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U20日本、完全アウェイでカンボジアに苦戦も…遠藤の1ゴール1アシストで連勝

2017.07.22

1ゴール1アシストの活躍で勝利に貢献した遠藤渓太 [写真]=佐藤博之

「カーンボジア! カーンボジア!」

 実数でどのくらい入っているかは定かでないのだが、現出していた雰囲気は紛れもない「アウェイ(異国)」。7月21日に行われたAFC U-23選手権予選第2戦。日本は地元のカンボジアと対戦し、予想どおりの完全アウェイのムードの中で、予想以上の苦戦を強いられることとなった。

 日本の先発はU-20ワールドカップメンバーをベースにしつつ、初代表のFW中坂勇哉(ヴィッセル神戸)、久々の復帰だったDF柳貴博(FC東京)、飛び級招集の大型MF伊藤洋輝(ジュビロ磐田U-18)、そして世界大会では出番のなかったGK波多野豪(FC東京)といった選手も先発に名を連ねるラインナップだった。

伊藤洋輝

先発した18歳の伊藤洋輝。第1戦では途中出場で1ゴールを記録した [写真]=佐藤博之

 序盤からペースを握ったのは日本。MF市丸瑞希(ガンバ大阪)を軸にボールを動かしながら攻めるが、第1戦で中国と引き分けているカンボジアの選手たちは士気高く、粘り強く対応してくる。何より「中国戦と違って最初から引いてきた」と柳が振り返ったように、日本の強さを最大限にリスペクトした上で戦うという意思統一が明確だった。こうなると簡単にはいかないのがサッカーだ。「難しい試合になると思っていたし、選手たちにも事前にそう言っておいた」と内山篤監督も振り返る。

 それでも「サイドからチャンスは作っていた」と監督・選手が口をそろえたように、中央を固めてくる相手に鉄則通りのサイド攻撃で前半から決定機は生まれていた。9分にはスローインの流れから柳のクロスを受けた中坂がチャンスを迎え、11分には右MF高木彰人(G大阪)の絶妙なアーリークロスからFW田川亨介(サガン鳥栖)がヘッドで狙う絶好機も生まれたが、いずれも決まらない。その後も日本ペースは変わらないが、「国際試合の完全アウェイ」(高木)で戦う難しさがあったのも間違いない。ワンプレーごとに大きな歓声と拍手が贈られ、カンボジアの選手たちが勇気づけられているのも伝わってきた。

柳貴博

今大会初出場の柳貴博はクロスでチャンスを演出した [写真]=佐藤博之

 後半に入っても流れは変わらなかったが、やはりゴールは生まれない。高さで上回るメリットが生きてセットプレーからDF中山雄太(柏レイソル)とDF板倉滉(川崎フロンターレ)にも決定機が訪れるが、いずれも決まらない。65分に柳のクロスから田川が頭で狙った後半最大のチャンスも相手GKに阻まれてしまった。「相手のGKをヒットさせてしまった」と内山監督も苦笑を浮かべるほかない、ありがちな流れにハマりつつあった。

 ただそれでも、「とにかく焦らないようにという話はしていた」(MF遠藤渓太=横浜F・マリノス)、「チャンスを外しても『次いこう』と言い合っていた」(高木)と、選手たちは何とか平常心を保って試合を運ぶ。交代出場したFW小松蓮(産業能率大学)が69分に投入早々のビッグチャンスを空振りして逸するなど、何とも流れは悪かった。

 しかし73分、ついに均衡が崩れた。相手を押し込んだ流れから、市丸が右サイドへ開いて柳がクロス。中央で誰も触れずに大外へ流れたところで待っていたのは左MFの遠藤。「前半からクロスが外に流れてくることが多かった」という狙いを持ったポジショニングでボールを受けると、冷静にシュートを沈めて喜び爆発。ようやく日本に先制点が生まれた。

 こうなると前に出るしかないカンボジアは、引いて守る形を捨ててハイプレス。GK波多野まで複数人が追い掛けた流れから、波多野はシンプルにロングキックを蹴り出す。これを小松が「(遠藤)渓太くんは足がとにかく速いので、『前に出したろ』」とワンタッチでさばくと、受けた遠藤は広大なスペース目掛けて独走開始。ユニフォームをつかんだDFも振り切って左サイドを完全にぶちぬくと、追走していた小松へマイナスの折り返し。これを小松が押し込み、勝敗はほぼ決した。

 何とも苦しんだゲーム展開だったが、国際試合には「ありがち」な苦しさでもあった。今後ワールドカップ予選やAFCチャンピオンズリーグなどでも同様のシチュエーションは十分にあり得る。完全アウェイの空気感の中で戦い抜いた点を含め、若い選手たちには個々の反省材料とともに一つの財産を提供するような勝利となった。

文=川端暁彦

By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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