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【コラム】ボス体制ではインサイドハーフが主戦場か…香川真司、ドルトムント6年目をどう戦う?

2017.07.17

ドルトムントとの契約を2020年まで延長した [写真]=Getty Images

 ピーター・ボス監督率いる新体制へと移行したドルトムントが日本に凱旋。15日には5万8000人の大観衆が集まった埼玉スタジアム2002で「明治安田生命Jリーグ ワールドチャレンジ2017」浦和レッズ戦に挑んだ。

 ピエール・エメリク・オーバメヤン、アンドレ・シュールレら主力級がズラリと並び、4-3-3の布陣でスタートしたが、1週間前に始動したばかりでまだ動きが重い。24分に浦和のエース・興梠慎三に先制弾を許す苦しい展開を余儀なくされた。

 前半を0-1で折り返した後半。ボス監督はフォーメーションを3-4-2-1へとスイッチ。最前線にアレクサンデル・イサク、2列目にエムレ・モルらフレッシュな面々を置いて巻き返しを図った。その期待に応えた19歳の若きトルコ代表・モルが切れ味鋭いドリブルから立て続けに2点をゲットし、逆転に成功する。その後、遠藤航に1点を返されたが、最後に勝負を決めたのはシュールレ。昨シーズンはケガが多く、思うような働きができなかっただけに、今シーズンへの期待が高まった。

モル(写真左)の2得点で逆転勝利を収めた [写真]=Getty Images

 3-2で逆転勝利した仲間の一挙手一投足をベンチで見守っていた香川真司は「自分に当てはめながら試合を見ていた」と語った。前半のシステムの場合、香川が入るのはセバスティアン・ローデとゴンサロ・カストロが入ったインサイドハーフのいずれか。トーマス・トゥヘル体制の過去2年間でもしばしば使われたポジションだ。

「相手も引いていましたし、なかなか前にスペースがない中で渋滞していた。やっぱりボールの出し入れであったり、自分が下りて受けに行く必要があったと思う。どういうタイミングかで中に1回ボールを入れないとフリーの状況は生まれてこないし、局面を展開できない。そこの動きの質やコンビネーションを高めていく必要がある」と具体的な問題点を指摘した。

 一方、後半の布陣の場合だと、大活躍したモルの入った右サイドが有力だろう。モルは完全にウイング的に外に張るのではなく、中央に絞って右サイドバックのウカシュ・ピシュチェクに高い位置を取らせ、自らはトップ下のような位置でテクニックを前面に押し出した。こういう役割なら香川も自信を持ってできるはず。ただ、伸び盛りのモルやウスマン・デンベレ、クリスティアン・プリシッチのような若手との競争に勝つことが活躍の大前提になってくる。

「エムレの持ってるものは素晴らしいし、それをしっかりと証明した。ああいう若い選手が沢山いるので、経験ある僕は彼らを生かしながらやってかなきゃいけない。融合がしっかりできればうまく戦っていけると思う」と攻撃陣ではカストロに次ぐ年長者となった自覚と責任を感じながら、ドイツの名門をしっかりとけん引していくつもりだ。

出場は叶わなかったものの、母国のファンから温かく迎えられた [写真]=Getty Images

 重責を果たす前にやらなければならないのが、左肩脱臼の負傷を完全に治すこと。浦和戦前日練習でも最初のアップだけは他メンバーと一緒にやっていたが、6対3のゲーム形式が始まると全体練習から離れ、フィジカルコーチとともにダッシュやボールコントロールをするにとどまった。

「今はチームのドクター、代表のドクターを含めて話し合いながらやっている。アジアツアーが終わって(来週後半からの)2次キャンプで合流できればいい」と本人は言う。ドルトムントは18日のインターナショナルチャンピオンズカップでミランと戦った後、欧州に戻って22日にボーフム、28日にエスパニョール、8月1日にアタランタとのテストマッチを消化することになっている。このいずれかのタイミングで試合に出場できていれば、8月5日のドイツ・スーパーカップ、バイエルン戦での復帰も現実味を帯びてくる。そのあたりでボス監督率いる新チームの骨格も固まりつつあるだろう。19日のブンデスリーガ開幕戦・ヴォルフスブルク戦でのスタメンを視野に入れるなら、いち早く早くピッチに立てる状態まで持っていきたいところだ。

 親日家と言われるボス監督との信頼関係構築もここからが本番だ。

ボス新監督はジェフ市原でのプレー経験を持つ [写真]=Getty Images

「ボス監督には最初の挨拶だけは日本語でされたんですけど、基本的にあんまり日本語は話せないということで(笑)。でも選手のコミュニケーションを含めて素晴らしい方だと日本でやった方々から聞いています。監督のサッカーであったり、ビジョンもすごく好きですし、これからすごく楽しみです」と香川は現時点で指揮官の人間性とチームマネージメントを前向きに受け止めている。

 前任のトゥヘル監督とは良好な関係を構築しきれなかった嫌いがあっただけに、今回こそ自身の存在価値をしっかりと認めてもらうことが肝要だ。それなくして、彼が強く求める成功はつかめない。

 昨シーズンはリーグ戦21試合出場1得点という数字で、本人も不完全燃焼感が強かったに違いない。ドイツ過去5年間で1度しか果たしていないいシーズン2桁得点に再び到達すべく、より攻撃的な役割で起用してもらえるように、ボス監督やチームメートに働きかけていくこと。それがベテランの域に差し掛かった香川真司のテーマと言っていい。

文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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