今大会全試合に先発出場した岩崎悠人 [写真]=佐藤博之
エースの看板を背負う選手が姿を消した後で、FW岩崎悠人(京都サンガF.C.)は葛藤の中で戦い続けてきた。FIFA U-20ワールドカップ韓国2017がベスト16で幕を閉じてから、岩崎はその胸の内を明かした。別に愚痴をこぼすというのではなく、「自分の力不足」という前提に立った上で、悔恨の言葉も漏らした。
「今大会は影の動きが多くて、なかなかシュートを打てなかったり、ゴールに絡むシーンがなかなか作れなかった。フリーランだったり、起点を作る動きばかりになっていて、もう少し自分で輝けるプレーも磨いていかないといけない。やっぱり世界は大事な時に決めてくる」
岩崎は本来、影となることをいとわない選手である。潰れ役上等とばかりに献身的に走り回ってこその選手とさえ言える。ただ、小川航基(ジュビロ磐田)不在の中で「自分がやらなくちゃいけない」という意識を背負って走り続けるうちに、少し迷いも生じてきていた。守備で全力を尽くし、組み立てに対して走り出すことに全力を尽くした上で、ゴール前で精度と迫力を出していくのは難しさがあったのも事実だろう。本来は小川が担ってきたフィニッシュに関する責任感も負う中で、「見えないプレッシャーもあった」と振り返る。
「自分が点を取ってチームを勝たせるというのもチームのためですけれど、でもちょっと違うチームへの貢献の仕方をしなくてはというところもあって……。だいぶ葛藤しました」
その献身的なランニングプレーなしに日本の16強があり得なかったことは確かだが、ベネズエラ戦も決してノーチャンスではなかっただけに、「ゴール」という結果が付いてこなかったことについては思うところもある。岩崎の言葉を借りれば、FWとしての「光の動き」とのバランス、あるいは両方を極めるだけの力を持つことが岩崎が大会を通じて抱え込んだ大きな課題である。
「自分で仕掛けて全部行っちゃうくらいのアグレシッブさというか、推進力をもっともっと出していきたいと思いましたし、磨いていきたいと思いました。そういうところはもっと逆に出さないといけなかった」
小川というエースの影に徹した仕事をしていれば、今大会の岩崎がもっと輝いた可能性はある。「光の動き」についても、言うなれば「月」としての輝きが見られたかもしれない。ただ、岩崎の今後の成長を思えば、頼れる先輩の相棒を失う中で、前線の柱としての責任を負い、そのプレッシャーや自身の役割について葛藤しながら戦った経験は、今後のサッカー人生における財産となるに違いない。
「影の動き」がしっかりできるのが岩崎の魅力だ。これは大前提。その上で、さらにアタッカーとしての「光」を求めての変化を志す。次は京都に戻り、明治安田生命J2リーグでの戦いが待っている。「光」の部分で得難いモノを持つ偉大なレジェンドたちも所属するチームで、もう一度地に足を付けながら、2020年の東京オリンピック、そしてその先のステージを目指す戦いを始めることになる。
文=川端暁彦
By 川端暁彦