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【コラム】合流初日に単独練習…原口元気、周囲の雑音を封印し「イラク戦だけに向き合う」

2017.05.31

代表合宿合流初日は単独でのトレーニングとなった原口元気 [写真]=元川悦子

 28日から千葉県内で行われている日本代表の欧州組合宿も4日目に突入した。

 31日も2部練習で、午前中は右足首痛の乾貴士(エイバル)を含む10人が参加。乾はボールを使ったトレーニングを回避したものの「走るのは問題ありません」とスピードを上げたランニングを実施。「あとはステップの部分。復帰は早ければ早いほどいいけど、焦ってはいません」とじっくり取り組んでいることを明かした。今の状態であれば、6月13日のイラク戦(テヘラン)は問題なさそうだ。

 一方、午後練習は彼ら10人に休養が与えられたため、この日の昼に合流した原口元気ヘルタ・ベルリン)が1人だけでトレーニングすることになった。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督ら11人のスタッフに囲まれる中、21分間走やタッチラインを20秒・ゴールラインを30秒で走るインターバルトレーニングなどを1時間強こなした彼は「やりにくいですよね。ずっと監督も見ているでしょ」と苦笑い。それでも「頑張れ~」と声をかけてくれた少年たちに即席サイン会を開くなど、普段通りの自然体を心がけていた。

 その原口だが、今シーズン、ブンデスリーガでは31試合出場1ゴールという結果に終わった。シーズン開幕時は凄まじいハイパフォーマンスを見せ、ヘルタ・ベルリンのパル・ダルダイ監督から高い評価を受けていたが、シーズンが進むにつれてペースダウン。出場機会が大きく減るなど、やや不完全燃焼感の残る終わり方になってしまった。

「まあ難しい部分が多かった(苦笑)。やっぱり自分自身は本当にサッカーに集中できないといけないなと思ったし、そうしなければ本当にいいプレーはできないなと。それができていなかったってわけではないですけど、最後の方はやっぱりそこが大事だなと感じていましたね」と複雑な胸中を明かす。

 集中を阻害する要素になったのは、もちろんドイツ国内外でヒートアップした移籍報道だ。昨年12月頃からヘルタ・ベルリンとの契約延長問題が取り沙汰され、シーズン終了前にはプレミアリーグへの昇格を決めたブライトンへの移籍が決定したと報じられるなど、とにかく雑音が多かった。残留か移籍かで迷う本人の思いが正確に伝わらないことも多く、原口は苛立つことも少なくなかったはずだ。

「自分が思っていないこととか、推測でいろんなことが書かれたりとか、なかなか難しかったっていうのは正直ありましたけど、まあでもそれは関係ない。本当にどんなことがあっても自分自身と向き合ってくしかないなと思いましたね。ここ(代表)に来たからには、イラク戦が終わるまで何も考えずに自分のサッカーと代表だけに向き合って、イラクに勝つことだけ。シンプルですね」と、本人はすべてを封印して、日本の勝利に全身全霊を注ぐ覚悟だという。

 2018 FIFAワールドカップロシア アジア最終予選前半戦に4試合連続ゴールを奪うなど、大黒柱と言っていい活躍を見せた原口だったが、前回の3月2連戦(UAE・タイ)ではゴールに直結する仕事を見せられなかった。左サイドに陣取る彼よりも、2試合で2ゴール3アシストという目覚ましい結果を残した久保裕也(ヘント)のいる右サイドの方が注目を集めることになった。それに関してはいい刺激を受けているようだが、やはり原口という男は「自分が日本をロシアへ連れて行く」という気持ちが人一倍強い選手。今回こそ左で輝きたいという思いは少なからずあるだろう。

 そのためにも、新戦力・乾との競争に勝たなければいけない。乾は5月21日のバルセロナ戦で2ゴールを叩き出すなど絶好調。ハリルホジッチ監督の寵愛を受ける原口といえども、うかうかしてはいられない状況だ。

「乾君とはブンデスで会ったりはしていましたけど、代表で一緒にやるのは初めてかもしれない。もともと見ていてすごく楽しい選手だし、技術で言ったら本当に叶わない領域にあると思っています。楽しみな反面、競争もありますけど、僕とはよさが違うので、自分は自分のできることをやるだけですね」と意気込みを新たにしていた。

 イラク戦で最終予選前半戦のような輝きを放つことができれば、原口はさらなる成長への一歩を踏み出せる。3シーズン目のヘルタ・ベルリンで味わった悔しさを晴らすうえでも、代表で「得点の取れる選手」だということを改めて示してほしい。原口元気にはそれだけの底力があるはずだ。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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