこは頭に少し入れることも必要かな」と実感しているという。

 そのモデストも最初からブレイクしていたわけではない。「彼もホッフェンハイム時代は苦労していた。何かをつかむ時は必ずきっかけがある。それをつかんだんだと思う」と岡崎もしみじみ話していたが、大迫も同じようなきっかけを見い出せばいいのだ。

 前回の2014年ブラジル・ワールドカップの時は1年前の東アジアカップ(韓国)で代表入りのチャンスをつかんだ大迫だが、ロシアの1年前である今回は絶対的エースを座を確立すべき時期に来ている。若い久保裕也(ヘント)のベルギーでのゴール量産、無名だった加藤の代表抜擢といった刺激を糧に、この6月の2連戦では目覚ましい活躍を求めたい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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